表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強魔王の異世界放浪記  作者: 塩砂糖
第2章《眠りの吸血鬼編》
33/68

第29話『何回こいつに殺された事か』

さて、そろそろフェイルム編も終わりが近づいて来ました。

 王城を中心とし、その周りに街が広がる王都フェイルムには、入り口となる門が東西南北に1つずつ存在し、その門と同じ様に街自体も4つの区画に分かれている。

 森から帰ってきた俺達から最も近かった区画が南区画だったのに対し、爆発が起きた区画は、現在位置から丁度向かい側となる北区画だった。

 北区画には冒険者ギルドを始めとした様々な施設が立ち並び、俺達が泊まっている宿も北区画に存在する。


「南区画は大丈夫みたいだな」


 人々の混乱こそあるものの、事が起きているのは反対側の北区画だ。

 未だ何が起きているのか把握していない人が殆どだ。

 尤も、俺達も何が起きているのか把握出来ていないのだが。


「取り敢えず、ギルドに向かうか」

「ミーアさんとか大丈夫かな……」

「無事だと良いけどな……」



 ◇◇◇◇◇



「これはまた……」


 爆発から5分。爆発の影響か、北区画は大地震の後の様な有様だった。

 爆発の起きたであろう場所の周囲は瓦礫の山となり、建物には炎が回り、人々は逃げ惑う。

 周囲には冒険者がおり、市民の避難誘導を行っていた。

 その光景を以前自分自身が体験した光景と重ねつつ、冒険者ギルドへ向かう。

 見た限り冒険者ギルド自体に被害は無い様だが、ギルドの中はこれまでに無い程慌しいかった。

 冒険者は皆避難誘導などで出払ってしまっているのか、冒険者の数は少なかった。

 受付に向かうと、そこにはいつもの何倍も忙しなく動くミーアさんの姿が。


「ミーアさん!」

「あ、リウス! それにユキちゃんとレイミアちゃん!」


 取り敢えずミーアさんは無事だったようだ。


「一体何が起きてるんだ?」

「えっと……何から説明したら良いんだろう……。まず、さっき起きた爆発は分かる?」

「ああ、帰ってくる時に見えた」

「もうあの依頼終わらせたんだね……。それは兎も角、もう知ってるなら話が早いや。あの爆発の後、北門から3キロぐらい離れた位置に魔獣と魔物が混成した群れが現れて、今Aランクの冒険者のパーティに確認に向かって貰ったところなんだ」

「魔獣と魔物の群れか」

「フィレストの時と一緒だね」

「そうだな。――その群れは何処から来たんだ? 近くの山とかか?」

「ううん。門の警備に当たってた兵士の話によると、“突然その場に現れた”って」

「突然……?」


 魔物は兎も角、魔獣が突然現れるなんてあり得るのか?


「モンスターの総数は?」

「推定――凡そ3000……」

「なっ……」

「嘘……」

「3000……ですか」


 ……フィレストの時は確か100体程度だった。

 だが今回は、その30倍だ。

 しかもそれ程の数の魔獣魔物が“突然現れた”と来た。

 それらが全て自然発生とは考えられない。


「……それで、今モンスターはどの辺りに?」

「多分、王都に到着するまで後20分って所だと思う」

「そうか……」

「ねえ、リウス……」

「ああ、北門に向かうか」

「あ、相手は3000だよ⁉︎ とてもじゃないけど、どうにか出来る数じゃない! 現に殆どの冒険者には市民の避難誘導をお願いしてるの!」

「いや、それでも――」


 そこまで言いかけた時、冒険者ギルドの扉がバンッ! と開かれる。

 そこには6人の男性が。皆ガタイが良く、年齢は30〜40ぐらいだろうか。おそらく確認に向かったという冒険者のパーティだろう。

 ――って、良く練習試合を見に来ていたおっちゃん達じゃないですか。

 フレンドリーな人達だったので良く覚えている。まさかAランク冒険者だったとは。

 6人はそのまま駆け足で受付へ向かってくる。


「どうでしたか?」

「今直ぐ逃げるべきだ。あれ程の数の魔獣に魔物、敵うわけがない。――っと、リウスさん達でしたか。リウスさん達も早く逃げたほうが良い。あんなのはもうどうしようも無い」

