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128話 競争になりました!?

「ま、待て、二人とも!!」


 俺はどんどんとダンジョンを進むメッテとベルドスにそう声をかけた。


 二人は、まるで畑の雑草を刈るかのように、スケルトンを薙ぎ払っていく。


「そんなに早いと、とてもじゃないがユミルたちが! ──え?」


 後ろを振り返ると、そこには壁の石材を剥がしては、また貼り戻すユミルたちドワーフがいた。


「あ、こっちはお構いなくじゃ! ちゃんと確認しておるからのう! お、これか」


 早速、トラップらしき黒い水晶を発見したユミルたち。手早く回収し、俺たちの後方に続く。


「こっちもなんて速さだ……」


 心配は無用だったようだ。


 むしろ、俺は自分の心配をしたほうがよさそうだな……

 メッテとベルドスに引き離されないよう、ユミルたちに追いつかれないようにしなければいけない。


 だが、前方のメッテたちの前に、道を塞ぐように巨大なゴーレムが現れる。


「ぬ、ベルドス! ゴーレムだ!」

「承知! 中の赤い石を壊す──いや、残すのだったな!」

「ああ! 私が赤い石を両断する! ベルドスは、胸を!」

「おう!」


 そう言って、ベルドスは斧の刃でない部分を向け、鈍器のようにゴーレムへ振るった。


 ゴーレムの岩がボロボロと崩れる。


 その中に、メッテは飛び込んだ。


「はあっ!!」


 メッテが刀を振るうと、ゴーレムの全身が崩れた。


 メッテは振り返ると、真っ二つになった赤い石を掴んだ。


「ヨシュア! 受け取れ!」

「あ、ああ」


 俺はメッテがぽいっと投げた、真っ二つとなった赤い人形石を回収する。


 イリアが前にそうしてくれた時のように綺麗に斬られている。これならゴーレム作成に使えるだろう。


 その後も、メッテとベルドスはスケルトンを倒し、ゴーレムの人形石を獲得していった。


 斧を振るいながらベルドスが呟く。


「ふむ。しかし、全く分岐がないな」

「私にとっては、むしろ好都合だがな! 分かりやすくて!」


 メッテもそう答えながら刀を振るう。


 ベルドスの言う通り、ダンジョンは一本道だった。

 しかし、前方の暗がりから何かが刀を振るいながら突っ込んでくる。


「あ、あれは……」


 闇の中にぼんやり浮かぶのは、神話の鬼のような恐ろしい顔をした何かだった。


 スケルトンもゴーレムも、その鬼の前には存在しないように消えていく。


「化け物が来るぞ!!」


 メッテは思わず叫んだ。

 ベルドスも斧を構えたまま、動きを止めてしまう。


 一方の俺も、鬼を前にして体が動かなかった。


 だが、目が慣れてきたせいか、鬼がこちらに顔を向けているせいか、鬼が鬼でないことが分かった。


「あ、あれは……イリアか!」


 暗いせいで鬼のように見えてしまったようだ。

 刀を振るっていたのは、イリアだったのだ。


 イリアはスケルトンとゴーレムを倒しきると、俺の前で刀を納める。


「ヨシュア様っ! 私、怖かったです!」


 抱き着いてくるイリア。


「あ、ああ。俺も、ちょうど怖い思いをしたところだ……」


 俺の声に、メッテとベルドスも無言でこくこく頷く。


「ところで、どうしてここに?」

「前に入ったダンジョン自体は小さかったのですが、ドワーフさんが壁を剥がして、ここに繋がる通路を見つけたのです」

「なるほど。じゃあ、この二つのダンジョンは繋がっていたんだな」


 イリアたちの後ろからは、メルクやドワーフたちもやってくる。


 メルクがぼそりと呟く。


「イリア、落ち着いた。機嫌が悪かったから怖かった」

「だってこんな不気味な場所……ヨシュア様がいなかったら私怖くて」


 イリアは涙目で俺を見上げた。


「ご、ごめん。でも、やっぱりイリアでよかった。まさか、こんなに早くダンジョンが攻略できるなんて」


 一本道ではあったが、スケルトンもゴーレムの量も半端ではなかった。人間が数人ではとても攻略できないだろうし、百人以上いても多数の死傷者を出しながら攻略に数日かかっていたはず。


 だがそんなとき、後ろのユミルが呟く。


「ヨシュア! 来るのじゃ! 別の空間に繋がっている! 更に地下への階段じゃ!!」


 振り返ると、壁に開いた別の階段があるのだった。

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