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最強魔王の異世界放浪記  作者: 塩砂糖
第2章《眠りの吸血鬼編》
28/68

第24話『みんなベッドで寝れば良いんじゃない?』

主人公。人間辞めるってさ。

 レイミアが旅仲間に加わったその日の夜。風呂から出て脱衣所で体を拭いていた俺は、目の前に映し出されている衝撃の光景に固まっていた。

 俺の目に映るのは自身のメニュー画面。更に言えばステータス画面だ。

 そこには、こう記されていた。


【名前:リウス(26)】

【レベル:401】

【性別:男性】

【種族:魔人種】

【職業:魔神】

【称号:神を屠りし者・覚醒者】


【HP:78882/78882】

【MP:75265/75265】

【筋力:6629】

【耐久力:5424】

【魔力:9039】

【精神力:7834】

【敏捷力:4219】

【幸運:2410】


 ………………ナンダコレハ?

 ……待て、順に確認していこう。

 先ずはレベル。おそらく『オプタートゥム』と戦ったことでレベル399から401まで上がったのだろう。

 今までのレベルの上がり具合から比較すると少ないように感じるが、相手は99もレベルが下の相手だった。2レベル上がっただけでもかなりのものと言える。

 次に職業。………………何これ? 魔神?

 職業が変わっている。というより最早職業ですら無い気がする。

 何が理由かは分からないが、兎に角職業が変わった。そうとだけ認識しておく。

 そして新たに追加された称号。

【覚醒者】か……。どんな効果なのか確認すると。


【覚醒者】

 ・説明:レベル400を超えた者に与えられる称号。

 ・効果:全ステータスを大幅に強化する。


 成る程。どうやら俺のステータスが馬鹿げた数字になっているのはこいつが原因らしい。

 もう一度自分のステータスを再確認する。

 …………うん。何なんだこれは?