「いや、北門に向かいます」

「ちょ、本気ですかい?」

「はい。今から避難を開始した所で間に合いません。殿(しんがり)役は居るべきでしょう?」

「しかし……幾らSランク冒険者でも……」

「全て倒せなくとも、足止めくらいは出来ますよ」


 魔物到着までの時間も無い為、早速ギルドを出ようと思ったのだが。


「ま、まって! 本当に行くの?」

「ああ。出来る事は全部やる。危ないと思ったら逃げるよ」

「……本当に?」

「ああ、もちろん。――それにしても随分心配してくれるんだな」

「冒険者を守るのもギルドの役目だからね。それに……友達だから」

「……そうか、ありがとな。でも大丈夫だ」

「行ってくるね。ミーアさん」

「……うん。気を付けてね」


 こうして俺達は3000体のモンスターを倒すべく、北門へ向かい走り出した。

 足止めで終わらせる気など、毛頭無い。全て、全て殺す事しか考えてなどいなかった。



 ◇◇◇◇◇



「これは……凄い数だな」


 ギルドを出発して5分後。北門に着いた俺達は3000体のモンスターの群れを目の当たりにしていた。

 ぶっちゃけ。予想以上に多かった。

 視界内一杯に広がる魔獣魔物の群れ。

 確かにこんな量、どうにか出来る域を超えている。


「どうするの? リウス」

「魔法で殲滅しても良いんだが……修復不可能なレベルで地形を破壊しそうだからな……。それに、少数だけど足止めに来てる冒険者もいるから魔法は使えない」

「じゃあ、どうするの?」

「まあ、物理で殴るしか無いけど……数が多いからな。流石にこの人数じゃ足止めも出来ない」

「それじゃあ……」

「まだ方法はある。要は手数を増やせば良いからな」

「え?」


 そう。相手の数が多いならこちらも数を増やせば良い。


 俺がアポカリプス内で習得したスキルの中に、《最上位死霊召喚(さいじょういしりょうしょうかん)》というものがある。

 魔王に転職する前、死霊魔導士に就いていた時、習得したスキルだ。

 1日に10回までしか発動出来ないという条件こそあるが、本来闇属性魔導でしか召喚出来ない死霊系モンスターをMP消費無しで召喚可能の上、このスキルでしか召喚出来ないモンスターも存在する。


 個人的にもかなり強いと思っているスキルなのだが、如何(いかん)せん習得に必要なスキルポイントが高かった為、このスキルを持っている者は多くなかった。

 レベル上げが異様に長く、他のプレイヤーよりモンスターを倒す必要があった魔人種だからこそ、習得出来たスキルと言えるかもしれない。

 スキルポイントに余裕があった為取ったのだが、余裕が無ければスルーしていたであろうスキルでもある。

 だって、MP消費があるとは言え、魔法で代用出来ちゃいますからね。

 今回はこれを使う事にする。


 召喚するのは、レベル180にもなる死霊系モンスター『生ける死(ゾーオン・サナトス)

