第48話『ミティアのステータス』
暫く日常パートです。やっと平穏が戻ってきました。
ミティアを助け出した翌日。
朝食を食べ終わり、普段なら冒険者ギルドへ行って鍛錬をしている時間なのだが、予約を取っていない上、昨日あんな事があったので今日はゆっくりしようという事になった。
「リウス、何してるの?」
ネグリジェから部屋着に着替えたユキが寝室から出てくる。
因みにレイミアとミティアは、俺が座っているソファーから少し離れた位置でチェスをしている。
「ちょっとアイテムの整理をな」
正確に言えば、俺がしているのはアイテムの整理というより確認なのだが。
「何でそんなことをしてるの?」
問いかけながらユキが俺の横に座る。
「昨日あんな事があっただろ? 今までは何かと後回しにしてきたけど、ミティアも戦えた方が良いと思ってさ。その為にどんな武器が良いか考えてるところだ」
「私にも見せて?」
ユキにもメニュー画面を見えるようにし、武器の確認を続ける。
アポカリプスにはかなりの種類の武器が存在した。
大きく分けても、剣、斧、槍、鎌、槌、棍、弓、銃などがあり、特殊な物だと、鉄扇、手甲鉤、手裏剣など暗器も武器として登場した。
一口に剣と言っても、それだけで種類は大剣、長剣、短剣、双剣などがあり、更に分ければ細剣、銃剣なども追加される。その上一つの種類に絞っても数十、場合によっては百を超える数の武器がある。単純に種類だけでも二十近くの数があるのだ。その中から一種類選べと言われても悩んでしまうだろう。
今ミティアには暫定的に槍を使ってもらっている――リーチがあり敵から離れた位置で攻撃できる為――が、あまり使い熟せているとは言えず、本人も使い辛そうにしていた。
こちらとしても使い易い武器を早く探してあげたい所だが、それには実際に使ってもらうのが一番だろう。しかし、全ての武器を試すのは時間が掛かり過ぎる為不可能だし、ミティアの負担にもなる。やはり、幾つか候補は出しておいた方が良いだろう。
「……リウス」
二人してメニュー画面を見ていると、唐突にユキに名前を呼ばれる。
「どうした?」
「武器……多くない……?」
「ああ、それな……」
いつだか言ったように、俺にはコレクターの気があるようで、ゲームでも手に入る物は“取り敢えず”コンプリートしていたぐらいだ。それはアイテムだけでなく、武器や防具にも及ぶ。その結果、俺のアイテムボックスの約六割は武器と防具が占めているのだ。その中には、ドロップ入手のみの物も存在し、所有者が全プレイヤーの1%にも満たないような武器も持っている。今となっては確認しようもないが、俺しか持っていない武器もあるかも知れない。尤も、本当に凄いのは、それ程までに膨大な量の武器防具が存在するアポカリプスなのだが。
「ただ見てても絞りにくいな」
「やっぱり、ミティアちゃんに選んでもらう?」
チラッとチェスをしている二人の方へ目を向けると、相当白熱しているのか、二人共前のめりになってチェス盤を覗き込んでいる。駒の数や配置を見た限り、ゲームは中盤といったところか。今のところ、レイミアがマテリアルアドバンテージを持っているようだが、勝負がつくのはまだ先だろう。因みに、勝率は大体、ユキが50%、レイミアが30%、ミティアが20%といったところだ。俺が含まれていないのは、意図的に負けた場合を除けば、今のところ一度も負けていないからだ。
最近ではユキもゲームに慣れてきた為か、俺が意図的に悪い手を指すとそれに気付き、「手を抜かないで」と怒られる事もある。なので、最近は本気で相手をしている為、負ける事も無くなってしまった。とは言っても、ユキも中々に上達が早いので、余裕で相手が出来るのも今だけだろうが。
「集中してるみたいだし、聞くのは最後にしよう」
「そうだね」
だが、ミティアに聞けないとなると、どんな基準で武器を選ぼうか……。
「ミティアちゃんのステータスを見ながら選ぶのはどうかな?」
「そう、だな。それが良いか」
今のミティアのステータスはこんな感じだ。
【名前:ミティア・アリュード(16)】
