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最強魔王の異世界放浪記  作者: 塩砂糖
第3章《呪われし奴隷編》
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第52話『私って本当馬鹿』

@shiozatou


↑Twitter始めましたー。小説投稿のお知らせやどうでも良いことなど呟くと思いますので、宜しければフォローお願いします。

 対象の複製魔法〈複写形成〉を作成してから2日。

 銃の弾が実質無限になったのをいいことに、ここ数日はミティアの射撃練習とレベル上げを兼ねて魔獣や魔物の討伐依頼を受けていた。

 基本的にはミティアが倒し、手が足りなくなった場合は加勢するといった感じだ。

 ミティアも中々上達が早いので、自衛が出来る程度に戦えるようになる日は近いかも知れない。まあ、メイド服――以前の服は破れてしまった為、新たにミティアが選んだ服がメイド服だった――で銃を撃っている姿は少しシュールな光景だが。

 それに加え、銃が使えない状況対策に短剣の扱いもレイミアから習っている。銃自体が珍しい武器の為、それを隠す策でもある。

 かなり忙しいスケジュールなのだが、やっている事が楽しいのか一つも不満は言わなかった。不満は言わなかったが、何かして欲しい事は無いかと聞くと、練習終わりにマッサージをして欲しいというお願いをされた。こういった“お願い”を素直にしてくれるのは、ミティア自身に“自分は奴隷である”という意識が無くなってきた証拠だろうか。


 今日も魔獣討伐とレイミアからの戦闘技能訓練を終え、ユキ、レイミア、ミティアの3人はシャワーを浴びているところだ。

 俺はというと、ギルドから貰ってきたとある紙を見ていた。

 その紙には「大陸間通行船出航予定表」と書かれていた。要するに、別大陸行きの船の出航予定表だ。

 ミティアの事で長居してしまったが、そろそろこの国を出てもいい頃合いだろう。


 俺が殺したサーバ帝国第2地区領主「ダトス・ベージ・ガルバー」。この男を殺したことによる影響は、俺が思っていたよりずっと少なかった。

 なんでも、この地区の領主であるダトスは、領主としての仕事を殆どを文官や武官に任せていたらしく、領民の生活は領主が変わっても殆ど変わらないとの事だった。

 領主が“行方不明”になった直後こそ騒ぎになったが、帝国民、特に平民は自分の生活が変化しない事を知ると、瞬く間にその話題は過去のものになっていった。政治に関心のない人間など得てしてそういうものだ。向こうの世界と違い、無駄に騒ぎ立てるマスメディアなどもそこまで発達していないこの世界では、領主が行方不明になるという事件でも、それ程関心を引く話題にはなり得なかった。日本でだって選挙の投票率が低く問題になったのだ。情報が発達している世界でこれだ。日本より余程死が身近にあるこの世界で、政治に熱心な平民は少数だった。尤も、領主が突然行方不明になるという事、そしてその領主が出していた奴隷探しの依頼。これらに何か関係が無いのかと勘繰る者がいない訳では無かったが、俺達以外の当事者で生きているのは、あのレンブという男だけだ。幸い、レンブが事件について何か言い触らしたりしている事もなく、また、ダトスの館からも俺やレンブに繋がる証拠は出てきていないらしい。事実上事件は迷宮入りという訳だ。

 詰まる所、俺がダトスを殺した事で“帝国平民”に何か不都合があったかと言われれば特に無かったという訳だ。尤も、あったとしても俺はそれを無視しただろうが。


 そんな訳で、もうこの帝国に留まる理由は無くなった。観光も十分したし――言うほど観光するような場所は無かったが――そろそろ移動してもいいだろう。

 その為、俺は魔獣討伐帰りのついでにギルドから船の出航予定表を貰って来たという訳だ。

 実のところ、この大陸、フレイシアにはもう一つ国があるのだが――。


 そんな事を考えていると、突然後ろから軽い衝撃が伝わってくる。振り返ると、いつのまにシャワーから上がっていたのか、ミティアがソファーの背もたれ越しに抱き付いてきていた。その後ろには、同じくシャワーから上がってきたユキとレイミアが立っていた。3人ともまだホカホカしている。


「……なに、してるの?」

「ギルドに貰った予定表を見てたところだ。もう上がってたんだな」


 ミティアが俺の横に座り、その横にユキが座る。レイミアは横に立ったままだ。


「それって、船の予定表?」

「ああ。そろそろ移動しようかと思ってさ」

「でも、どうして別の大陸なの? もう1つ行ってない国あるよね?」

「まあ、そうなんだけどな」


 フレイシア大陸には3つの国がある。

 1つは俺とユキが目覚めた森のある「フェイルム王国」。

 今俺達のいる「サーバ帝国」。

 そして、サーバ帝国と事実上の戦争状態にある「ラトス王国」。


 俺はこのラトス王国にどうしても行く気になれなかった。

 それは、ラトス王国とサーバ帝国が戦争――と言っても近年は大規模な戦闘行為は起きていないが――をしている理由にも関係があった。


「なあ、ユキはサーバ帝国とラトス王国が戦争をしてるのは知ってるよな?」

「うん。フェイルムでミーアさんが言ってたよね」

「あの時は『するかも知れない』って言ってただけだったけどな」


 恐らく大規模な戦闘が起こっていないのであんな言い方をしたのだろう。だが、いくら大規模な戦闘行為が行われていないからと言って、国家間で停戦協定乃至は休戦協定が結ばれない限り戦争中である事に変わりはない。


