第60話『必ず、待っていてくれるから』
新年1発目の投稿となります。
その挨拶も含めてちょっとした小話を書いてきましたので、ぜひそれを読んでから本編へどうぞ(メタ発言注意)
『新年の挨拶』
リウス
「新年明けましておめでとうございます」
ユキ
「今年も本作をよろしくお願いします」
リウス
「……ちょっと待て、そんなメタ発言していいのか? この作品にメタ要素って無かったよな?」
レイミア
「一応……読者の方に向けた挨拶ですし、ここは本編とは関係ないので良いのでは?」
ミティア
「……作者のひとも、ここで、なら……いいよって」
リウス
「ああ、そう……。――と言うか、ミティアって作者の人とコンタクト取れるのか」
ユキ
「そこは……ほら、新年だから。いいんじゃない、かな?」
リウス
「ご都合主義ってやつか――使い方違うような気もするけど……。ともかく、本年も作者共々よろしくお願い致します」
◇◇◇◇◇
???
「…………あの〜、旦那様? わたくしはいつになったら皆様にお会い出来るのでしょうか……?」
リウス
「え、あ、いや、まだお前は出てきちゃいけないだろ」
???
「ですが……中々出番が無いので……。今って、第4章ですよね? 女神降臨編なのですよね? わたくし、重要人物の筈ですよね!?」
リウス
「いや、そうだけど、話の流れ的にまだ登場出来ないだろ。船の上に現れる訳にもいかないし」
???
「最初から物語に出ていらっしゃる旦那様には分かりませんよ……。第4章の最初で意味深に登場しておきながら、放置され続ける者の辛さは……」
リウス
「でも、出る事は確定してる訳だし――」
???
「知ってるんです。わたくしの名前の部分が『???』になっているのは名前を隠す為ではなく、まだ確定していないからだということを!」
リウス
「あー…………」
???
「名前も付けられていないキャラクターが、作品に登場できるという根拠が一体何処にあるのでしょう? いえ、きっと誰かしら新キャラは出るのだろうと思います。ですが、果たしてその時に現れた者は、今のわたくしと同一人物なのでしょうか!?」
リウス
「……まあ、何を言おうと勝手だけど、それで降ろされても俺は知らないぞ」
???
「え、ちょっと、旦那様そんな――申し訳ありません今までの事全て無かったことに――」
今年も『最強魔王の異世界放浪記』をよろしくお願いします!
それでは、第60話『必ず、待っていてくれるから』をお楽しみください!
テーブルと銃を仕舞った後、2人はユキとレイミアのいる場所へ歩いていく。
「2人ともお疲れさま」
レイミアとの組手を終え、先に休憩していたユキが2人を労った。
「まあ、俺は見てただけなんだけどな」
「……つかれた」
「ゆっくり休んでくれ」
「……ん」
近くにはユキがアイテムボックスから出したであろう椅子が置かれており、ミティアはそれに腰かけた。そして、既に休んでいたレイミアがその側にある椅子に座り、談笑を始める。
その様子を見ていたリウスにユキが話しかける。
「どう? ミティアちゃんは上達してる?」
「ミティアが頑張ってくれてるから、最初に比べれば大分ね。ただ、実戦で戦えるかってなると……まだ足りないってところかな」
「やっぱり、動いてる相手に当てるのは難しいの?」
「ああ。自分も相手も止まってるなら、いちいち狙いを変える必要がないからな。でも、互いが動いてるとなると、相手との距離、相手の動きと弾道の予測、弾速、角度――挙げ始めたらキリがない程色々な要素が絡んでくる。そういう事は教えれば出来るようになるものでもないから、実際に経験を積むしかないだろうな」
リウス自身、お互いに止まっているならばそれなりの精度で弾を命中させる事が出来るが、そうでない場合、命中精度は2割もいくか怪しい。至近距離でばら撒くだけならば当たるだろうが、それ程近くで戦っては銃の長所が生かせない。第一、そんな至近距離で戦うならば剣で切った方が早い。
尤も、相手の動きや距離、弾速、障害物などの一切合切を無視して弾を当てる方法も無い訳ではない。だが、それをミティアが使うにはまだ魔力が足りなかった。
「ユキの方はどうだった?」
「私? 私の方は、まだ手加減されてるかな。リウスやレイちゃんの様にはいかないね」
「俺だってレイミアに比べたらまだまだだよ。力比べの組み合いならまだしも、技術で決まる試合だとレイミアは強いからな」
「――そういえば、今日は模擬戦しないの?」
「まあ、俺はしても良いんだけど、レイミアは疲れて――」
「やります」
