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小犬あげます

作者:緒形誠志
〈小犬あげます〉
 その張り紙を見て、正太は胸躍らせた。
 まえから、犬を飼ってみたかった。自分も小さいので、小犬を。
 一緒に公園で遊んだり、河原を駆けてみたり。
 正太は思いきって父親に相談してみることにした。近所のその張り紙のことを打ち明けた。
「小犬か。ふーむ」
 自分の気持ちを話し終わり、正太はどきどきしながら父親の返事を待った。
「面倒はみられるのか。おまえが全責任を負うんだぞ」
「やってみるよ。一生懸命世話をするよ」
「エサ代はどうする」
「ぼくのおこづかいから引いていいから」
「ふうむ」
 父親は腕を組んだ。しばし沈思黙考。
「よし」にこりと笑った。「もらってもいいぞ。実をいうとな、正太、我が家もなにかペットを飼おうと思っていたところなんだ」
 それは正太の情操教育のため、父親が思案していたことだった。
 父親は正太の頭をなでる。
「小犬、かわいがるんだぞ」
「うん、ありがとう!お父さん!」
 次の日正太は小犬を譲り受けに出かけた。

 もらってきた小犬は、小犬は小犬でも、老犬だった。
 雄の老犬特有の不景気な顔つき。覇気がなく、身体中しわだらけ。においも、なにかいやぁな、すえたようなくさいにおいがした。
 散歩に連れて行こうにも、おっくうがって行かない。
(全然、かわいくない!)
 正太ははっきりそう思った。
 名前は老犬だからすでに付いており、ボソという名だった。いかにもしけた名前である。
 それでも正太は父親との約束の手前、一生懸命面倒をみた。
 だが、ボソはなつかない。いつも「ヴ〜」と小さなうなり声を立てており、つねに眉根にしわを寄せていて、正太であろうと、誰であろうと、警戒心猜疑心丸出しで吠えかかることがしょっちゅうだった。
 そのくせ、エサは食べるわ食べる。小犬のくせに、大型犬なみにがっつくのだ。
 そして、こともあろうに糞尿をそこいらじゅうにまき散らす始末。
 家族全員ボソが嫌いになった。
 暗く、わがままで、頑固で、面倒のかかるワル犬。
(ぼくだろうと、誰だろうと、こんな犬かわいがる人はいない!)

 一週間後、正太の家のまえに張り紙が張られた。
〈小犬あげます〉

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