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最強魔王の異世界放浪記  作者: 塩砂糖
第2章《眠りの吸血鬼編》
31/68

第27話『胃袋を掴んだ』

累計PVが1万を突破しました!

これからもゆる〜く頑張っていきますよ!

「何受けようか?」


 俺達は今、ギルド内の依頼書が貼られている掲示板の前に来ていた。

 理由は無論、レイミアの冒険者ランクを上げる為なのだが、丁度良い依頼が中々見つからないでいた。


「そこまで難しい依頼は無いな」

「そうだね。――ところでリウス。なんで早いうちにレイちゃんのランクを上げたほうが良いの?」

「俺達はSランクの冒険者だ。そんなところに突然Fランクのレイミアが入るのは不自然だろ? だから早いうちにランクを上げた方が良いと思ったんだ」


 とは言うものの、貼り出されている依頼の殆どがCランク以下の依頼だ。

 Cランク以下の依頼だけではランクはCまでしか上がる事は無い。

 勿論、依頼内容とは別に実力が認められればその限りでは無いが、そういう場合は依頼とは別に魔物や魔獣を討伐する必要が――。


「――あ、そうか」

「なにか思いついたの?」

「ああ。ユキ、俺達が冒険者になってたった1日でAランクに上がれたのはどうしてだ?」

「確か……強い魔獣を討伐したから……だっけ?」

「そう。要するに依頼を受けなくても、多くのモンスターを討伐したり、強力なモンスターを討伐すればランクは上がるって事だ」


 たとえ強力な魔物、魔獣がいなかったとしても、その場合は数で補えば良い。普通の冒険者が1日に討伐出来るモンスターの2〜3倍の数を狩れば十分だろう。


「じゃ、行くか」



 ◇◇◇◇◇



 そんな訳でやってきたのは、フェイルムから徒歩1時間30分――のところを走って10分で辿り着いた、B級ダンジョン『深霧の森』

 その名の通り、この森は天候が晴れであろうと、季節が夏であろうと、時間帯に関係無く常に霧が発生している。

 生い茂る葉は日の光を遮り、森を覆う霧は視界を遮る。その為、森の中は昼間だというのに一寸先も見えない程に視界が悪く、夕闇の様な薄暗さだ。

 尤も、《視覚保護》があるので、そんなことは全く関係無いのだが。

 因みに、今はユキにも《視覚保護》の効果を共有している。

 レイミアは元々種族的な特徴として《視覚保護》の様な効果が目に備わっているとの事なので効果の共有はしていない。


「ジメジメしてるね……」

「霧が凄いからな……」


 風魔法で風を起こし、霧を晴らそうと試みるが、霧はまるで空中に投影された映像の様にその場から動く事がなく、風は霧をすり抜けるのみだ。


「どんな仕組みなんだか……」


 この世界に来てから幾度となく感じた事を口にしつつ、続けて《気配察知》と《空間把握》を発動させる。

 瞬間、付近一帯の地形と敵の位置が脳内に流れ込む。

 敵の数は流石ダンジョンというだけあって相当な数だ。

 スキルの範囲は俺を中心に半径500メートルに設定しているが、それだけでも軽く100を超えるモンスターがスキルに引っかかる。


「じゃ、片っ端からやってくか」



 ◇◇◇◇◇



「け、結構たくさん来たね……」

「そうだな……」


 初めに見つけた魔獣が犬の様な――大きさは大型犬の2倍ぐらいあったが――姿をした魔獣だったのだが、こちらの姿を見るなり遠吠えをしたと思えば、広範囲からわらわらと同種の魔獣が集まり始め、最終的には100体を超える数にまで増え、それらを一度に相手する羽目になった。

