125話 どこかと繋がってました!?
「しかし、いつの間にかこんなものを」
階段を下る中、俺は壁沿いにある鉄製の管を見て言った。
ユミルが答える。
「ワシらは、ヨシュアの作ったものを真似してるだけじゃよ。さっきの噴水、というのか? あれも村のフェンデルのものを見ながら作っただけじゃ。あの爆弾も、天狗たちが魔王軍を空から火で攻撃したことから、着想を得たのじゃ」
「あの爆発からか」
それを携帯できる武器にするなんてことは、俺も思いつかなかった。
俺が作った道具もすぐ複製するし、ドワーフたちは本当に観察力に優れている。
「よし、一番下まで着いたのう。あそこの入り口を奥じゃ」
最下層に着くと、ユミルが壁際にある穴を指さした。
「この層ならどこからも聞こえるのじゃが、特にあそこはひどくてのう」
「そうか。なら、まずはあそこから見てみよう」
俺はユミルが言う穴を進む。
ここは最低限の梁と柱で支えられているだけで、天然の岩壁が剥き出し。坑道のようだ。
松明がかけられているので、特に暗くはない。
ユミルは進みながら俺に説明する。
「ここらは特に金属が多く掘れるのじゃが……ちょっと気味の悪いものも掘れてのう」
「気味の悪いもの?」
「あれじゃ。ほら、あそこに集められているじゃろ」
ユミルは坑道の片隅に集められていた山を指さした。
「あれは……骨か」
ほぼ白骨の山があった。
人間の頭蓋骨のようなものが見えるから、人の骨だろう。
他には、彼らの遺物だろうか、さび付いた剣や鎧が見える。
鎧のいくつかは、穴や亀裂が見えた。これが自然にそうなったのか、人の手でそうなったのかまでは分からないが。
「……古戦場が埋まったとかかな? うん?」
いつのまにか、イリアが俺の腕を掴んでいた。
「ご、ごめんなさい。何か、変な気配がしたものですから」
「き、気にしないでくれ。確かに気味が悪いな」
メルクが「イリアにしては珍しい」と呟く。
イリアは不気味なぐらいニコニコと、そんなことないですよと返す。
「まあ、ワシらはそこまで骨は怖くないのじゃ。問題は、この奥から聞こえる音でのう」
ユミルはそのまま、坑道の奥へ向かった。
ついていくと、やがて行き止まりの壁が見えてくる。ユミルはその近くで足を止めた。
「静かにするのじゃ……ほれ、どうじゃ?」
「うん……確かに」
ひゅうひゅうという音が聞こえてくる。
確かに不気味な音だった。
「しかし、これは……もしかすると。メルク、風の流れはつかめるか?」
「アスハじゃないと無理。でも、埃の匂いが流れてくる……」
メルクは鼻をくんくんと動かし、周囲を探る。
しばらくすると、岩壁の一部をぽんぽんと叩いた。
「ここ。この向こうから、匂いがする。音もここから流れてくる気がする」
「やっぱりか」
ユミルが首を傾げる。
「どういうことじゃ?」
「風が流れる場所が近くにあるんだ。この音は、風が吹いている音のはずだ」
「とすると、隣の穴の道かのう?」
「掘ってみないことには分からないな」
「なら、ワシが掘ってみるのじゃ!」
ユミルはつるはしを手にすると、メルクの指示した場所を掘り始めた。
かんかんという音が、風の音を打ち消すように響く。
ドワーフは採掘のスピードも速い。
ユミルはまだ人間の十歳ぐらいの大きさだが、全く疲れる様子もなく、つるはしを振るっていく。
しかも的確に、リズムよく。岩はどんどんと崩れていった。
やがて、ユミルのつるはしが何か堅い物にあたったのか、一際高い音を発した。
「ふむ? ふむ」
ユミルがもう一度つるはしを振るうと、壁にひびが入った。
「ちょっと見てみよう」
俺はそう言って、壁の塵を払った。
「鉄の板だ……待ってくれ。俺が開けてみる」
火魔法で鉄を熱し、赤くなってきた鉄を回収する。
すると、壁は一挙に崩れた。
「……ここは!」
俺とイリアは思わず顔を見合わせる。
目の前に見えてきたのは、ダンジョンのような場所だったのだ。