「うぉっ、聞いてたのか」
先程までミティアと談笑していたはずのレイミアが、いつのまにかリウスの横に立っていた。
「やりましょう」
「あ、いやでも、疲れてないか?」
「ここでは身体的な疲れはありませんから」
「ああ、うん。まあそうなんだけどな」
(模擬戦よりもその後が本命だな)
以前、まだ模擬戦を冒険者ギルドの訓練場で行なっていた頃。レイミアの疲労を労う為の吸血行為。それは模擬戦の場所がここ〈平和で退屈な世界〉に移ってからも続いていた。
先程レイミアも言っていた通り、ここでは身体的な疲労はない。つまり、吸血という行為は既に疲労回復という本来の目的からズレたものという訳だ。
しかしながら、レイミアが吸血をやめると言い出す事も無く、また、リウスの方からやめて欲しいと伝えることも無かった。
そこに深い意味は無いが、リウスからすれば自身の訓練にレイミアを付き合わせているのは事実であったし、何より、レイミアが模擬戦後の吸血を楽しみにしていることをリウスは何となく察していた、という理由があったり、なかったり。
「――それじゃあ、やるか」
「はい!」
リウスとレイミアが連れ立って休憩場所から離れていく。30m程離れたところで2人が向かい合う。
「さて、ルールはいつも通りな」
「……ご主人様、前から思っていたのですが、このルールは少し私に有利過ぎるような……」
「そうか?」
模擬戦を行う場所が〈平和で退屈な世界〉になった事で、模擬戦のルールも自ずと変更された。
以前は安全面に考慮して、魔法、スキル、武具などの使用を全面的に制限していたのだが、ここではその必要も無くなった。とはいえ、ルール無しで殴り合う――勿論、比喩的な意味で――という訳でもない。
現在のルールは3つ。
1つ。先に10回攻撃を当てた方を勝者とする。
2つ。頭、胴体以外への攻撃は全て防御されたものと見なし、攻撃を当てた回数にはカウントしないものとする。
3つ。相手へ直接的な攻撃をする魔法やスキルの使用を禁ずる。
1つ目と2つ目のルールは、より勝敗を明確化する為のものだ。自己申告によって勝敗を決める方法だと、押さえつけて拘束した瞬間に終わってしまうなど、まともな試合にならない事も多かった。それを防ぐ為のルールでもある。
3つ目のルールは、これもまた、制限しなければまともな試合にならない為に設けられたルールだ。
ここでは魔力の消費がない。そんな魔法撃ち放題空間でリウスとレイミアが砲撃戦をすれば、魔法の規模、種類、発動速度、どれを取ってもレイミアに勝ち目は無い。
かと言って、全ての魔法とスキルの使用を制限すれば、これもまたステータスが圧倒的に高いリウスの勝ちは揺るがない。これは以前冒険者ギルドの訓練場で行なっていた模擬戦がそれを物語っている。
その為、直接的な攻撃をする魔法やスキルのみ――より正確には、攻撃をする事しか出来ない魔法やスキルだ――を制限しているという訳だ。つまり、“召喚魔法などによって召喚された魔物などで攻撃を与える行為は禁止ではない”。召喚魔法の発動と攻撃を与える行為がイコールではないからだ。例え結果的に、“発動と攻撃がイコール”であったとしてもだ。
「有利に感じるのは、レイミアのスキルが防御に寄ってるからじゃないのか?」
「ですが、攻撃魔法まで禁止というのは……」
「魔法を解禁したらそれはそれで俺に有利なルールになる。良いんだよ、不利なぐらいが丁度いい。その方が面白いからな」
そう言って、リウスがレイミアにコインを手渡し離れていく。そして、20m程離れたところで立ち止まり、振り返る。
「後、毎回言ってる事だけど――――手加減の必要はない」
「……分かりました。それでは、始めましょう」
レイミアが答え、手に持ったコインを指で弾き上げる。コインは綺麗な放物線を描き、2人の間に落下した。
――瞬間、時が止まる。
リウスのスキル《時間停止》による行動の制限。動きを止めたレイミアの背後までリウスは歩いていく。
(何度もするような手じゃないけど、これぐらいのズルは許してくれ)
レイミアに時間停止への対処法が無い以上、これを繰り返せばリウスは勝利することが出来る。だが、それはこの模擬戦の意図から著しくズレたものだ。だからこそリウスは、ルールで禁止こそしていないが、時間停止を使用するのは1回だけにするというルールを自身に課していた。
そもそも使わないという思考はリウスには無かった。リウスとて“試合には勝ちたい”。模擬戦の場所がここに移ってから1度も勝てていないのだから尚の事だ。
