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神の眠りを妨げてはならない

終戦記念日なので、戦争に関連した短編を書いてみた。

歴史なのか文学なのかローファンタジーなのかジャンルが分かり難いから、その他で。



「む? なんぞ騒がしいぞえ」



 地球人類が西暦と呼んでいる暦の、1945年8月6日に日本列島で起こった振動で、長い間眠りについていた神が目を覚ました。

 神は大きなあくびをしてまだ眠たい目を擦りながら、愚痴をこぼすのであった。



「我の眠りを妨げた輩は、どこのどいつなのじゃ?」



 神は渋々といったていで、引き籠っていた部屋の扉を開けて久しぶりに外の世界へと足を踏み入れるのだった。

 外の世界では、人類が戦争の真っ最中だったりするのだが。


 神が空を見上げると、そこには星のマークを付けた多数のプロペラ戦闘機と、赤い丸のマークを付けた少数のプロペラ戦闘機が、大挙して空中で乱舞していたのであった。



「ほうほう、人類はここまで進化していたのか。我が知恵を授けた甲斐があったというものじゃのぉ」



 腕を組んで、うんうんと一人納得する神であった。



「しかし我の眠りを妨げた、あの兵器の使用はちといただけんのぉ」



 神は戦闘機同士の空中戦を一瞥してから、西の方角に目を向けると、そう呟いた。



「あの兵器の使用者は、星のマークの国か? ほうほう、アメリカとかいう人工国家とな? 人類は面白い国を創ったもんじゃのぉ」



 全知全能の神にとっては、本人が寝ている間に発生していた未知の存在であったとしても、直ぐに状況を把握することなど朝飯前のことである。

 そして神は、アメリカへと意識を飛ばすのであった。




『貴公がアメリカ合衆国とかいう国のリーダーであるか?』


「いかにも、私がアメリカ合衆国の大統領ではあるが、君は誰だ? どこから話し掛けている?」


『念話やテレパシーとでも言えば、理解できるかえ?』


「テレパシーだと? まるでSF小説ではないか……」


『それよりも、要件を伝えるぞえ。日本の広島に落とした新型の爆弾。アレの使用は止めるように』


「な、なぜそのことを知っている? 私でさえ、三十分前に成功の連絡をもらったばかりだぞ」


『貴公らに言わせると、我は神と呼ばれる存在じゃからのぉ』


「神だと!? キリストとでも言うのか?」


『そんな人類が作り出した神とは違うのだが、似たようなものと考えてもらっても構わん』


「私はイエス・キリスト以外は認めない主義なのだがね」


『何を信じるのか? それは個人の自由だからの』


「寛容ですな」


『それで、あの新型の爆弾は貴公ら流に言えば、アレはインドラの矢かメギドの火かの?』


「ほうほう、それは素晴らしいではないか」


『アレは人類には過ぎた代物じゃぞ? 使用は控えるがよろしかろう』


「それは裏を返せば、人類が神の領域に一歩近づいた、そうとも受け取れますな」


『どう受け取ろうが構わぬが、我はちゃんと警告はしたからの』




 だがしかし、神の警告を無視して三日後の8月9日には、長崎にも原爆が投下されるに至った。




 ※※※※※※




「このままでは、日本はお終いだ。どうか神さま日本をお助け下さい」



 とある神社でお百度参りをしていた老人の声を聴いた神が姿を現した。



「我を呼んだかえ?」


「神さま…ですか?」



 顕現した神の姿は、どう見ても幼女巫女か座敷童にしか見えないのだが。

 どうやら神は、ちゃんとTPOとやらを弁えているらしかった。



「そちの望みは、この国を敗戦から救うことで相違ないかえ?」


「日本が戦争に負けないのであれば、この命を投げ出しても構いません」


「ふーむ、健気じゃのぉ。だが、負けてこそ浮かぶ瀬もあると思うのじゃが?」



 神の敗北主義的な言葉に、日露戦争に従軍した経験のある老人は、思わず声を荒げて反論してしまった。



「負けて浮かぶ瀬などあろうものか!」


「では、良いのだな?」


「この敗戦寸前の状態から、負けないように出来るのですか?」


「うむ、負けはしないぞえ、負けは。ちと、アメリカの大統領とやらと話をしてくる」



 こうして神は老人の前から姿を消したのであった。



「き、消えた……? 本当に神さまだったのか?」




 ※※※※※※




『我が警告したのに、もう一発使うとはどういう了見なのじゃ?』


「また自称神からのテレパシーだと? 私は激務で疲れているのか?」


『我の問いに答えんか』


「戦争を早く終わらせるためには必要なことなのだ。それに戦争が早く終われば、それだけ我が国の若者が死なずに済む」


『我は貴公の言い訳を聞きに来たのではないのだがのぉ』


「ソビエト連邦に対して、恫喝、牽制をするためにも原爆の投下は有効だったのだよ」


『我は使うなと警告したのじゃぞ?』


「自国のアドバンテージを見せつけねば、他国に舐められるのが国際社会のルールなのだよ。そんな事も知らないで、神を名乗るとは笑止」


『なに? 我に対して笑止とな? 我はもう怒ったのじゃ! 貴公の首は吊るされるのも生温い!』


「首を吊るすなど、とても神の言葉とは思えない野蛮さですなぁ。ああ、自称神でしたか? これは失礼」