「それは置いてといて。ユキはなんでサーバ帝国とラトス王国が戦争してるか知ってるか?」

「ううん。そこまでは分からないけど……」

「まあ、俺も調べたから知ってるだけだしな。この戦争は簡単に言うと、宗教戦争みたいなものなんだ」

「宗教戦争?」

「そう。ラトス王国は“人間至上主義”なんだ」

「それって……人間が一番だって考えてるってこと?」

「ああ。ラトス王国は人間こそが最良の種族だって思想を持つ国なんだ。向こうの世界でも白人至上主義ってあっただろ? あれが人種じゃなく種族って大きな括りまで広げられたような感じだな」


 知性持つ生物が人間しかいなかった世界での人種差別。知性持つ生物が複数いる世界での種族差別。どんな世界、時代であろうとこうした差別は必ず存在する。そしてその差別を無くす事は、人が“個人”という小さな規模で分けられている以上不可能だ。

 要するに、個人が尊重“のようなこと”をされる程、一人として同じ人物はいないと考える程、差別は増えていく。知性持つ生物は、自分と違う生物を完全に受け入れる事は出来ない。知的生物に“無条件”で何かを行うという思考回路などありはしないのだから。

 知的生物の行動には必ず、それを行うことによって自分が得をするか、損をするかという思考が介入する。損をする事が分かっていて行動する事はあっても、損得勘定無しに行動する事はあり得ない。

 そんな生物が一種類存在するだけでもその種族の中で差別が起こる。複数知的生物が存在すれば、種族規模で差別が起こるのは当たり前だ。


「じゃあ……サーバ帝国とラトス王国が戦争してるのって……」

「サーバ帝国は種族差別が少ない国だ。この戦争はそういった考え方の違いから起きた戦争なんだよ」

「だから宗教戦争に似てるって言ったんだね」

「そういうこと」


 人間至上主義を掲げるラトス王国は人間以外の種族の入国を厳しく制限している。それは冒険者であっても例外ではない。

 冒険者ギルドに登録しているCランク以上の冒険者は、冒険者ギルドのある国への入国、出国に制限がない。これは、国とギルドが凡ゆる面で協力関係にあるからこそなのだが、ラトス王国には冒険者ギルドが存在しない。

 冒険者ギルドの役割を持つ組織は存在するが、冒険者ギルドとの最大の違いは、独立した組織ではなく国が運営している組織であるというところだ。

 その為、冒険者であっても自由に入国する事は出来ない。尤もそれは、“人間以外”の種族に限った話だが。


「こう言ったらあれだけど、俺達は全員人間じゃないからな」


 俺は魔族。ユキは獣人。レイミアは吸血鬼だし、ミティアは魔物と人間のハーフだ。

 レイミアなら見た目だけでは吸血鬼だとバレないだろうが、ミティアは人間からも忌み嫌われている魔物とのハーフだ。もしバレた時のことを考えると、差別意識の高い国に行く気にはなれなかった。


