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117話 発見しました!

 マッドスライムの死骸から出てきたのは、濃い緑の髪をおかっぱにした女の子だった。


 手足や顔は人間のように見えるが、人間ではないのだろう。

 肌は薄緑色で、背中には亀の甲羅のようなものを背負っていた。

 

 イリアはスライムの死骸の中から、その女の子を抱き抱える。


「この子……まだ、息があります!」

「ウィズ、この子を乗せてやってくれ! メルクは杖で回復してくれ」


 そう言うと、ウィズがベッドとなり、そこへイリアが女の子を寝かせる。


 メルクが杖で女の子に回復魔法をかけている間、俺はエクレシアの葉でポーションを作った。


 できた回復のポーションを少しずつ女の子に飲ませてみる。


「……うう、ん? ここは?」


 女の子はゆっくりと目を覚まして、周囲を見やる。


 メルクはほっとしたような顔をする。


「目を覚ました」

「あなたたちは……あの川の近くで見た」

「メルクっていう。名前はある?」

「あたしはエナ、です」


 まだ少し警戒するような女の子エナに俺は言う。

 内気な感じなのか、ちょっと声が小さい。


「川の近くで木の板を渡しただろう? 同じぐらいの背丈の子たちに。俺たちはあの板を手掛かりに、君を追ってきたんだ」

「なるほど……ごめんなさい。家に招待してお礼をするつもりだったのですが、あの怪物がまさか家にまでいるとは思わなくて」

「クラーケンか? 家を襲ったやつなら倒したよ」

「ほ、本当ですか!?」


 エナは信じられないといった顔をする。


「本当だよ。ほら」


 俺はエナにクラーケンの脚の一部を見せた。


 エナが最初びくっと体を震わせたが、死んでいると分かったのかホッと一息つく。


「でも、エナ。仲間はどうしているんだ?」

「あたしも探していたんです。あたしたちは近くの海にいるかここに来るぐらいなので、ここにいるんじゃないかって。でも、見つからなくて──行ってはいけないと言われていたここまで探しに入っちゃったんです」

「それで、やつに襲われたと」

「あなたたちが現れなければ、今頃死んでたと思います。助けていただき、本当にありがとうございます。お礼をしたいところなのですが──」

「気にしなくていい。まずは、家族を探そう。俺たちも、話したいことがあったところだ」

「ありがとうございます。でも、手掛かりなんて……私たちは、そこまで遠くには泳げないので」


 エナはどうすればいいか分からないのか、顔を曇らせた。


「陸伝いに東に行ったってことは?」

「私たちはあまり長い時間、陸地にはいれないんです。肌が渇きやすいので」

「ここから東には、何があるか分かるか?」

「ずっと砂浜があるだけです。ここもそうですが、浜には大きな猪がいっぱいいるからあまり近寄らないんです」


 となると、エナの仲間がそこに向かうとは考えにくいか。他に島があるわけでもなさそうだ。かといって、ずっと海にいることもできないから、地底湖を住処にしていたのだろう。


 イリアが呟く。


「もしかしたら、もう島に戻っている可能性もあるかもしれませんよ」

「あれだけ大きな爆発音だったんだ。近くで島の様子を探っていた者が気が付いたかもしれないな」


 エクレシアも同調するように頷いた。


「一度、島に戻ってみるか。エナと戻れば、また何か手掛かりが見つかるかもしれないし。エナも、いいかな?」

「あたしは構いません。私も一度、家にあるものを調べたいです」

「よし。なら、いくらか砂も回収して、島に戻ろう」


 こうして俺たちは、エナと一緒に島へ戻ることにした。

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