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最強魔王の異世界放浪記  作者: 塩砂糖
第3章《呪われし奴隷編》
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第37話『マスターが、したいなら、して』

高機能執筆フォームが使えなくなってるんですよね……。

毎回段落初めの空白はそれに任せっきりだったので、少し手間が掛かりました。

URLも存在しないと言われますし……。

早く復活する事を願っています。

 翌日。いつも通り6時に目を覚ます。

 起き上がろうと体に力を入れると、腹部に違和感を覚える。

 目を向けると、そこには俺の体に抱きついて緩みきった表情で眠るミティアの姿が。


「どんだけ安心してるんだ……」


 個人的には色々な意味でも警戒心は持っておいて欲しいのだが……。


「まぁ、懐いてくれるならそれはそれでいいか」


 起こさぬよう腕をそっと退かし、体を滑らすようにしてベットから降り――ようとした時。


「んぅ……」


 そんな声と共にスッと左手首が掴まれる。

 声の主はミティアだった。殆ど無意識なのだろう。目を閉じたままゴソゴソと身動ぎしている。

 すうっと目が開き、ボーッとしているミティアと目が合う。


「……マスター……?」

「ああ。おはようミティア」


 そう答えるとミティアは無言で腰に抱きついてくる。困惑していると、ミティアがポツリと一言。


「……夢じゃ、なかった」


 それは、今まさに俺が最も恐れている事と同じだった。


 ゲームキャラの姿で異世界転移なんて現実離れし過ぎている。今この瞬間が夢や妄想では無いと誰が証明出来るのか。

 そんな恐怖をミティアも感じていたという訳だ。

 彼女も昨日まで奴隷だったのだ。それも神官ですら解除出来ない呪いを持って。買い手が決まったと思えば、買いに来た人物は嗜虐趣味のある領主と来た。正しく地獄の底にいる様な気持ちだっただろう。

 そこからいきなり新たな買い手が現れたかと思えば、領主より遥かに高額で自分を買い取り、呪いを解除し、食事を振る舞い、その上身形まで整えてくれた。夢かと錯覚するのも無理はない。