「でも、リウスのスキルだったら姿を変えられるんじゃない?」

「そうだけど、正直そこまでして行く魅力がラトス王国にないんだよな。公然と他種族を差別してる国に行っても精神衛生上良くないしな」

「そっか。それもそうだね」


 そんな会話をしつつ、再び紙に目を落とす。


「そういえば、どの大陸に行くかは決めてあるの?」

「今のところはアイシア大陸に行こうかと思ってるけど、どこか行きたい場所あったか?」

「ううん、聞いてみただけ。それに、どの大陸に何があるのかは分からないから」

「俺も知ってる事は特に無いけどな。知ってる事と言えば、フレイシア大陸より気温が低いって事ぐらいだ」


 他に何かあったかと考えていると、ミティアから疑問の声が上がる。


「……船は、いつ?」

「出航日か? 一番早いのだと……約一週間後だな。出来ればこの船に乗りたいから、明日、明後日あたりには宿を出ないとな」

「え? 一週間後なんだよね?」

「そうなんだけど、一つ問題があってさ」

「問題?」

「ああ。実は、サーバ帝国からは船が出ないんだ」

「どういうこと?」

「この大陸で別大陸行きの船が出る港は、フェイルム王国とラトス王国にしか無いんだ」


 その上、この世界では海上の交通手段はそこまで発達していない。大陸間を移動する船となると一月に一回程度だ。


「ラトス王国に行けない以上、船に乗るならフェイルムに行くしかない」

「それって……」

「別大陸に行ったら早々この大陸には戻ってこれない。どうせなら、挨拶ぐらいして行ったほうが良いだろ?」



◇◇◇◇◇



 サーバ帝国を出発してから5日。馬車はあと数十分で王都フェイルムに着くかと言った所だ。

 以前フェイルムからサーバ帝国に向かった際乗った馬車の馬は相当馬力のある馬だったらしい。良い馬を何も言わずに用意してくれるあたり、流石ミーアさんと言ったところか。

 かなりゆとりを持って出発したので船の時間には問題無く間に合いそうだ。

 俺達の予定はこんな感じだ。

 まず王都フェイルムへ向かい、冒険者ギルドによってミーアさんと会い、船の乗船券を買う。その後フィレストへ行き、ミュエさんとアレインさんに会ってから、冒険者ギルドか宿で一泊。それから馬車で港町へ向かう予定だ。


「ミーアさん達、元気にしてるかな?」

「俺としては、こんなに早く再開する事になるとは思ってなかったけどな」


 恐らく、サーバ帝国からも船が出ていれば会いに行こうとは思わなかっただろう。だが、これも丁度良い機会だ。Sランク冒険者という肩書きには色々な意味で助かっている。出発当日に突然告げられた為、満足にお礼も言えなかった。アレインさんにお礼を言う良い機会だ。


「お客さん、そろそろですよ」


 御者のその声を聞き、馬車の外に顔を出す。馬車はフェイルムの直ぐそこまで来ていた。


「なんか……もう懐かしいな」

「そうだね……」

「ご主人様と会ったばかりの頃を思い出しますね」

「まだそんなに経ってないけどな」


 だが、実際かなり懐かしさを感じる。フェイルムでもそうだったが、サーバ帝国でも色々あった所為だろうか。


「ミティアは初めてか?」

「ん……多分……」


 ミティアは奴隷だった頃色々な場所に連れられたらしいが、その頃どこに連れて行かれたのかは、やはり分からないのだろう。


「今度、時間がある時にまた来ようか」

「……んっ」


 そんな会話をしているうちに、馬車はフェイルムの門に着いていた。

 衛兵に冒険者である事を伝え、街の中に入る。

 久々に訪れた王都は以前と変わらず賑わっており、人の多さは流石王都といった感じだ。

 馬車乗り場で馬車を降りる。運賃は先払いだ。

 時刻は現在13時。思ったより時間が掛かったが想定の範囲内だ。


「さて、冒険者ギルドに向かうか」



◇◇◇◇◇



 時は少し遡り、アイシア大陸。

 とある港町の冒険者ギルド。そこに併設された宿の一室で、赤髪の女性が一人地面に手をついていた。


「私って本当馬鹿……」


 以前何かで聞いたような台詞を無意識に呟きながら、床に手をつきため息を吐く。


「何で宿なんか取ったのよ……。休むなら船で休めば良かったじゃない……」


 彼女はブリーシア大陸からアイシア大陸を経由してフレイシア大陸へ向かっている途中だった。

 船の燃料補給などでアイシア大陸の港町に船が停泊中だった為に久々に訪れた街を見て回っていた。

 それが終わった後、船に戻って休憩を取っていれば何の問題も無かった。だが彼女は宿で休む事を選んだ。船での移動が長かった為、久々にベットでゆっくり休みたいという考えが何処かにあったのかも知れない。


「船……もう出ちゃってるわよね……。こんな時に限って寝過ごすなんて……。思ってたより疲れてたのかしら……」


 そんな事を一人呟いたところで時間が巻き戻る訳でも船が戻ってくる訳でもない。


「荷物を全てアイテムボックスに入れていたのは不幸中の幸いってところね」


 そう自分を慰めても、無意識に出るため息を止める事は出来なかった。


「……まぁ、時間なんて使い切れない程あるのだし、次の船で行けばいいわよね」


 今からであれば、アイシア大陸から新たに出る船を待つより、フレイシア大陸とアイシア大陸を往復している船を待つ方が早い。

 どうせ急いだところで結果は変わらない。それどころか無駄足だった時により疲れるだけだ。

 そう考えて自分を落ち着ける。


「気分転換に魔獣討伐にでも行こうかしら」


 アイテムボックスに手を伸ばし、武器を一度取り出し、それを見つめてからアイテムボックスに戻す。その武器は、一丁の銃だった。


「20年以上も経ってるのに忘れられないなんて……片思いだったくせに。重いったらないわ」


 そんな自虐を口にして、彼女はアイテムボックスから一本の剣を取り出して宿の部屋を後にした。

そういえば、ネット小説大賞落ちました。

まあ特に気にせずこれからも投稿していきたいと思いますのでよろしくお願いします。

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