 魔法攻撃しか効かないモンスターだが、その分HPは――レベル180にしては――低く設定されている。

 このモンスター最大の特徴は、一切のダメージを与えて来ないという点だ。

 その代わり、全ての攻撃に即死効果が付与されており、即死耐性を持たない場合、攻撃が当たった瞬間死ぬという恐ろしいモンスターだ。

 その上、俺が召喚するこのモンスターは、俺のスキルの効果により即死耐性を持つ相手にも即死の効果を与える。

 もう唯のチートだ。

 さらにこのモンスター。死亡時に1度だけ2体に分裂する能力も持ち合わせている。

 分裂後は全ステータスが半分になるが、即死効果は健在の為、一度倒しただけでは油断出来ないモンスターだ。


 初見時、一体何回こいつに殺された事か。


「モンスターの召喚は初めてだが……大丈夫そうだな」


 意識を集中させ、スキルを発動する。

 1度ずつ召喚しては手間が掛かるので、10体同時に召喚する。


 《最上位死霊召喚》


 発動した瞬間、俺の周囲に黒い霧の塊が10個現れる。

 それらが徐々に形作っていくのは、黒のローブに死神が持つような大きな鎌。

 スキル発動から10秒後。俺の周りには、大きな鎌を持つ中身が存在しない黒いローブのモンスターが10体。

 どう見てもローブと鎌が浮いている様にしか見えない。

 俺のスキルで召喚した為か、モンスターには意思疎通で命令を下す事が出来る様だ。


「懐かしいモンスターだね」

「そうだな。今回はこいつに手伝って貰う」

「ご主人様も魔物の召喚が出来るんですね」

「まあ、これぐらいならな」


 さて、時間も無い事だし始めるとしよう。

 横で「やはりご主人様は魔王なのでは」なんて声が聞こえた気がするが気にしない。


「ユキ、レイミア、準備は良いか?」

「はい。問題ありません」

「私も大丈夫だよ」


 2人の返事を聞き、俺も『生ける死』に命令を下す。


『王都に侵攻する魔物と魔獣を全て殺せ。冒険者は攻撃するな。指揮官らしき者を発見した場合は報告しろ』


 10体の『生ける死』は了解の意思を俺に意思疎通で伝えた後、モンスターの群れへ向かって行く。


「俺達も行くか。2人とも、無理はするなよ」

「畏まりました」

「分かった。リウスも無理はしないでね?」

「ああ。――じゃあ、行くぞ!」



 ◇◇◇◇◇



 戦闘開始から約30分。モンスターの群れは殆ど駆逐が完了しつつあった。

 ユキは双剣を使い、魔獣や魔物の急所を的確に攻撃して倒し、レイミアは眷属を召喚して手数を増やし、レイミア自身も素手で次々にモンスターを屠っていく。

 俺の召喚した『生ける死』は、鎌を横に一振りし、一瞬にして複数のモンスターの命の炎を消していく。


 俺は…………大剣――といっても然程強くない物――を横に軽く振っただけで、30体近くの敵が紙屑の様に散っていく程になっていた。

 何この強さ。少しでも緊張してた俺が馬鹿みたいじゃないですか。

 普段は普通のロングソードしか使ってなかったから、自分がこんなに強くなってるなんて知らなかったですよ。

 割と本気で俺1人でもどうにかなった様な気さえしてくる。

 因みに、足止めに来ていた冒険者の方々には早々に避難して頂いた。

 レイミアの眷属や俺の召喚したモンスターなんかを見られると面倒な事になりそうだったからだ。


『ユキ、レイミア、後は召喚したモンスターに任せて良さそうだ』

『そうだね。レイミアちゃんも大丈夫?』

『はい。そちらに向かいます』


 眼前に広がるのは魔物と魔獣の死体の数々。

 尤も、肉片になってしまっている物が殆どだが。

 レイミアに血液吸収をさせていない――吸血鬼という事がバレてしまう為――ので辺り一面は紅く染まっている。


「リウス、お待たせ〜。――これは……凄いね」

「別に魔物も特別弱い訳じゃなかったんだけどな……」


 魔物のレベルは、平均してレベル80ぐらいだった。この世界基準で言えば充分脅威である。


「ご主人様。お待たせしました」

「いや、大丈夫だ」

「これからどうするの?」

「そうだな……取り敢えずギルドに――」

「――リウスー!」


 突然後ろから大きな声で呼ばれる。

 振り返るとそこには数十名の冒険者を連れたミーアさんが。


「手伝いに来た……よ……?」


 ごめんなさい。もう全部終わりました。

 というより、何故貴女も武装してるんですか。ミーアさん。


「……え? あ、あの、リウス。魔物の群れは……?」


 無言で背後に広がる肉片を指差す。


「……え? …………え⁉︎」


 駆け足で詰め寄ってくるミーアさん。


「え? 本当に……3人であの群れを倒したの……?」

「ま、まあ、そうなる……のかな」


 正確には召喚した魔物にも手伝って貰ったのだが、今それは言えない。


『レイミア、眷属の召喚を解除しておいてくれ』

『よろしいのですか?』

『多少は魔物も残しておいた方が良い気がしてきた』

『畏まりました』


 俺も《最上位死霊召喚》で召喚した『生ける死』の召喚を解除する。


「本当……規格外過ぎるよ……」

「そ、そうか……?」

「――ええ本当に。全くもって予想外でしたよ」


 突然背後から聞こえる声。

 声が聞こえた瞬間、気配察知に引っかかる1つの人影。

 振り返るとそこには、パチパチと拍手をしながら笑顔を浮かべて近付いて来る、角を生やしたスーツ姿の魔族の男が。

 全員が警戒心を露わにしてその男を見つめる中、ただ1人驚愕の表情を浮かべていたのは――。


「ゼアル……?」


 ――レイミアだった。

新キャラ登場です。

彼も中々強いです。

主人公を殺せるぐらいには。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