 腰に手を回したままのミティアを優しく撫でる。


「夢じゃない。紛れもなく現実だよ」


 だからせめて、ミティアも俺と同じ恐怖を抱いているならば、俺が今この瞬間が夢では無いと、証明してあげたい。

 その答えに満足してくれたのか、無表情の顔に少しだけ笑みを浮かべ、俺のお腹に顔を埋める。

 ミティアがこれ程までに短期間で俺を信頼してくれたのは、ユキとレイミアの存在が大きいだろう。

 ずっと奴隷だったミティアにとって、今のこの環境は右も左も分からない、正に未知の世界だろう。

 そんな場所に、初対面とは言え同性がいるのは心強い筈だ。

 ユキは元から面倒見が良く、レイミアも見た目だけであれば同年代だ。そんな2人が俺と親しげに話していれば、特別何かしなくとも、警戒心は直ぐに解かれた事だろう。

 だとしても、今のこの状況は少し気を許し過ぎだと思うが。


「まだ朝早いけど、起きるか?」

「……マスターが、起きるなら」

「そうか」


 未だ寝ているユキとレイミアを起こさないようそっとベットから降り、俺とミティアは寝室を後にした。



 ◇◇◇◇◇



 朝する事を一通り済ませ、暇な時間が訪れる。ユキとレイミアはまだ起きてきていない。

 する事も無いので、この時間を使って自分たちの事を話しておく事にする。

 異世界人であること。俺が魔族で、レイミアが吸血鬼だということ。ついでに俺達が規格外な力を持っている事も。


「……でも、人間の、姿」

「ああ、今は変えてるんだ。……見てみるか?」

「ん……見たい」


 目をキラキラさせながら見つめてくる。自分に近しい何かを感じているのかも知れない。

 《外見偽装》を解除して元の姿に戻る。

 頭から角が生え、背には翼が現れ、目は魔眼になり視界が変わる。

 因みに、魔眼というのは単に目の色が変わるだけではない。

 読んで字の如く魔眼とは“魔を見る眼”であり、通常視認する事が出来ない魔力を見る事が出来る。また、魔法の使われた痕跡、発動の兆候なども見る事が出来る。

 なので、魔眼を発動している間は視界が全体的に青白く映る様になる。

 尤も、発動の有無は切り替えが可能なので然程煩わしさは感じない。


「どうだ?」

「……かっこいい」

「そ、そうか」


 流石にそんなに真っ直ぐ見つめられたまま言われると反応に困る。

 お互い見つめ合う形になるが、その瞬間、魔眼に反応する何かがミティアの体に付いているのを捉える。


「なんだ……?」


 その“何か”を確認する為、ミティアを注視する。

 魔力の反応は、ミティアの首元――“従属の紋”から発せられていた。

もしやと思い《敵情報解析》も発動する。


【名前:ミティア・アリュード(16)】

【レベル:51】

【性別:女】

【種族:半幻影(ハーフ・ファントム)

【職業:奴隷】

【状態:呪い】


「なるほど。従属の紋は呪いの一種なのか」

「……?」


 頭上に疑問符を浮かべるミティアの首元に手を伸ばす。

 何も言わずに手を首に伸ばしているのだから、多少は抵抗したり不安そうな表情をしても良さそうなものだが、ミティアはされるがままといった感じで、唯疑問符を浮かべるだけだ。

 それに少し苦笑いしつつも、従属の紋に触れ《呪術解除》を発動する。

 スキル発動により、従属の紋が光を放ち、《敵情報解析》の表示からも呪いが消える。が、従属の紋は皮膚に直接焼き付けてあるのか、紋自体が消える事はなかった。


「……マスター?」

「奴隷の呪いを解いただけだ。気にしないでくれ」

「え……?」


 自分の首元を触るミティア。当然呪いを解いただけなので、触った感触は何も変わらない。


「なんで……そんなこと?」

「深い理由は無いよ。ただ、呪われたままっていうのが気に食わなかっただけ」


 と言っても、これからする話の返答次第では解除した意味が殆ど無くなるのだが。


「ところで、ついでに話しておきたい事があるんだけど」

「……?」


 俺は先ず、自分のスキル《主従契約》の効果を説明し、それをミティアに使いたい事も伝える。


「もちろん嫌であれば断ってくれ。強制じゃないからさ」

「……マスターが、したいなら、して」

「……その答え自体は嬉しいんだが……それ、外では言わないでくれ」

「……?」


 確実に誤解されるんで、それ。


 首を傾げるミティアの純真さが眩しく、若干目を細めながら、スキルを発動する。

 俺の手に光が灯り、ミティアにそれを触らせる。すると、以前レイミアに使用した時と同様に手が光に包まれた後、ミティアには青色の、俺には赤色の、レイミアの時とは違う幾何学模様がお互いの手の甲に現れる。


