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119話 島の防備を整えました!

「これをこうすると……」


 メッテはクロスボウを構えると、引き金を引いた。

 放たれたボルトは、五十ベートルほどの的にまっすぐと飛んでいき──見事その真中を射止めた。


「どうだ! 簡単だろう!?」

「すごい! あんなに遠くに飛ばせるんだね!」


 エナと他のカッパたちはメッテのクロスボウを見て、ざわめきだす。


 メッテは自慢げな顔で言う。


「ふふん。なんたって、私の旦那が作ったものだからな!」


 熱い視線を俺に送るメッテ。

 イリアがそんなメッテに鋭い視線を送る。


 二人の間でばちばちとした何かを感じたので、俺はすぐに目を逸らし、道具作りに戻った。


 同盟を結んでくれたカッパたちに、俺はやはり道具を作ってあげることにした。


 メッテが今使い方を教えているクロスボウなど、フェンデル村でも使うような武器や道具はもちろん、彼らの力を生かせるような物も作っている。


 それはやはり漁具だ。

 漁網はもちろん、中央に網を張った浮き輪や銛など、漁に適した道具だ。

 彼らには船は必要ないだろうが、一応ボートも二艘ほど作っておく。


 次々と生み出される漁具に、カンベルは唖然としていた。

 だがやがて、俺に頭を下げる。


「こんなものまで作っていただけるとは……本当にありがとうございます」

「いやいや、これじゃまだまだだ。一度村に帰ったら、また届けに来るよ。それより、他に何か欲しいものがあるか?」

「まさか、こんなに沢山作ってくださったのです。これ以上求めるものなどありません。それよりも」


 カンベルは蓑の服の下から、ある物を取り出した。透き通った海を思わせるような、水色に光る玉だった。


「我が一族の秘宝です。先祖がこの島を見つけた時、あの湖に落ちていたのを見つけたと聞いています」

「へえ。とすると、それは魔石かもしれないな。水色だから水属性の魔法が扱いやすくなる……しかし、これだけ大きいとは」


 人の赤子の顔程の大きさはある玉だ。

 もしこれが魔石なら、相当な威力の水魔法を扱えるようになる。


「よし。ならそれで杖を作らせてくれ。そして、カンベルたちでその杖を使うんだ」

「わ、私たちのことはどうか。ただ、どうかお礼として受け取ってください」

「魔王軍のことは言っただろう? その魔石で、魔王軍を追い払える水魔法を使えるようになるかもしれないんだ。カンベルたちが自力で追い払えるなら、すぐ北に住む俺たちも助かる」

「そういうことでしたら……お願いいたします」


 カンベルは俺に魔石を手渡しくれた。


「ありがとう。それじゃあ……」


 杖なので簡単に作れる。

 紫鉄の棒の先に水色の魔石をつけてみる。

 あまり長いとカッパの背丈に合わないので短めにしてみた。


「よし、完成だ。一族の中で水魔法を一番うまく使えるやつが使うといいだろう」

「魔法がどういうものかは分かるのですが、私どもでも使えるものなんでしょうか?」

「練習すれば、きっと皆使えるはずだ。まあでも、どういうものか見せてみるよ。一回、どれぐらいの量の水を出せるのか試したいし」


 俺は杖を持って、白砂島の南の浜に向かった。


 ここはクラーケンを倒した浜だ。南には水平線まで見渡す限りの海が続いている。


「ここなら、思う存分魔法を試し打ちできるだろう。カンベル、誰か海に出てたりしないか?」

「今は誰も。それに私たちは、こちらの海には出ません。あまり陸からは離れられませんから」

「そうか。なら、一発撃ってみよう」


 杖を南の空に向ける。


 ここから水属性の低位魔法ウォーターボールを放って、どこまで飛ぶだろうか。

 俺は生産魔法以外はあまり達者でないので、ほとんど杖の力に頼ることになりそうだ。


「──ウォーターボール! ──え!?」


 俺の前に、突如巨大な水壁が現れた。

 いや、球の形をしていた。離れていくうちに、その形がつかめてきたからだ。だいたい、直径が五十ベートルほどあろう、水の玉だ。


 水の玉はものすごい速度で水平線に向かっていた。やがて水平線近くの海面にぶつかると、天にも届くような高さの水柱を作り出した。


「あ、あれは……え?」


 一瞬のことにカンベルも唖然としていた。

 俺もいつの間にか大きく開いていた口をなんとか動かす。


「え、えっと……多分、この杖の魔法だろう」


 自分で言っていても信じられない。


 なのでもう一度。

 今度はウェーブという、水面に波をたてる魔法を使ってみた。


「──ウェーブ! うおっ!?」


 先程と変わらない高さの水の壁が現われ、水しぶきを立てながら沖に向かっていった。


「よ、ヨシュア様、今のも?」

「あ、ああ。多分の杖の魔法だ」

「物をあれだけ速く作ることといい、とんでもないお力を持ってますね……」


 カンベルはそう言って、ただ海を眺めていた。


 力を抑えたが、結構な波の高さだ。

 この魔石……やはり相当な力を持っていたようだ。


「ヨシュア、またとんでもない物を作った」

「い、今のはなんだ?」


 後ろからメルクとメッテがやってくる。


「魔法の杖だよ……カンベル、これを託す。今から、カッパの中で誰が魔法が一番使えるか調べて、少し魔法の訓練をしよう」


 カンベルは少し恐れるように杖を受取ると、コクリと頷いた。


 その後、俺は皆の魔力を調べ、誰が一番魔法を使えるか調べた。

 その結果、カンベルの娘エナが一番魔力を持っていることが分かったので、エナに水魔法を教えるのだった。

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