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124話 地下街でした!?

「でっかい」


 メルクは山の麓にある、巨大な門を見上げて言った。


 金と見紛うような磨かれた銅板の門。

 幅は馬車が二台は通れる広さで、高さは人の背丈の三倍はある。


 ここはもともとドワーフの洞窟があった。

 あのときは、本当に天然の洞窟があるだけだったが。


「こんなものが出来てるなんて……」


 ドワーフたちの鋳造技術はたいしたものだと思っていたが、まさかここまでとは。


 俺も同じく金属を扱う者だから、この大きさの銅板を作り出す難しさを知っている。

 しかも俺には魔法工房があるが、彼らは道具でそれを作り上げたのだ。


「ドワーフ、恐るべしだな」

「あっ、ヨシュアじゃ!!」


 広い門から、ちょこんとした黒髪の女の子が現れる。

 ドワーフのユミルだ。


「おお、ユミル。さっそく来たぞ」

「待っておったのじゃ。それでは、部屋まで案内するのじゃ」

「ああ、頼む」


 俺はユミルの後を追って、洞窟へ入るのだった。


 入り口では、木箱や樽を運ぶドワーフたちが出入りしていた。

 外でも少し見えたが、ドワーフたちも猟や伐採、採集をする者たちがいるようだ。


 そんな彼らが集めた物資は、入り口すぐ近くの巨大な空洞に集められているようだった。


「おお、大きな倉庫だな」


 立ち止まって、空洞の中を覗いてみる。

 大きな港町にあるような、巨大な倉庫を思わせる内観。金属製の柱と梁で補強されているようだった。


「へえ。面白いな」

「ヨシュア様でも驚かれるような場所なのですか?」

「ああ。これならちょっとやそっとじゃ壊れないだろう。参考になりそうだ」


 俺は思わず、倉庫の中で柱と梁の構造をまじまじと見てしまう。


 すると、しばらくしてメルクの声が響く。


「ヨシュア。ヨシュア……やっと気づいた」

「え? あ、ああ」


 どうも熱中しすぎて、メルクの声が聞こえなかったようだ。


 ここはあとで一人でじっくり見るとしよう……


「ごめん、ユミル。案内を続けてくれるか?」

「わかったのじゃ。部屋にはすぐ着くから、またゆっくりみるとよい」


 そう言ってユミルは、再び洞窟を歩き出した。


 洞窟の道は、坂道のように下に続いていた。入口より少し狭く、馬車が一台通れるような幅だ。高さも幅と同じぐらい。


 しかし下っていくにつれ、突如開けたような場所にでる。


「ここは……え?」


 目の前の光景に俺は言葉を失う。


 地下にはすっぽりと円筒で抉ったような、縦長の空間があった。


 広さは、ちょっとした湖ほどの広さ。

 壁に沿うように石造りの階段が螺旋状に伸びており、中央は大きな吹き抜けとなっていた。

 壁には無数の横穴があり、その中は住居や通路になっているようだった。


 最下層はここから二十ベートルほど下か。だが、どんどんと掘り下げていく様子が確認できる。


「ユミル……これは、もともとこういう場所だったのか?」

「まさか。全部、掘ったのじゃよ。ヨシュアの作ってくれた道具で」

「この大きさを掘った……」


 たしかに、フェンデル村に運ばれる鉱石や石材の量は尋常じゃなかった。

 これだけ掘られていてもおかしくない。


「おお、あのヨシュアが驚くとは! わしらドワーフもなかなかということじゃな! まあ、横穴の坑道を合わせれば、この倍は掘っているはずじゃがな! ふははは!」


 ユミルは自慢するように言う。

 誇って当然の作業量だ。人がこれだけの空間を作るのに、何年かかるやら。


「いや、本当にすごいよ。ひとつの街みたいだな。名前は付けたのか?」

「名前?」

「フェンデルとか、ヴァースブルグとか白砂島とか、他の亜人の村には名前があるだろ」

「そうしたら……ユミルディアに決定じゃ!」


 即答するユミルに、メルクがぼやく。


「ひとりで決めていい?」

「皆、許しくれるじゃろ!」


 ユミルは笑って言うと、俺たちに壁に開いた穴を指さす。 


「それで、ヨシュアたちが泊まるのはこっちじゃよ」


 あの穴は、泊る場所への入り口のようだ。


 その横穴の上には、さらに大きな横穴が見える。

 手すりがあるので、テラスみたいな場所かな。


 ユミルに続くと、まず目に飛び込んできたのは綺麗な噴水だ。

 大理石製で彫像で彩られている。


 ここはエントランスのようで、壁には扉が見えた。二階のテラスに上がれる階段もあった。


「ここがヨシュアたちが泊まる場所じゃ。好きな部屋を使うとよい! 家具も寝具も備え付けじゃからな」

「どこかの高級宿みたいだな……いや、ありがとう。メッテたちも夕方に来るって言ってたが、これなら大丈夫そうだな」

「三十人は泊まれるじゃろうからな」

「それじゃあ、次は音の正体を探りにいくか。ユミル、案内してくれるか?」

「任せるのじゃ!」


 俺たちは宿を出ると、螺旋階段を下っていくのだった。

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