【レベル:54】
【性別:女】
【種族:半幻影】
【職業:冒険者】
【HP:4385/4385】
【MP:4603/4603】
【筋力:710】
【耐久力:273】
【魔力:656】
【精神力:220】
【敏捷力:601】
【幸運:163】
ユキにも見える様にミティアのステータス画面を表示する。
俺やユキ、レイミアと比べてしまうと低く見えるが、この世界基準で言えば充分高水準のステータスだ。特に筋力と魔力はアポカリプスのプレイヤー――同レベル帯である事が前提だが――と比べても遜色ない。だが、耐久力や精神力、特に幸運はゲーム基準では勿論、この世界基準でも低い部類に入る。典型的な攻撃特化型のステータス。前衛として戦うよりも、後方から弓を放ったり、魔法で攻撃する事で真価を発揮するタイプだ。敏捷も充分に高いので、ユキの様に縦横無尽に駆け回り、ヒットアンドアウェイを繰り返す戦闘スタイルも良いかも知れない。
これを見ると、ある程度武器の候補も絞れるというものだ。
正直に言えば、ミティアが使いたい武器を使わせてあげたいところだが、ステータス的にどうしても扱えない武器、合わない武器というのは出てきてしまう。であれば、選ばせてからそれはダメだと言うよりも、予め合わないものを排除しておいた方が良いだろう。
排除される武器としては、大剣、槌、大鎌、槍、棍、斧と言ったところか。尤もこれは、ステータス的に使わせられない武器と言うだけであって、極端に低い耐久面を考えると、遠距離から攻撃出来る武器を勧めたいところだ。魔力が高いので魔法系の武器でも良いかも知れないが、ミティア自身がそこまで魔法を使えないので悩みどころではある。……まあ、流石にそこまで絞ってしまうと選ばせる意味がないのでやらないが。
そんな事を考えていると、ユキがふと何かを思い出したかの様に呟く。
「このステータス、なんだかナツに似てるね」
「え? ……確かに、言われてみればそうだな」
『ナツ』
アポカリプスでユキと同様にパーティを組んでいたプレイヤーだ。赤い髪の男性キャラクターを使用していた。
防御を完全に無視したキャラ育成をしており、『当たらなければどうということはない』を地で行く人物だ。
攻撃力だけを比べれば当時の俺よりも高いステータスを持っており、運営主催のPvP大会での優勝経験もあるプレイヤーだ。
使用武器は銃と魔銃。攻撃力やダメージ効率が良い反面、操作が非常に難しく、使用者が少なかった武器だ。かく言う俺も操作難度に心を折られ、使用を断念したプレイヤーの一人だ。そんな武器を使い熟し、PvP大会で優勝してしまうのだから大したものだ。
俺も銃そのものは好きだった為、保有してる武器の中で最も種類が揃っているのは銃と魔銃だったりする。ドロップ率0.01%以下の銃を手に入れた時は、嫉妬の言葉を幾つも投げ掛けられたものだ。お互いに武器や兵器の類が好きだったという事もあり、ゲーム内チャットではそういった話で盛り上がった事も多々あった。
職業は人類種のユニーク職である勇者。まあ、銃を撃ちまくるその姿は勇者にはとても見えなかったが。
閑話休題。
確かに、ミティアの防御が低く攻撃に寄ったステータスはナツに似ていると言えた。だからと言って、ミティアもまた銃を選択するとは限らない訳だが。
そんな事を考えながら武器の選別を進めていく。とは言っても種類分けをするだけなので大した時間は掛からなかった。ユキと会話していた時間の方が長いくらいだ。
「まあ、こんなものかな」
「後はミティアちゃんに選んでもらうだけ?」
「ああ」
武器の選定が終わり、後はミティア自身に選んでもらうのみとなった。
ミティアとレイミアの方へ目を向ける。チェス盤に残っている駒は少なくなっており、ゲームが終盤である事を物語っていた。駒が少なくなった終盤は如何に相手の動きを読めるかに掛かってくる。マテリアルアドバンテージはゲーム中盤と変わらずレイミアにあるようだった。
「レイちゃんが優勢みたいだね」
「だな。もう直ぐ終わるみたいだし、行ってみるか」
