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最強魔王の異世界放浪記  作者: 塩砂糖
第3章《呪われし奴隷編》
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第49話『楽しみにして、待ってる』

明日携帯を買い換えます。

スリープ状態なのに1時間もすれば電池残量が20%を切るような携帯とはおさらばです。

 銃の試射の為に来たのは、サーバ帝国周辺の森林だ。冒険者ギルドの訓練場にしなかったのは、貸し切りが難しそうだと考えたからだ。

 この世界では銃は珍しい。他に複数の冒険者がいる中で銃の試し撃ちなどすれば注目を集めるのは必至だ。

 そんな訳で、人気のない森にやってきたという事だ。


「まあ、こんな所で良いか」


 森の奥まで来た所で、周囲に人がいない事を確認してから〈空間隔離(アイソレーション)〉を発動する。


 今回は銃の試し撃ちだ。銃の種類はそれこそ膨大な量がある。全部を試すのは不可能だ。だが今回は試し撃ちだ。銃という武器がどんなものなのかさえ分かれば良い。

 銃がどんな武器か説明するには……やはりリボルバーが適切だろうか。

 勿論、自動拳銃や自動小銃、機関銃なども持っているが、リボルバーなどの回転式拳銃よりも構造が複雑だ。『弾を撃ち出し敵を攻撃する』。それだけを説明するなら構造が単純なリボルバーの方が説明しやすい。

 使うリボルバーは最も性能の低い――品質が悪いという意味ではなく、武器そのものが持つ攻撃力という意味で――ミティアに最初に見せたシングルアクションの.38口径リボルバーだ。


 弾を一発だけ込め、両手で銃を構える。狙うのは20メートル程離れた木の幹だ。.38口径リボルバーの有効射程距離は長くて精々25メートル程度。実戦で動いている敵に当てるのであれば、最低でも10メートル迄は近づかなければまず当たらない。

 俺も射撃経験はあるが、拳銃で20メートル先の動いている人間に当てられるかと問われれば、難しいと答えざるを得ない。本来拳銃は相手に近付き1〜3メートル程度の距離で撃つのが一般的だ。今回20メートルも離れた木の幹を狙うのは、的が動かない上に、木の幹が人よりも遥かに太いからこそだ。


「発砲音が大きいから耳を塞いでおいた方が良いぞ」


 室内ではないのでまだマシだが、それでも発砲音はかなり大きい。初めて銃の射撃を見るならば、発砲音が大きい事を覚悟しておかないと見学どころではないだろう。


「ユキも大丈夫か?」

「私は《聴覚保護》ってスキルを持ってるから平気だよ」


 貴女そんなスキル持ってたんですね。

 おそらく、俺の持つ《視覚保護》と似たようなスキルだろう。

 今まではユキの耳を考慮して、大きい音などを出来る限り立てないようにしていたのだが、必要無かったようだ。


 それはさておき。


 今回使うリボルバーに使用される弾は.38口径だ。一般的にハンドガンで使われている弾丸の為、反動はそこまで大きくない筈だ。

 撃鉄を起こし、引き金に指を掛ける。シングルアクションのリボルバーなので、トリガーストロークが短く、トリガープルも軽い。少し指に力を入れれば即座に発射されるだろう。