『ぐぬぬ…… 我に纏わりつく癌細胞の分際で、我を愚弄しおったな?』


「その言い方だと、まるで自分が地球そのものみたいな言い方ですな。神がニーチェなど愛読しているとは、益々笑止千万」


『また我を愚弄したな? 人類は神の怒りをとくと味わうがよい!』


「な、何をする気だ?」


『後悔しても、もう遅いわ!』




 こうして荒ぶる神の逆鱗によって、まず最初にホワイトハウスがある首都のワシントンが消滅した。


 アメリカ西海岸では、サンディエゴ、ロサンゼルス、サンフランシスコ、シアトル。東海岸では、ボストン、ニューヨーク、フィラデルフィア、ノーフォーク。

 内陸部では、クリーブランド、デトロイト、シカゴ、セントルイス、ダラス、ヒューストン。そしてロスアラモス、テネシー州のオークリッジ、ワシントン州のハンフォードに、0.5メガトン級の原爆に匹敵する神の鉄槌が振り下ろされた。


 神の一振りにつき、TNT火薬換算で約50万トン分の爆弾と同等の威力である。

 当然だが、神の鉄槌が振り下ろされた場所は、跡形もなく破壊し尽されているのであった。



「これも人類には過ぎたる玩具であるぞえ」



 そう言った神によって、アメリカ軍が大規模に駐留している場所も、神の標的となったのである。


 ハワイの真珠湾、南太平洋のサモア、オーストラリアのブリスベン、フィリピンのマニラ、マリアナ諸島のサイパン、テニアン、グアム、硫黄島等が犠牲になった。

 また、太平洋上を遊弋しているアメリカ海軍の機動部隊も、ほぼ全滅の憂き目に遭った。



「ふぅ、善いことを為した」



 神は得意満面の笑みで、そう独り言ちたのであった。



「ついでだから、増えすぎた人類も間引きしておくかえ」




 そして、神の災厄はヨーロッパにも降り注いだ。


 西ヨーロッパでは、ロンドン、マンチェスター、パリ、マルセイユ、ベルリン、デュッセルドルフ、フランクフルト、ローマ、ミラノ、マドリッド等。

 ソビエト連邦では、モスクワ、レニングラード、ゴーリキー、カザン、クイビシェフ、スヴェルドロフスク、チェリャビンスク、バクー、ノヴォシビルスク、クラスノヤルスク、ウラジオストック等が消滅したのであった。


 インド亜大陸では、カルカッタ、デリー、ボンベイ、ハイデラバード、バンガロール、マドラス、ラクナウ、ダッカ、カラチ等。

 中華大陸では、北京、天津、石家庄、太原、延安、済南、青島、西安、上海、杭州、南京、漢口、長沙、重慶、成都、広州、香港とかの都市に神の鉄槌が振り下ろされた。


 東南アジアやオーストラリアも例外ではなかった。

 ハノイ、サイゴン、バンコク、クアラルンプール、シンガポール、ジャカルタ、スラバヤ、パレンバン、シドニー、メルボルン、パース等が被害に遭った。


 中近東やアフリカ大陸にも、神の放った火は降り注いだのであった。

 メッカ、エルサレム、テヘラン、イスタンブール、カイロ、ナイロビ、ヨハネスブルク、ケープタウン、ラゴス、フリータウン、ダカール、カサブランカ等が更地になった。


 カナダや南米大陸も神の手からは逃れられなかった。

 トロント、モントリオール、エドモントン、バンクーバー、リオデジャネイロ、サンパウロ、カラカス、ボゴタ、リマ等が灰燼に帰した。


 他にメキシコシティ、モントレーに、中米やカリブ海諸国の首都も標的となったのであった。




「これで、粗方の掃除は済んだかえ? そうそう忘れるところであった」




 そして、神様は等しく平等であった。


 日本にも、広島と長崎が再度更地に変わり、東京と京都に大阪や名古屋。沖縄の那覇にも神の災厄が降り注いだ。

 日本支配下の朝鮮半島や満州の都市も無事では済まなかった。釜山、京城、大邱、平壌、開城、新京、奉天、ハルピン等が更地になったのである。


 また、満州に侵攻するために集結していたソ連軍も、ついでとばかりに大部分が消滅させられてしまったのであった。




「さて、これで人類も平和になった。一仕事して疲れたから我はもう一眠りするかのぉ。これからの人類がどう進化して行くのか、起きた時が楽しみじゃのぉ」




 こうして、地球という神からの警告によって、人類は半減したのであった。


 第二次世界大戦がほぼ終結に向かっていた段階で起きた世界規模の大惨事によって、これからこの世界がどうなるのか? それはきっと誰にも分からないであろう。

 神の鉄槌によって国土の大半が蹂躙されてしまった主要国が大多数なのだから、これからの予測が不可能になってしまったのだ。


 ある者は泣き叫び、ある者は悲嘆にくれ、またある者はケタケタと狂ったように笑う、そんな光景が世界中のあちこちで見られるのだった。

 そして、この大災厄を慶事と喜び好機到来とみて、悪意を持って蠢く輩もちらほらと……



 地球とは、なにか?

 人類にとって地球とは、母なる大地である。その母なる大地を荒らし食い潰して破壊する人類に、はたして明るい未来はあるのだろうか?


 この一件は、神からそう問い掛けられた出来事だったのかも知れない。



だいたい全部、肉屋とトルーマンのせい(´・ω・`)

平和は尊い…

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