第43話『君も……プレイヤーなのかな?』
クリスマスに投稿するつもりで昨日投稿しなかったのではなく、単純に間に合わなかっただけです。
それはともかく、皆さんメリークリスマス! 俺は今年も一人です!
「それでは、お戻りになった際はこれをお渡しすればよろしいのですね?」
「うん。頼むよ」
ギルドの受付で職員と会話を交わすのは、リウス達に依頼を行ったレンブ・タンクルだった。
リウス達がギルドを去った後、レンブはギルドの受付で、依頼の報酬を職員からリウス達に渡してもらうよう頼むと、ギルドを後にした。
ギルドを出た後、暫く大通りを歩いてから、レンブは一本の路地へ入る。
奥へと進み周囲に人が誰もいないのを確認すると、レンブは魔法を発動させた。
「レンブです」
『聞こえている。首尾はどうだ?』
「全て順調です。問題は彼らがどう動くかですが、会って話した印象から仲間を見捨てるとは思えませんので、問題ないかと」
『そうか。では、彼らの監視を続行し有事の際は対応せよ』
「……了解しました」
魔法の効果が切れる。それと同時にレンブはため息を吐いた。
「監視を続行しろ、か。こっちの身も考えてくれよ。バレたらどうなる事か」
愚痴をこぼしながら路地を歩く。慣れない魔法を使った為、顔には疲労の色が浮かんでいた。
「それにしても、前に会った時はまだAランク冒険者だった筈が、もうSランクとはね」
過去を思い返しながらそう呟く。
「しかし……リウスか……」
路地を抜け、彼らが向かったであろう場所へ目を向ける。
脳裏には、嘗て最強と言われていた魔王が映し出されていた。
「その名前、短期間でSランク冒険者になった実力。君も……プレイヤーなのかな?」
◇◇◇◇◇
ギルドを出てから約三十分。俺達は地図を頼りに目的地へ向かっていた。
「リウス、目的地まで後どれぐらい?」
「前に森が見えるだろ? あそこが採集ポイントらしい」
地図によれば、薬草の採集ポイントは森の中にあるようで、その目的地の森はもう目視で確認出来る距離まで迫っていた。尤も、距離は未だ現在地から三キロ程離れているが。
「それにしても、この地図やたらと正確だな」
街を出てからここまで《空間把握》を使い続けて来たのだが、レンブに渡された地図とスキルで得た情報を照らし合わせると、貰った地図は縮尺も位置関係も完璧に近いものだった。
地図の出来に感心しながら歩いていると、横からユキが話しかけてきた。
「ねぇリウス」
「ん? どうした?」
「私にも地図の読み方教えてくれない?」
「そういえば、ユキは地図読めないんだったか」
いつだか宿へ行く為の地図が読めなかった事を思い出す。
教える……と言っても、俺は特別地図を読む練習をした訳でもない。
「読めないって言うけど、具体的に何が分からないか教えてくれるか?」
「わかった。ええと――」
ユキが何故地図を読めないのか。それを聞き、読み方を教えている内にいつの間にか目的の森が近付いていた。
「着いたな」
「まずは魔獣退治だったよね?」
「ああ。取り敢えず森に入ろう」
《気配察知》を使いながら森を散策する。暫く森を歩いていると、明らかに動物とは違う反応をスキルが捉える。
「見つけた。これは……」
「リウス、どうかしたの?」
「いや、すこし懐かしいと思ってさ」
「懐かしい?」
「行けば分かるよ」
スキルを頼りに魔獣の元へ歩く。魔獣は休憩でもしているのか、その場から動かない。十数分後、俺達は森に流れる小川に出た。そこには、体長二メートル程ある大きな熊が眠っていた。
「あれって確か……ニストグリズリー?」
「ああ。俺達がAランク冒険者になるきっかけになった魔獣だな」
この世界に来て直ぐにAランク冒険者になるというスピード出世を果たせたのは、偏にこの魔獣のお陰だ。
近付くと、向こうもこちらに気が付いたのか、ゆっくりと体を起こす。魔獣まで凡そ三十メートル。
「どうするの?」