 お陰で周囲は魔獣の死体と血液により(さなが)ら地獄の様な有様だ。


「服にも血が付いちゃったな。落ちるのか? これ?」

「そのことでしたら、私にお任せください」

「……? どういう事だ?」

「私は吸血鬼ですから」


 レイミアがそう答えると同時に、足元に広がる血液が突然レイミアに向かって流れ始める。

 その血液はレイミアを中心に血溜まりを作る事は無く、まるで足元に排水口でもあるかの様に消えて行く。

 周囲一帯に飛び散り、血溜まりを作っていた魔獣の血液は10秒もしないうちに綺麗さっぱり消え去った。

 服に付着していた筈の血液も同様に消えていた。


「これはまた……」

「すごいね……」

「これもレイミアの能力か?」

「はい。《血液吸収》というスキルです」

「そのまんまだな」


 まあスキルの名前は変更出来ないのだから仕方ないのかも知れない。


「……ところで、そのスキルで血液を吸収するのと、牙で直接血を吸うのは何か違うのか?」

「そう……ですね。少し違います」

「何が違うんだ?」

「それは……」


 なんだ? 歯切れが悪いな。


「……ご主人様は、吸血鬼がなぜ血を吸うのか、ご存知ですか……?」

「食事、じゃないのか?」

「もちろんそれもあります。他には、単純に血が足りない時なども吸血の理由になりますね」

「じゃあ、他にも理由があると?」

「……はい」


 そう答えるレイミアは、俺が質問をする度に段々と顔が下を向き、俯いていく。

 ……これって、聞いちゃいけない事だったりするんだろうか。


「えっと、答え辛いんだったら答えなくても――」

「いえ、そういう訳ではないんです。私の心の準備というか……」

「……?」


 一体何の準備が必要なのか分からないが、ここは待つ事にする。

 少しして顔を上げたレイミアは、白い頬をほんのりと紅く染めていた。

 え? なんで?


