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132話 学校?を作りました!

「なんだか、すごく大きくなっちゃったな……」


 俺はテーブルの上に置いた設計図を見て、そう呟いた。


 フェンデルの東の川を越えた先の平原、石切り場の近くに俺たちは来ていた。


 学校を作る前に皆で何が欲しいか確認し、設計図を作ることにしたのだが……


 設計図には、皆が描き込んだ設備がてんこ盛りだ。学校と言うよりは、一つの街になるような規模だ。


「これは店か……こっちは酒盛りの、絵? 宴会場か? 誰が提案したんだ? 学校は何かを教える場所なんだぞ」


 俺が呟くと、ユミルが首を傾げる。


「皆でご飯を食べる場所も必要じゃろ?」

「そういうことか……なら、食堂だな。こっちは、メッテが書いたのか?」

「ああ! 自由に食べたい物が選べると面白いと思ってな!」

「なるほど……この水が張ったのは貯水池か? いや、泳いでる……」


 設計図には、四角い池のようなものと、そこで泳ぐ者たちが描かれていた。


 メルクが呟く。


「皆で泳ぐところ」

「近くに川があるじゃないか──いや、そうか。子供が川で泳ぐのは危険だもんな」

「そう。ここで泳ぎを練習する」

「ほうほう。これはいい案だ」


 突拍子もない提案かと思ったが、皆、ちゃんと考えがあって描き込んでいるようだ。


 人間の学校というと、座学のための校舎があり、あとは魔法や武術の訓練場があるぐらいだった。


 寝る場所とか小さな山、変なオブジェもあるようだが……まあ、皆が欲しがっているんだ。全部作ってみるか。


「よし……とりあえず、この設計図通りに作ってみるか! あとで加えたり削ったりもできるし」

「はい! 私たちもお手伝いいたします!」


 イリアたちも皆、声を上げてくれた。


 こうしてフェンデル同盟の学校建設が始まった。


 まず、エクレシアたちエントが建設予定地の草木を移動し、土を均してくれた。


 その上に、俺はまず学校の顔となる校舎を作る。


 石材と木材を用いた二階建ての建物だ。ガラス窓を多用し、太陽光を多く取り入れられるようにしてある。


 外壁は石灰と砂で作った漆喰を塗ることにした。

 フレッタや子供たちが、ハケでぺたぺたと塗っていく。


 やがて飽きたのか、フレッタが枝で塗ったばかりの漆喰に落書きを始めた。


「これ、モーみたいでしょ! 面白い!」

「フレッタ。落書きしない。学校は真面目に勉強するところ」


 メルクがそう注意するが、フレッタや他の子供たちは落書きをやめない。


 その様子に、メルクも半ばあきらめたように漆喰を塗り始めた。

 自分もちゃっかり、可愛らしい模様を描いている。


 明るい印象の白い壁と可愛らしい落書き……なかなかいい感じじゃないかな。


 一方の俺は校舎の耐久性を調べたりした。

 跳ねてみたり、鬼人に柱を押させるが、特に問題もない。


 あとは、机を作ったり椅子を作ったりした。


 壁の塗装や内装は他の亜人に任せ、俺は校舎以外の作業に取り掛かった。


 泳げる池や、校庭の土を柔らかくするのは、ゴーレムやエントに任せる。作業で出た細かい塵はスライムが片付けてくれた。


 あとは、中に入れる巨大な銅像だったり、滑り台だったりいろいろな物をつくった。


「よしよし。とりあえずは完成だな」


 設備が何かを示す看板など細かい内装は残るが、俺が作れるものはあらかた作り終えた。


 そんな中、イリアが呟く。


「開放感があっていいですね。川も見えますし」

「だが、ヨシュア。こんなに開放的で大丈夫だろうか?」


 メッテは心配そうに言った。


 確かに、この学校には防壁のようなものがない。


 近くの草原にはまだ時折、ボアも来る。

 すぐ西には川があってヘルアリゲーターも上がってくるかもしれない。


 天狗を中心に亜人たちが見張りをしてくれているが、万全とは言えないのだ。


「そこはゴーレムを拡充させるつもりだ。メッテといい、イリアといい、今回も人形石をたくさん手に入れてくれたからな」

「なるほど。ゴーレムがここにいてくれれば心強いな」


 メッテの言う通り、ゴーレムたちに学校の周囲を守ってもらうつもりだ。


 以前作ったゴーレムでは色々手が回らなくなっていたが、今回のダンジョン攻略のおかげでもっとたくさんゴーレムを作れる。


 今ある人形石で、五十体はゴーレムを作れそうだ。


 二十体を学校周辺の警備にして、残る三十体はドワーフ、エルフ、カッパの村を十体ずつで守ってもらおう。


「ああ。紫鉄で体を作って、防具や武器を紫鉄にする。ちょっとやそっとのやつじゃ倒せなくなるだろう……あとは」


 俺はユミルたちが回収してくれたトラップ……魔法工房にあった黒い石を手に取りだした。


「これを使うか否かだな」


 イリアが隣から興味深そうにのぞき込む。


「これは、ダンジョンの壁裏にあった石ですね」

「ああ、召喚石と呼ばれる石だな。これで、異界から異界の魔物を召喚するんだ」

「……出しちゃって大丈夫なんでしょうか?」

「人形石と同じで、刻まれた名前を消せば大丈夫だ。新しく名を刻めば所有者も変わる。だが。これが結構曲者でな……」


 俺は試しに召喚石に魔法で自分の名を刻んだ。


「護衛を一人召喚してみよう……」


 そう念じると、黒い石が周囲に靄を作る。


 靄はそのまま……靄のままだった。


 ウィスプという、霊体型の魔物だ。古戦場などによく出没するが、ほとんど攻撃力を持たない。人の頭に覆いかぶさり、その精神を少しだけ混乱させることができるだけ。


「ウィスプだな。よし──ああ、もう消えたか」


 靄はすぐに消えてしまったが、これが普通だ。


「魔物以外が名を刻むと、召喚された魔物はすぐに消えてしまうんだ。名を刻む魔物によって、召喚される魔物や、召喚できる時間も変わったりするらしい。リッチだから、同系統のスケルトンが召喚されてたのかも」


 俺はそう言って、ウィズに目を向けた。


「だから、名を刻むなら、ウィズたちに頼むことになりそうだな」


 ウィズは任せろと言わんばかりに、ぴょんぴょん近づいてくる。


 ウィズも簡単な水魔法ぐらいなら使える。

 黒い石を渡すと、名を刻み始めた。


 すると、黒い靄が現れる。


「こいつは──!?」


 そこにいたのは、人の背丈よりも高い、巨大な黒いスライムだった。

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