「適当に終わらせよう」
「私が片付けましょうか?」
「いや、俺がやるよ」
腰から片手剣を抜き、魔獣の元へ駆ける。一瞬にして肉薄し、魔獣の首目掛けて剣を振る。
俺が剣を抜いて約二秒。既に魔獣の首は地に落ちていた。
剣に付いた血を払い鞘にしまったところで、ユキ達がこちらにやってくる。
「お疲れ様。さすがだね」
「大した事ないよ。レイミア、頼む」
「畏まりました」
魔獣の首から地面に流れた血がレイミアに吸収されていく。それが終わり、ニストグリズリーの爪を剥ぎ取る作業に入る。
剥ぎ取りを終え、爪をアイテムボックスに仕舞い終わったところでユキから声が掛かる。
「後は薬草採集だよね?」
「出来ればって話だったけど、まあした方が良いだろうな」
ポケットから地図を取り出し、裏に描いてある絵を確認する。
「薬草の絵は分かりやすいけど、採集ポイントはこの森のほぼ全域か……」
「……探すの、大変」
「だな……。どうするか」
とは言っても良い案がある訳でもない。しらみ潰しに探すしかないかと思ったその時。
「……だったら、知ってそうな子に聞くのはどうかな?」
そう提案したのはユキだった。
「聞く? ……ああ、なるほどな」
「どういう事ですか?」
「そのままだよ。森の事を一番知ってるのは誰だ?」
「……森に住む、動物?」
「そういう事だ」
俺がレベルを上げた事で新たにスキルを取得しているように、ユキもレベルが上がった事によりスキルを取得している。
その中に、《意思疎通》というスキルがある。文字通り、言葉の通じない相手との意思疎通を可能とするスキルだ。尤も、動物相手にしか使えず、魔獣や魔物と意思疎通は不可能だが。
「ユキ、頼む」
「うん。やってみるね」
ユキは目を閉じた後、一度だけ口笛を吹く。それ程大きい音ではなかったが、静かな森にその音は響き渡った。
その音に反応するように複数の生物がこちらに向かってくるのをスキルで確認する。
最初に俺達の元に辿り着いたのは一匹のリスだった。
「おいで、リスちゃん」
ユキがしゃがんでリスを呼ぶ。リスはユキの横にいる俺達に警戒しながらも、ゆっくりと近づいてくる。
「リウス、その紙貸してくれる?」
ユキに薬草の絵が描かれた紙を渡す。ユキはそれをリスに見せながら尋ねる。
「私たち、この薬草を探してるんだけど、どこにあるか知ってるかな?」
ユキのその問いに、リスがホロホロという鳴き声を返す。
「知ってるみたい。案内してくれるって」
「……なんか、映画でも見てる気分だな」
この世界に来てから数週間。ある程度不思議な事には慣れたと思っていたが、憖動物と会話が出来るフィクション作品などを目にしていた分、実際に目にした驚きが大きかった。
それはさておき、リスの案内で薬草の群生地に着いた。早速薬草を採集を開始する。
ユキはこの森に生息する動物に手伝ってもらい、レイミアは眷属である狼に手伝わせ、俺は覚えた絵の記憶を頼りに探し、ミティアが絵を確認しながら採集する。
そして、採集を始めて十分程経ったその時――。
突如《気配察知》に複数の反応が現れる。
咄嗟に新たな反応が現れた場所へ目をやると、そこには五人の武装した男達がいた。
――そして、その中心にはミティアの姿も。
現れた五人の男のうち一人が、ミティアの口元に布を当てる。
瞬間、その男から魔法発動の気配を感じ取る。
魔法発動を止めようと反射的にスキルを発動させる。
《時間停止》
男の魔法と世界の動きを止める俺のスキル。先に発動したのは――男の魔法だった。
視界からミティアと男の姿が消える。残されたのは武装した四人の男達と、ミティアが手にしていた地図と薬草の絵が描かれた紙だけだった。
「……」
時間が止まった事により一切の音が消える。この世界で今動けるのは、文字通り俺だけだ。
誰も見ていないというこの状況。俺の感情を押さえつける枷は、今ここにない。
その為、俺は久々に本気の感情を爆発させた。