リウスが腕を引き、レイミアの背中に向けて下から打ち上げるように腕を突き出した。そして、拳がレイミアに触れる瞬間に《時間停止》が解除される。
「く……っ。後ろっ」
「まずは1回だ」
10m程殴り飛ばされたレイミアは空中で体勢を立て直しつつ着地する。しかし、その時には既に追い打ちをかけるべく、リウスが直ぐ側まで迫っていた。
「っ。《眷属召喚》」
レイミアが手から血液を流しながらスキルを発動させる。すると、レイミアとリウスの間に体長3mはあろうかという狼が姿を見せる。
「ちっ」
しかし、リウスは速度を緩めるような事はせず、アイテムボックスから大剣を取り出すと、目の前の大狼を薙ぎ払う。
真っ二つになった大狼は血液となってその場にぶちまけられる。だが、消えた大狼の先にレイミアはいなかった。
(どこに……)
リウスが《空間把握》でレイミアの居場所を探ろうとしたその瞬間、リウスの腹部に衝撃が走った。
「がっ……。《影転移》か――」
「1回目、ですっ」
《影転移》はレイミアが持つスキルの1つだ。
影と影の間を自在に移動出来るこのスキルは、影が無ければ使用することが出来ない。
この空間は天井全てが照明になっているらしく、どこに立っていても自分の足元から影が動く事はない。
スキルの性質上自分の影の中に入る事は出来ないレイミアは、スキルによって巨大な狼を召喚し、その影を使って影転移を発動。走っていた為に前傾姿勢になっていたリウスの影へ転移し、腹部へ打撃を加えた。
2度目の有効打を与えるべくレイミアが追い打ちをかける。右手をリウスの左脇腹に振り抜くが、リウスはそれを左手で防ぐ。しかし衝撃を受けたことに変わりはなく、リウスは慣性にしたがって飛ばされていく。
(一回仕切り直さないとまずいな)
試合のペースがレイミアに寄り始めた事を感じたリウスは、アイテムボックスからハンドガンを一丁取り出すと、飛ばされながらもレイミアに銃口を向け、剣を持たない左手で引き金を引く。発射された弾は全部で5発。どれも命中はしなかったが、レイミアの行動を抑えるには十分だった。
その隙に着地をしたリウスは、再びレイミアへ向けて引き金を引く。弾がレイミアの胴体に着弾する瞬間、服だけを残しレイミアの姿が“霧のように”かき消えた。
「さて、ここからどうするか」
◇◇◇◇◇
リウスとレイミアの模擬戦が始まってからおよそ10分。ユキとミティアは離れてその様子を見ていた。尤も、ミティアには2人の戦闘の殆どを目で追う事が出来ていなかったのだが。
最初こそ肉弾戦のような戦いが繰り広げられていたが、今ではリウスは魔族の姿に戻り、そしてレイミアは背中から一対の“羽を生やし”、お互いに空を飛ぶ“空中戦”を交えた戦闘に変化していた。
「……マスター、とべ、るんだ……」
「みたい……だね。私も初めて見たよ」
今までもリウスとレイミアの戦闘を見た事はあったが、銃弾と矢が飛び交い、空中で剣戟が行われるような本気の戦闘を見たのは初めてだった。
比べるような事ではないとユキ自身分かってはいるが、この戦闘を見てしまうと、自分が先程までやっていた組手が急にお遊びのように思えてきてしまう。
「……おいつける、かな」
タイミング良く、ミティアが口を開く。
「え……?」
「……ふたりに」
「――分からないよ。でも、置いていかれるような事は無いから。必ず、待っていてくれるから。私たちは私たちのペースで頑張ろっか」
「……ん」
リウスが剣でレイミアを斬り飛ばす。
そろそろ2人の戦闘は、終わりを迎えようとしていた。
◇◇◇◇◇
リウスが大剣を振り抜く。
大剣はレイミアの防御を掻い潜り胴体に直撃する。
先程《霧化》のスキルによって服を脱ぎ捨てたレイミアだが、流石に全裸で戦うような事はせず、現在は《武具顕現》によって作り出した黒の鎧に身を包んでいた。
しかしこの模擬戦はデスマッチではなく、ルールの決められた試合だ。いくら鎧で生身が守られていようと、攻撃を受けてしまっては意味がない。
「これで7回目……っ」
現在の得点数はリウスが7ポイント、レイミアが9ポイントとかなりの接戦だが、レイミアは後1度有効打を与えれば勝利が決まるのに対し、リウスは後3度も有効打を当てなければならない。状況的にも心情的にもリウスが不利な状況だった。
(ここで畳み掛けるしかない)
単純な戦闘技量ではレイミアが上。防御に回れば徐々に追い詰められていくのは目に見えている。
攻撃を受けた直後で隙があるこの瞬間。せめてここで同点まで持っていけなければ、リウスに勝ち目は無い。今までの戦闘から考えて、2ポイントも差がある状態で逆転出来ると思うほど、リウスは間抜けでも自惚れてもいなかった。
