120話 急ぎました!
エナとカッパに魔法を教え道具を作っているうちに、すっかり日が暮れてしまった。
なのでその日は、白砂島に泊ることにした。
カンベルと今後の協力関係についても確認する必要があったからだ。
まず、この島にフェンデル同盟の者が来ることを許可してもらった。この島の家に住んでも、周辺で漁をしてもいい。毎日、天狗が様子を確認しにいくことも伝えた。逆に、カッパたちもフェンデル村で過ごせる。
次に貿易だ。
俺たちはカッパが好む川魚や果物、野菜を、カッパは海の魚介をそれぞれ交換する。しばらくは俺の作った道具も提供するつもりだ。
帆船やボートを作ってカッパたちも使えるようにしたので、それで運ぶ。
また、カッパたちは、今後も西の海を警戒してくれるらしい。リザードマンを始めとする魔王軍に動きがあれば、知らせてくれるようだ
それとあわせ魔王軍の襲来に備え、灯台をもっと頑丈にした。いざとなったら、ここで籠れるようにだ。
そうして翌朝、俺たちは白砂島を発つことにした。
「また来てくださいね!」
エナとカンベル、カッパたちの見送りに手を振って、俺は船を川に進める。
メルクやメッテが手を振り返す中、イリアが呟く。
「見つかってよかったですね……」
「ああ。探していた種族も、心配だった子供も見つかった。これも、メルクのおかげだな」
「ヨシュアの船がなければこれなかった」
少し恥ずかしそうに言うと、メルクは尻尾を振る。
「それよりも海、綺麗なところだった。また行きたくなった」
「私もだ。魚も美味しかったしな」
酔ってないのかまだ元気なメッテもそう答えた。
エクレシアも頷く。
「見慣れない植物もあって、色々楽しかったよ。次は仲間も連れていきたい」
「そうしよう……次行く時は、もっと気軽だといいが」
魔王軍との戦いで、島を守りに行くというのはできれば避けたい。
全ては魔王との交渉を依頼したリザードマンのオルト次第だな。
とはいえちょっとやそっとの戦力では、魔王軍もあの島には手出しできないだろう。
カッパたちはすでに俺の作った武器を持っている。また、杖を託したエナも巨大な渦潮を引き起こすほどの水魔法を使えた。
そんなことを話していると、空を飛ぶアスハが何かに気づいたのか、船の進路の先へ飛んでいく。
顔を船首の空へ向けると、村のほうから飛んでくる天狗がいた。
アスハはその天狗と会うと、何かを話す。
それからすぐ、俺たちのもとに戻ってきた。
「ヨシュア様。村の北を偵察していた者から連絡が。ヴァースブルグのさらに北方から、人間の集団が南下しているようです」
「何? どんな集団だ?」
「馬に乗ったり、鎧を身に着けていたり、旗を掲げていたようです。確認できるだけでも五百人はいたそうです」
「どこかの軍だろうが、あまり多くはないな。ともかく、村へ急ごう」
アスハが風魔法で帆に風を送り、またベルドスとメッテが櫂で船を漕いでくれた。
そのおかげで俺たちは、まだ日が暮れる前に村へ帰還するのだった。
 