「――クソがあああ!!!」
力任せに付近の木を殴りつける。耳を劈くような爆音が響き渡るが、目の前の木はビクともしなかった。
「…………時が止まっていても、音は聞こえるんだな」
元より感情に身を任せる事が苦手だったという事もあり、激情は木を殴っただけで落ち着いていた。
残っているのは、ただひたすらに無感情に物事を判断する己の本性のみ。思考は既に今後どう行動するべきかという事に切り替わっていた。
先ず始めに行うのは状況の整理。
突如として現れた五人の男のうち一人にミティアが攫われた。転移先はある程度予想出来るが、後でスキルによって確認するべきだろう。
次。男達はどのようにしてこの場に現れたのか。
ミティアが一瞬にして消えた事から、連れ去った男は転移魔法を使う事が出来るのだろう。この場所にも同様の手段によって来たと思われる。
しかし、それだと一つの疑問が生まれる。
男達はどのようにしてこの場所に“ピンポイント”で転移したのか。
目的の場所に狙って転移するには、転移先に予め何かしら印を付けておく必要がある。
その印がどこにあったのか。
俺は勿論、ユキ、レイミア、ミティアに直接その印が付けられていたなら気付く事も出来るが、そのような印は誰の体にも付けられていなかった。
ではどのようにして男達はここに転移したのか。
先ず考えられるのは、この森の至る所に印が付けられている可能性。しかし、それでは今俺達がどの場所にいるのかを知る術はない。
その場所に訪れる事で自動発動するものだとしても、その場合は魔法発動の予兆がある筈だ。だが今回はそれが無かった。よって自動発動の可能性も無し。
再び思考が開始地点に戻ったところで、俺は目の端である物を捉えた。
それは、ミティアが落とした紙だった。
その紙を拾い上げ、自分の予想を確かめる為に魔眼を発動させる。
「……なるほど。あの薬師もグルか」
俺の目には薬草の採集ポイントが描かれた地図の上に、はっきりと魔法陣が描かれているのが視えていた。
魔力によって描かれた魔法陣は発動まで一切の効果を持たない。即ち、この世界に満ちている魔力と区別がつかない。尤も、魔眼で視れば別なのだが。
流石に俺でも発動前の魔法陣を魔眼無しで発見する事は出来ない。これは完全に俺の落ち度だろう。指名の依頼という時点でもっと警戒しておくべきだった。
そこまで思考が行き着いた所で、世界が再び動き出す。スキルによる時間停止は最大一分が限度だ。俺は《時間停止》を解除していないので、俺がスキルを発動してから一分が経過したのだろう。
「リウス!」
異変に気が付いたのか、少し離れた位置にいたユキとレイミアが駆け寄ってきた。そして、俺の前にいる男達を見るや武器を抜き、警戒心を露わにする。レイミアも同様だ。
男達もそれを見て武器を抜く。
まさに一触即発の状態の中、俺は男達に掌を向け、適当な魔法を発動させる。
〈火球〉
掌から放たれた小さな火の玉は男達の足元に着弾し、大爆発を引き起こす。
こちらに向かってくる爆風を魔法によって防ぎ、風魔法で土煙を吹き飛ばす。
魔法が着弾した場所には直径十メートル程のクレーターが出来ており、そこにいた男達は跡形もなく消え去っていた。
自分では収まったと思っていたが、まだどこかで怒りの感情は燻っていたのだろう。力任せに放った最弱の炎魔術は、人間の骨すら残さない威力の物に変化していた。それでも周囲の草木に火が燃え移っていないのは、俺がまだ理性を残しており、ある程度威力を制御出来ていた証拠だろう。
「……リウス?」
ユキのその声には、今のこの状況、そして俺の行動など諸々に対する疑問が込められていた。
説明しなければならない事は山程あるが、今最も伝えなければいけない事は――。
「ミティアが攫われた」
かなり急いで書いたので、後々修正が入るかも知れません。
それと、累計3万PV突破しました。
これからもよろしくお願い致します!