「……吸血鬼には、その他の生物と違って、『血を吸いたい』という欲求があるんです」

「人間の『三大欲求』みたいなものか」

「三大欲求って……何があるんだっけ?」

「食欲、睡眠欲、性欲だな」

「吸血鬼には睡眠欲がないので、三大欲求という言い方をするなら、食欲、性欲、吸血欲の3つになりますね」


 吸血鬼には睡眠欲が無いのか。

 でもレイミア普通に寝てたような……。

 まあ、欲求が無いというだけで出来ない訳では無いか。食欲が無くても食事は取れるように。


「牙での吸血は、そういった吸血欲が起きたときにします」

「なるほど。――その吸血欲っていうのは何か引き金になるものってあるのか?」

「……えっ⁉︎」

「睡眠欲は疲れれば起きる。食欲はお腹が空けば起きる。吸血欲にはそういったものは無いのか?」

「ええと……」


 またもや俯いてしまうレイミア。

 なんか、悪い事してる気分になってくるな……。


「……吸血欲は、その、……がトリガーで……」

「……え? ごめん。もう一回言ってくれるか?」

「…………せ」

「せ?」

「……性的、興奮、です」

「「……」」


 思わず黙ってしまう俺とユキ。

 よく見るとレイミアの顔は真っ赤になっていた。

 吸血鬼特有の白い肌が余計にそれを目立たせている。


「えと……なんか、ごめん」

「いえ、気にしないでください……」


 うわ。気まずい。


「そ、それじゃあ、魔獣の討伐確認部位の回収をしよっか?」

「そ、そうだな」

「そうですね……」


 その後、俺達は戦闘に掛けた時間の倍以上の時間を掛けて素材回収に勤しむ事になった。

 全部売ったら幾らするんだ、これ。

 因みに、レイミアの顔の赤みは暫く引かなかった。



 ◇◇◇◇◇



 森についてから約2時間。

 俺達は《気配察知》をフルに活用し、森の中にいる魔物、魔獣を片っ端から倒していた。

 その数、計209体。

 この森にいる魔獣の殆どは最初に倒した犬の魔獣だったようで、他は殆ど魔物だった。

 この森に生息する殆どのモンスターを狩り尽くした俺達は、他愛の無い会話をしながらフェイルムへ向かって歩いていた。

 行きとは違い、帰りは歩きで。

 後10分程度でフェイルム着くといった所で、ふと気になった疑問をレイミアに投げ掛ける。


「なあ、血って美味しいのか?」

「うーん。美味しいものもあれば、そうでないものもありますね」

「そこには何か差があるのか?」

「おそらくですが、“魔力”の量だと思います」

「魔力?」

「はい。血液には特に魔力が多く含まれているんです。吸血鬼は血を吸うというよりも、血の中に含まれる魔力を、って感じですね」

「なるほど。魔力の量ね……」


 血、そのものでは無く、魔力を取り込むか……。

 ……ん? だったら俺の血とかってどうなんだろうか。


「レイミア、俺の血、飲んでみるか?」

「えっ⁉︎ ……なぜそんな事を?」

「ん? いや、魔力の量によって変わるって言うからさ、俺だったら相当なんじゃないかなぁ、と」


 ぶっちゃけ、単なる興味本位である。


 腰から剣を抜き、それを左手の人差し指に滑らせる。

 当然指から血が溢れ出す。

 だが、1秒もしないうちに傷は塞がれる。


「リウス!?」

「ご主人様!?」

「もう傷は塞がってるから大丈夫、大丈夫」


 指から溢れた血を見つめる。

 右人差し指でそれを少量取り、口に運ぶ。

 口の中に広がるのは血液特有の錆びた鉄の様な風味。嫌いではないが別に美味しくもない。

 未だ指の上に残る血液をレイミアの顔の前へ持って行く。


「舐めて、みるか……?」

「い、いえ、さすがに……」


 とは言うが、目線は俺の指に固定されたまま動かない。

 上下左右に腕を動かすと、それに合わせて目線も動く。


「なあ、正直に言って俺の血は美味しそうか?」

「……正直に言って、凄く美味しそうです……」

「そ、そうか」


 なんか、目がちょっと怖いです。


 先程よりも更に近く、レイミアの顔の前へと指を持って行く。

 近付くにつれ、レイミアの口が徐々に開かれて行く。

「仔犬みたい」とユキが微笑む。

 いや、貴女も今犬の格好ですからね?


「い、良いんですか……? 本当に……?」

「あ、ああ。構わないぞ」


 だからその獲物を狙う様な目を如何(どう)にかして下さい。怖いです。


 レイミアの口が俺の指を咥えるべく開かれ、徐々に迫ってくる。


 …………あれ、なんで俺達こんな事やってるんだっけ。


 そんな事を思っていると、レイミアの口はもう直ぐそこまで来ていた。

 思わず、息を飲む。


「「……」」

「……はむっ」


 パクッとレイミアが俺の指を咥える。

 指先から伝わるレイミアの口内。

 口の中は当然唾液で湿っており、人ほどでは無いが、多少暖かい。

 口の中で俺の指に舌が這い、血液に触れる。


「……っ!」

「レイ……ミア?」

「……」


 もう既に血は無い。にも拘らず、レイミアは指を離そうとはしなかった。

 それから少しして、レイミアは(ようや)く俺の指を離す。

 指は唾液で濡れ、光を反射し、少し糸を引いていた。


 いや、これマズイですよ。色々な意味で。

 しかもレイミアは顔を赤くし、目をトロンとさせている。

 ……これは、人には見せられない。


「レイミア……ちゃん?」

「大丈夫……か?」

「は、はい……大丈夫、です……」


 うん。大丈夫じゃないな。


「……取り敢えず、帰るか」

「……そうだね」


 と、再び歩き始めようとした所で――。


「ご主人様……」


 レイミアが服の裾を掴む。


「ど、どうした?」

「あの、ですね。たまにで良いんですが……」

「……なんだ?」

「また、その……血を、飲ませて頂けませんか?」

「……え?」

「た、たまにで良いので!」

「お、おう。まあ、たまに……ならな」

「ありがとうございます!」


 なんだろう。いわゆる『胃袋を掴んだ』というやつなんだろうか。


「料理にリウスの血を……」


 ユキ。その思考を今直ぐ止めるんだ。それ以上はいけない。


 レイミアに興味本位で血を飲ませた事を若干後悔しつつ、俺達はフェイルムに向かって再び歩き始めた。

ひと段落着くまで一気に書き切りたいですね。

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