「きれい……」

「これで終わりだな」

「……これだけ?」

「ああ、これだけ」


 手の甲に浮かぶ模様がスッと消える。

 未だに手の甲を見つめるミティアに、念話で話し掛ける。


『こんな感じで会話出来るんだ』

「っ! ……えっと?」

「頭の中で話し掛ける感じでやってみると出来るぞ」

『……こんな、かんじ?』

『そう、そんな感じ』


 慣れない感覚に少し首を傾げているが、徐々に慣れていくだろう。

 そろそろユキとレイミアも起きてくる時間だ。

 それまでの間、俺とミティアは他愛のない会話で時間を潰す事にした。



 ◇◇◇◇◇



 朝食の後、ちょっとした調べ物をする為、出かける準備をする。


「あれ? リウス、どこか行くの?」

「ああ、ちょっと冒険者ギルドにな」


 外出用の服に着替えた俺を見てユキが尋ねる。


「じゃあ私も――」

「いや、ちょっと確認したい事があるだけだから、1人で行ってくるよ」

「そう?」


 今ここにいるのがユキだけであったのならば連れて行くつもりだったが、今回は3人で留守番をしていてもらう事にする。


「……帰って、くる?」


 俺の事を見上げながら、少し不安げにミティアが聞いてくる。

 目線をミティアの位置まで下げ、はっきりと答える。


「もちろん帰ってくる。置いていったりしない」


 優しい口調でそう返し立ち上がる。


「それじゃ、ちょっと行ってくる。遅くても昼には帰ると思うけど、遅れるようなら連絡する」

「うん。行ってらっしゃい」


 新婚の夫婦の様なやり取りに若干恥ずかしさを覚える。

 そういえば、ユキから『行ってらっしゃい』と言われるのは初めてだったかも知れない。そもそも別行動すらしていないのだから当たり前だ。

 部屋を出る直前、伝えておくべき事を思い出す。


「後、俺が帰って来るまで宿から出ないでくれ。特にミティアは」

「……?」

「異世界人の俺達にはよく分からないが、魔物とのハーフは嫌われてるみたいだからな。それについての対応策も考えてるから、それまで外出しないでくれ」

「……ん。分かった」


 ミティアの頭をひと撫でし、それを見て此方を見つめてくるユキの頭を撫でつつ耳を触り、1人だけしないのもどうかと思ったので、レイミアの頭も撫でておく。


「じゃあ、行ってくる」



 ◇◇◇◇◇



 宿を出て数十分。昨日訪れた冒険者ギルドに到着した。

 先日訪れた時よりも、心なしか人が多く、ギルドの掲示板に人が集まっていた。

 何か報酬の良い依頼でも出ているのかと確認してみると、皆の注目を集めている物は、まさに俺が知りたかった事だった。


 掲示板に貼り出された紙に書かれていたのは、とある依頼だった。


昨日(さくじつ)、奴隷商の男性がサーバ帝国近郊で盗賊に襲われ死亡しました。

 賊の数は不明。賊の捕縛に成功した方には賊1人につき1万ガルンの報酬をお支払いします。賊の生死は問いません。

 市民の皆様は暫くの間、夜間の外出をお控え下さい。


 冒険者ギルド』


 このタイミングで奴隷商の男となると、恐らく昨日の奴隷商人だろう。

 そして俺が奴隷を買った後に襲われたというのは、果たして偶然なのか。

 そんな思考を巡らせながら、他に貼り出されている紙に目を向ける。

 すると、掲示板の隅にとある紙が貼られているのを見つけた。


『迷い人の捜索依頼。

 白銀の髪に左右の色が違う瞳。首元には従属の紋が刻まれている、身長150cm程度の奴隷です。

 目撃情報には1万ガルン。発見者には5万ガルンお支払い致します』


 依頼人の名前は書かれていなかった。だが依頼内容から見ても、この依頼人の探し人はミティアの事だろう。

 そして恐らく、奴隷商人の話を聞く限りでは、依頼人はこの地区を治めている領主だろう。

 薄々こうなる事は予想していたが、いざなってみると面倒な事この上ない。

 目撃情報だけで1万ガルンとなれば、実力の乏しい冒険者はもちろん、一攫千金を狙った冒険者が挙って受ける可能性がある。

 そうなればこの街にいる冒険者全てを警戒しなければならなくなる。

 もし俺がその奴隷を買っていると知れば、大半の冒険者は諦めるだろうが、領主までがそうとは限らない。


「一応、保険は掛けておくか」


 俺は冒険者ギルドから地図を受け取り、とある場所へ向かって歩き始めた。



 ◇◇◇◇◇



「これはまた……デカイな」


 俺が今来ているのは、サーバ帝国第2地区の領主、『ダトス・ベージ・ガルバー』の豪邸だ。

 日本で建てれば何十億という金額が掛かりそうな豪邸に、あと数軒は家が建てられそうな広さの庭。それらの敷地をグルッと囲む大きな塀。絵に描いたような大豪邸だ。

 塀の外、門の前には2人の兵士。恐らく警備兵だろう。その内の1人が此方に気付いたようで声を掛けてきた。


「おい貴様、何の用だ」

「いえ、単なる観光ですよ。領主様の家はどんなもんなのかなぁ、と」

「用が無いならさっさと立ち去れ。邪魔だ」

「それはどうも失礼しました」


 睨みつけてくる衛兵に肩を竦め、背を向けつつ、保険用にスキルを発動する。

 現時刻は午前11時。

 俺は、冒険者ギルドで貰った地図に目を落とし、図書館に寄ってから帰ろうとした――のだが。


「ん?」


 一瞬、視線を感じて振り返る。感じた視線は警備の衛兵から向けられたものでは無く、塀のさらに奥、屋敷の方から感じたものだった。

 即座に《気配察知》を使って此方に目を向けた者を探すが、見つけ出す事は叶わなかった。


「気のせい……か?」


 然して気にも留めず再び歩き出す。


 ……この時、魔眼も使い、より入念に探していれば、あの出来事を未然に防ぐ事も、或いは出来たのかも知れない。

第3章は大分短くなる……かも?

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