「行くぞ」


 引き金が引かれ、撃鉄が倒される――が。


「ん?」


 弾が発射される事は無く、カチッという音が虚しく響くだけだった。


 上手く撃鉄が雷管を叩かなかったのか? それ以上に、リボルバーで発射ミスとか暴発以上の恐怖なんだが。


 恐る恐るシリンダーを外して、弾を確認する。そして、ある事に気が付く。

 装填されていた弾丸には、本来必ず付いている筈の雷管が存在しなかった。

 一部の弾薬を除いた殆どの弾薬は、弾頭、薬莢、火薬、雷管の4つで構成されている。

 雷管というのは、薬莢内に詰められている火薬に火をつける為の着火機構だ。火縄銃の火をつける縄の部分と言えば分かりやすいだろうか。

 つまり、雷管が無ければ火薬に着火する事が出来ず、当然弾丸を撃ち出す事も出来ないのだ。


「どうしたの?」

「いや、ちょっと俺の知ってる弾薬と違うみたいだ」


 俺の持っている物は全てアポカリプスで手に入れたものだ。今まではアポカリプスのアイテムも武器も問題無く使えていた。ここに来て使えないという事は考え難いが……。


「そういえば確か……」


 アポカリプスでは一つ一つのアイテムにも裏設定の様な設定が付けられていた。それは当然銃や弾薬にもあった筈だ。

 アポカリプスで銃に付けられていた設定の中には……。


「“射撃時の推進力は魔力によって得ている”」

「……? リウス、どういうこと?」


 俺の呟きは俺自身にも聞こえない程の小さなものだったのにも拘らず、ユキの耳はしっかりと俺の呟きを聞き取っていたようだ。


「弾が発射されなかった理由が分かったかも知れない。もう一回やってみよう」


 もう一度シリンダーに弾を込め直し、撃鉄を起こして銃を構える。そして今度は、ただ引き金を引くのではなく、銃に、弾薬に魔力を込めつつ引き金を引く。


 瞬間、耳を劈く爆発音と腕を跳ね上げる衝撃が伝わってくる。発射された弾丸は真っ直ぐに木の幹へ飛んで行き、直径1.5メートル程の木の幹の根元を撃ち抜き――いや、消し飛ばしていた。

 木の幹を貫通した銃弾は奥にあった木々も薙ぎ倒し、〈空間隔離アイソレーション〉の壁にぶつかり停止した。流石にそれで〈空間隔離アイソレーション〉が破られる事は無かったが、予想を超えるダメージだった事に違いはない。まさか銃がこれ程までに強力だとは思わなかった。


「これは……凄いね」

「これが銃ですか……」

「……音、大きい」


 音が大きかったのか、ミティアは両手で耳を塞いで目を細めていた。


「ミティアも、撃ってみるか……?」

「……マスターが、一緒なら」


 完全に怯えてるなこれは。

 ……イヤーマフがあるか探してみるか。



◇◇◇◇◇



 その後、ミティアも銃の試射をしてみた所、最初怖がっていたのが何処に行ったのかという程気に入ってくれた。心理的にはジェットコースターのようなものだろうか。怖いけどやってみたい、いざやってみたら怖くなかった。そんな感じだろう。

 そんな訳でミティアが使用する武器が銃と決まったのだが……。

 問題は銃に使う弾薬だ。

 アポカリプスでは銃の弾薬は武器屋で購入する事が出来たが、この世界ではそうも行かない。弾薬はある程度使っても余るぐらいには持っているが、入手手段が無いのではいつか底を尽きる。