空中で羽を使って体勢を立て直しているレイミアに向かってリウスが駆ける。
それを見てレイミアは不安定な体勢ながら《武具顕現》によって作り出した弓に矢を番える。そして矢を放つと同時に《眷属召喚》で召喚した蝙蝠の群れをリウスに放つ。
リウスは放たれた矢を剣の腹で防ぎつつレイミアとの距離を詰めるが、そこに召喚された50を超える蝙蝠が襲い掛かる。
剣で防ぐか、それとも切り捨てるか、もしくは引くか。
一瞬の思考。そしてリウスは、それらを全て無視する事にした。
数が多いとはいえ相手は蝙蝠。例え群れの中を突っ切ったとしても有効打にはなり得ない。
先程よりも更に強く踏み込み、リウスが蝙蝠の群れに突っ込む。
――その刹那。蝙蝠の群れの更に奥。既に着地を済ませたレイミアの顔を、リウスの目は捉えた。
その顔は、笑っていた。
瞬間、リウスの視界が暗転――否、紅く染まる。そして、リウスの背に強い衝撃が与えられた。
床に叩きつけられたリウスは、踏み込んだ勢いそのままに転がっていく。やがてそれが止まると、リウスの前にはレイミアが立っていた。
「私の勝ち、ですね。ご主人様」
「……ああ、俺の負けだ」
レイミアが手を差し伸べ、リウスを立ち上がらせる。
今回の模擬戦は、レイミアの勝利という結果で、幕を下ろした。
◇◇◇◇◇
「最後の攻撃、あれはどうやったんだ?」
レイミアに立ち上がらせてもらった後、開口一番リウスが訊ねる。
「あれは、《眷属召喚》の応用です」
「応用?」
「はい。私のスキル《眷属召喚》は、召喚される眷属の素材に血液が使われています。なので私は、このスキルを使う際には《血液吸収》で保管している血液を手に纏わせたりしているのですが、使う血液は何も私に触れている必要は無いんです」
「離れていても使えるって事か」
「はい。流石に離れ過ぎていては無理ですが、目の届く範囲程度であれば、離れた場所にある血液を使ってスキルを使う事が出来ます」
「……なるほど。つまり、あの時蝙蝠の群れを召喚した理由は、目眩しでも攻撃でもなく、群れで俺を囲んだ後、スキルを解除して“血液を浴びせる為”だったって訳か」
怪我もしていないのに血濡れになった自分の体を見ながらリウスが言う。レイミアは「申し訳ありません」と謝った後、スキルを使ってリウスの体に掛けられた血液を一滴残らず吸収する。
「その通りです」
「まさか《眷属召喚》にそんな使い方があるとは。魔法もスキルも使い方次第だな。流石だよ、レイミア」
「いえ、これほど私に有利なルールで、かつ攻撃魔法を制限されたご主人様に負ける訳には行きませんから」
「手加減をするつもりは?」
「実戦で手加減をしてくれる敵はいないですから。――それに、そういった無用な気遣いは必要ないと仰ったのはご主人様では?」
「まあ、そうだけどさ」
手加減の必要はない。その言葉の意味を、その言葉の理由を理解していたからこそ、レイミアは卑怯と言われても仕方のないような手段を使ってまでして、リウスを負かしたのだ。
模擬戦を終えた後の2人の表情は、先程まで激しい戦闘をしていたとは思えないほど晴れやかで、そして満足気なものだった。
「それで……ご主人様」
「なんだ?」
「いえ、その……報酬、というか、ご褒美、というか」
早速それかと、リウスが笑う。
「忘れてないから安心してくれ。ここを出た後、な?」
「……はい」
嬉しさを隠し切れていない表情で、レイミアはそれだけ答えた。
先日この小説に対する感想を頂いたのですが、はい、めちゃくちゃ嬉しかったです。と言うよりもう感想じゃなくても嬉しいです。
もともと趣味で始めたWEB小説ですが、やはり感想を貰えると嬉しいものですね。
感想を頂いたのは今回で2度目なのですが、もう死ぬほど読み返してます。ありがとうございます。
「感想残してやってもいいぜ」って方はぜひ、どんなものでも構いませんので、よろしくお願いします。
もしかしたら投稿頻度が上がる……かも知れません。
あと、全く関係のない話ですが、実は最新話投稿の告知をTwitterで行なっています。ただ、大してフォロワーがいるわけでも無いので「これ、意味無くね?」という状態でして。
という訳で盛大に宣伝します。『@shiozatou』がTwitterのアカウントとなっております。
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……今回長いなぁ。まあ新年だから、ね?