俺とユキが近付いてきた事に気付いた二人が助言を求めてくる。結果、ユキがレイミア側に、俺がミティア側に付いてチェスをする事になったのだった。
◇◇◇◇◇
俺とユキが双方に付いて再開されたチェスだったが、結果はレイミアの勝利で終わった。俺がミティア側に付いたからと言って、何から何まで俺が指示をする訳ではない。それでは俺がチェスをしているだけだ。なので、俺がしたのは“動かしてはいけない駒、移動してはいけない場所”を教える程度だ。
それにより、ある程度は善戦したのだが、序盤、中盤で開いてしまった差を埋めるには至らなかった。
チェスでは、基本的に駒の価値を点数として考える。ポーンが1点。ナイト、ビショップが3点。ルークが5点。クイーンが9点といった具合だ。尤も、駒の位置やその時々の状況により、ポーンを3点として数えたり、ビショップ二つの合計点を7点として考える事もあるのだが。
チェスの終盤ではこの合計点が大きな意味を持ってくるようになり、たった1点の差が勝敗を決める事もある。点数的有利がある事を、マテリアルアドバンテージを持っていると言い、今回はレイミアにそれがあったのだ。その状態から逆転するには、ミティアは少々実力不足だったという訳だ。
閑話休題
「それより、何かお話があったのでは?」
レイミアのその声で本来の用事を思い出す。
「ミティアの使う武器をちゃんと考えようと思ってな」
「……武器?」
「ああ。今は槍を使ってるけど、あまり使いやすくないだろ?」
「ん……。長くて、難しい」
「これからミティアも戦う事が増えるだろうし、今のうちにミティアに合う武器を見つけておこうってな」
今までは戦いに慣れるというより、俺達のサポートをして少しずつレベルを上げていくという理由が強かった。その為、リーチがあって比較的使い易い――弓などより、という意味だが――槍を使わせていたのだが、きちんと戦闘をするというのなら、扱い辛い武器を使い続けても良い事は一つもない。
「いくつか俺が候補を出しておいた。この中に使いたい武器がなかったらその時は言ってくれ」
先程ピックアップしておいた武器の種類を元に、一つずつ武器を床に出していく。今回はどの種類の武器を使うか決めてもらうだけなので、出した武器はどれも最低ランクの物だ。
全ての武器を出し終わる。
ミティアが順番に出された武器を眺めていく。そして、その目はある一つの武器で止まった。それは、俺とユキがいた世界で最も幅広く使われている武器であり、発射された弾丸が持つ運動エネルギーを以って対象を破壊する兵器――――銃だった。
この世界にも銃という武器は存在する。恐らく、俺達と同じアポカリプスのプレイヤーが広めたのだろう。だが、この世界は魔法がある分、科学の分野は疎か、工業などの分野も現代には遠く及ばない。その為か、銃はあまり一般的では無く――いや、先ず知っている者はいないだろう。
銃は弾丸を発射する武器だ。当然、弾丸が無ければ本来の性能を十全には発揮出来ない。工場などが無く、特定の物を大量生産出来ないこの世界では、同じ大きさの弾丸を生産するのは難しい。なので、この世界では銃という武器はあまり浸透していない。
ミティアが銃に興味を持つのは、ある意味当然といえるだろう。
「……これは?」
「それは銃と言って、金属で出来た弾を発射する武器だ。一応この世界にもあるけど、知らないのも無理はないな」
俺に質問をしながらミティアが銃を手に取る。銃の種類はシングルアクションのリボルバーだ。当然弾丸は装填されていない。
まじまじと銃を見つめるミティアに声を掛ける。
「興味、あるか?」
「…………ん」
僅かな沈黙の後返ってきたのは肯定の返事。まだこれにすると決めるには早いが、気になった物はどんどん試していったほうが良い。特に銃は剣などの刃物と違って、見ただけではどの様に使うのかが分かり辛い。銃を初めて見るのなら尚更だ。
「それじゃ、試しに行くか」
あれもこれもと書きたい事を書いていたら、話があっちこっち飛びまくりました。
でも、こういう話書くの好きなんです。