 なのでその辺りをどうするかを、ゆっくり湯船に浸かりながらでも考えようかと思っていたのだが……。


「なんで当然のようにミティアがいるんだ?」


 脱衣所で服を脱いでいたところ、当然のようにミティアが入ってきて、当然のように服を脱ぎ、当然のように俺を待っている。正直訳が分からない。


「……一緒に、入ろ?」

「いや、まあ、ミティアが良いなら良いけどさ……」


 個人的にはもう少し羞恥心を持って欲しいところではある。とは言っても、誰の前でも関係無く、という訳ではないので難しいところだ。

 出来るだけミティアを視界に入れないようにしつつ服を脱ぎ、風呂場に入る。勿論ミティアも付いてくる。


「……マスター、洗うから、座って」


 バスチェアをぽんぽんと叩いて座るよう促される。どうやら拒否権は無いらしい。

 バスチェアに座り身を任せる。例によってお湯を出すのは俺の役目だ。


 お湯で濡れた俺の頭をミティアが石鹸で洗い始める。

 久々に人に髪を洗ってもらうが、やはり人に何かをしてもらうのは気持ちが良い。これなら誰かと一緒に風呂に入るのも良いかもしれない。

 そんな事を考えている内に洗い終わったようで、お湯を出してくれるよう頼まれる。髪を流し終わると、ミティアがタオルで泡を立て始める。

 そのまま背中を洗ってくれるまでは良かったのだが、その後ミティアが俺の前に回り込んでくる。


「……前は自分で洗えるから」

「……洗って、あげる」

「自分で洗わせてくれ……」


 ミティアから何とかタオルを取り上げる事に成功する。

 体を洗い終えバスチェアから立ち上がると、入れ替わるようにしてミティアが座る。


「……マスター」

「はいはい」


 やっぱり俺が洗うんですね。


 ミティアも髪と体を洗い終わり――髪と背中は俺が洗ったのだが――二人で湯船に浸かる。例の如くミティアは俺の足の間に陣取っている。

 それだけならまだ良かったのだが、何を思ったのかミティアが突然姿勢を変え、向かい合うようにして俺の太ももに跨り腰を下ろす。

 あれ? いつだか全く同じ状況になった事があるような……。


「……どうしたんだ?」

「……」


 俺の質問には答えず、ミティアは俺の顔をじっと見つめる。


「……」

「……」


 その視線は徐々に下に降りていき、俺の体を見つめた後、更に下に降りて行く。そこには当然俺の“息子”が。


「あの……ミティア……?」

「……する?」


 その言葉が何を意味しているかを理解するのに然程時間は必要無かった。言葉以上にミティアの視線が何を意味するかを物語っていた。

 昨日想いを伝えられた以上、それが本気かどうかを聞くのは無粋だろう。

 さて、どう回避したものか……。


「……ほら、外にはユキとレイミアもいるし――」

「……許可は、取ったよ?」

「……許可って?」

「ん……。“そういうこと”しても良いよって、ユキさんが」


 昨日三人で風呂に入ってると思ったらそんな事話してたんですか。というより言いたかったのはそういう事じゃないんだが。


「……だとしても今はダメだ。初めてなんだから、するならちゃんとベッドでな」

「ん……。じゃあ、あとで?」

「いや、今日は無理だろ」


 百歩譲って俺、ユキ、ミティアが良いとしてもレイミアはどうするんだ。そういった事をしている横で寝ていろと? 一体何の嫌がらせだ。というより俺も嫌だ。見られて興奮する様な特殊性癖は持ち合わせていない。

 ……となると、4人で1つの部屋を使っている俺達では実質的に不可能なのではないだろうか。

 まあ、一晩だけ部屋を変えてくれと言えばレイミアは従うだろうが、そんな事は俺がしたくない。

 というより、何故“する”前提で考えているのだろうか。

 それだけ俺自身もミティアに気を許しているという事なのか。


「とにかく、必ず答えは出すから、今は待っていてくれるか?」

「……ん。分かった。楽しみにして、待ってる」


 恋する乙女は強いというか何というか。積極的な女性の相手は大変だと、つくづく思い知らされた。



◇◇◇◇◇



 夜、寝室にて。

 ユキ、レイミア、ミティアは既に寝ている。

 湯船に浸かりながら少し考えてみたが、結局入手方法の無い弾薬に関する解決案は思い付かなかった。というより、ミティアの攻めがあった為、物思いに耽る暇など無かったのだが。

 弾薬の在庫自体は十分にある。節約していればそれなりに持つだろうし、無くなってしまった後は魔銃を使えば良い。

 魔銃はその名の通り魔法の銃だ。魔力を弾として撃つことが出来、使用者のMPが尽きるまで撃つことが出来るのでリロードの必要がない。

 魔法との違いは威力、消費MP、連射速度といったところだろう。魔法よりも連射が出来て消費MPも少ない代わりに、魔法よりも威力が劣る。が、魔銃は何かと特殊効果が付いている事が多く、消費MP効率で言えば魔法よりも良い。尤も、汎用性という点では魔法に及ばないのだが。

 今ミティアに魔銃を使わせていないのは、単純にミティアのMP量がそこまで多くないからだ。

 普通に魔法を使う分には問題無い程度の量はあるが、魔銃を使うには少し心許ない。ダメージ効率が良いというだけで、単純なMP消費量は魔銃の方が多いのだ。俺のように膨大な量のMPが無くとも、圧倒的な回復量があれば話は別なのだが、ミティアはそんなスキルは持っていない。俺のようなMP量と回復量、どちらもある方がおかしいのだ。

 そう言った理由で今は銃を使わせているのだが、弾が無くなれば魔銃にシフトせざるを得ないだろう。

 俺個人としてはどちらも扱えるのがベストなので、どちらか片方になってしまう状況は避けたいところだ。

 何処かに弾薬を作ってくれる武器屋でも居れば良いのだが……。


 ……ん? 作る……?


(そうか!)


 そう。無ければ自分で作れば良い。この世界にある魔力という物質は、魔法によってあらゆる物質に変化させる事が出来る万能元素だ。

 そして俺は、光属性以外であれば全ての属性を魔導まで使う事が出来る。

 であれば、魔力を使って弾薬を作る事も、もしかすれば可能かも知れない。


(そうと決まったら早速やってみるか)


 横で寝ているユキ達を起こさないようベットを抜け出し、魔法による銃の弾薬作りを始める事にした。

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