 先ず、筋力が6000を超えている。

 レベル399の時点で4000は超えていたが……。覚醒者の称号の効果は俺が思っている以上にとんでもないらしい。

 その他のステータスもレベルが399の時より遥かに高くなり、HPは8万にすら届きそうになっている。

 あながち人間を辞めたという表現も間違っていないかも知れない。

 ――――そういえば、ユキのあの称号……。少し聞いてみるか。

 アイテムボックスから寝巻きとして使っている服を取り出し、それを着て俺は脱衣所を後にした。



◇◇◇◇



 寝室へ行くと、そこにはユキしかいなかった。


「あ、早かったねリウス」

「まあ、ユキに比べればな」


 魔人の姿でさえ無ければ、俺の入浴時間は女性のユキより遥かに短い。


「ところで、レイミアはどうしたんだ?」

「レイちゃんはこの部屋を見て回ってるよ。色々珍しいのかも知れないね」

「そうか――って、レイちゃんか。随分仲良くなったな」

「なんていうか……少し私に似てる気がしたから」

「……そうか」


 仲良くなるならそれに越した事は無い。というより、ユキが人と衝突するのはあまり考えられないな。

 フッと大輔君の事が頭に浮かんだが、もう終わった事なので気にしない事にする。


「ところで、聞きたい事があるんだけどさ」

「ん? なに?」


 俺はあの影『オプタートゥム』と戦っていたユキのステータスが通常より遥かに高くなっていた可能性がある事、そしてユキにも称号が追加されていた事を伝える。

 するとユキは少し申し訳なさそうな顔をしながら口を開く。


「えっと、ね? 実は……その称号があるのは前から知ってたんだ」

「そうなのか?じゃあ何で――」

「別に隠してたわけじゃなくて……。その……見てもらった方が早いかも……」


 そう言って俺に表示させたメニュー画面を見せる。

 そこには称号の説明と効果が書いてある画面が表示されていた。

 そこに書いてある文字を読んでみると……。


「……」

「……リウス?」

「あー……うん。確かに自分から見せるのは少し恥ずかしいな。これは」


 だって、こんな文章告白となにも変わらないですもん。

 だが、これでユキのステータスが強化された理由が分かった。

 ただ、10倍か……。一体どれだけ――いや、考えるとこっちが恥ずかしくなってくる。止めておこう。

 ユキの顔を見るとユキも少し顔を赤らめている。


「……リウス」

「……ユキ」


 ガチャ。


「凄いですねこの部屋。今の宿ってみんなこんな部屋なんで――どうしたんですか?」

「い、いや。何でもない」

「う、うん。何でもないよ?」

「……? そう、ですか?」


 今日からこの部屋は2人きりじゃない事をすっかり忘れていた。

 本当に気を付けなければ。


「そういえば、この部屋見て回ったんだろ? どうだった?」

「正直、かなり驚きました。今ってどの宿もこんな感じなんですか?」

「いや、ここは高級宿だ。他の宿はここ程広くないし、綺麗でも無いと思うぞ」

「そうなんですか」


 余程目新しいのか未だに周囲をキョロキョロとしている。

 ちなみに今レイミアはユキが持っていた黒のネグリジェを着ている。因みに色はユキのチョイスだ。


「じゃあ、そろそろ寝よっか?」

「もうそんな時間か。――というか、レイミアは何処で寝るんだ?」

「それなら、私にはこれがありますから」


 そう言ってレイミアが床に手を向けると、その手から床に血が滴り落ちる。


「……レイミア?」

「見ていて下さい」


 ポタポタと垂れる血は次第に量を増やしていき、床に垂れた血は生き物のように蠢く。

 そしてその血が動き出し、集まった血は色を変え、箱を形作る。

 レイミアが血を垂らしてから数秒後には、そこにはあの洞窟に置いてあった棺桶が現れた。

 絨毯に垂れたはずの血液はシミを作る事も無く綺麗に消えていた。


「そんな事まで出来るのか」

「はい。吸血鬼ですから」


 いまいち答えになっていない様な気もするが、レイミアがそう言うのだからそういう事にしておく。

 血で作られたであろう黒い棺桶の蓋を開け、赤色の布が敷かれたそこにレイミアが入る。


「私はここで大丈夫ですから」

「……そう、か?」

「みんなベッドで寝れば良いんじゃない? このベット大きいし、3人ぐらい大丈夫だよ」

「「……」」


 そういう事をサラッと提案出来るユキは凄いと、改めてそう思った。



 ◇◇◇◇◇



「男性と一緒に寝るのは初めてなんですが……結構緊張しますね……」

「……俺も女性に挟まれて寝るのは初めてだ」


 キングサイズ程度の大きさのベットに川の字――と言っても中心は俺だが――になって横になる俺、ユキ、レイミア。因みに右がユキ、左がレイミアだ。

 いつの間にか一緒に寝るのが普通になっていたので忘れていたが、女性と寝るというのはやはり緊張する。

 しかもそれが今日出会ったばかりの人物であれば尚更だ。というかこんな事日本ではまずあり得ない。


「ところで、ご主人様の本当の姿はどちらなんですか?」

「本当の姿、っていうと?」

「初めて会ったときは魔族の姿だったので」

「ああ、そういう事か」


 俺は今《外見偽装》で人間の姿になっている。ギルドへ報告に行く際人間の姿になる必要があった為だ。


「魔族の姿が本当だ。今は俺の技能(スキル)で人間の姿になってるだけだ」

「そうなんですか。何故そんなことを?」

「あの姿は何かと面倒事に巻き込まれ易いからな」

「それは……そうですね。ご主人様ほど“特異器官”を持ち合わせている方は見たことがありませんから」

「……“特異器官”?」


 何それ初めて聞いたけど。


「あれ? ご存知ないですか?」


 ……どう答えるべきなんだろう。知ってないとマズイことだったりするのか?

 …………知ったか振りするよりは正直に聞いた方がいいか。


「ああ、特異器官って何だ?」

「特異器官というのは、魔族のみが持つ特殊な器官の事です。角、翼、尻尾、魔眼の全部で4つです」

「成る程。じゃあ俺は角と翼の2つか」

「いえ、角、翼、魔眼の3つですよ?」

「……は?」


 魔眼なんてキャラクター設定の時にあったか?


「……それ、本当?」

「は、はい」


 身体を起こし《外見偽装》を解除する。

 アイテムボックスから鏡を取り出し自分の顔を確認する。


「なっ……」


 そこに写っていた俺の目は、強膜を黒に染め、薄っすらと赤みがかった黒色だった筈の角膜は真っ赤に染まっていた。変化していないのは黒い瞳孔だけ。普段の俺の瞳とは似ても似つかない物へと変わっていた。


「……なあ、レイミアと初めて会った時からこうだったか?」

「はい。何も変わっていませんよ?」


 という事はユキも俺のこの目には気が付いていたはず。

 だがそんな事は一言も言っていなかった。


「なあ、ユキって俺のこの目に――」


 そこまで言いながらユキを見ると、そこにはスヤスヤと寝息を立てて眠るユキの姿が。


「静かだと思ってたらもう寝てたのか」


 まあ、明日聞けばいいか。


「俺達も寝るか」

「そうですね」


 鏡を仕舞いスキルを発動し横になる。


「じゃあ、おやすみ」

「はい。お休みなさい」



 ◇◇◇◇◇



「ん……」


 腕に何かひんやりとした物を感じ目が覚める。

 伝わってくるのは左側から。顔を向けるとそこには俺の腕を抱え込むようにして眠るレイミアの姿が。

 棺桶で眠っていた時とは違い、きちんと呼吸もしている。だが腕に伝わってくる温度は、生き物の温かさと無生物の無機質な冷たさの中間の様な温度。

 改めて“人間ではない”と実感させられる。尤も、俺が言えた事では無いが。


「……今、何時だ?」


 目の前に音も無くメニュー画面が表示される。その画面は確かにそこに在り、半透明の水色をしているが、メニュー画面そのものは光を発していないのか、周りは一切光で照らされていない。

 一体どんな仕組みなんだと思いつつ時間を確認すると、そこには【3時28分】と表示されていた。


「まだ起きるには早いか……」


 そのままメニュー画面を閉じ再び寝ようかと思ったが、ふとある事を思い出す。


(レベル400超えたって事は、新しいスキルも追加されてるのか)


 ついでにそれだけ確認してから眠ろうと、スキル一覧を表示させ、その一番下に表示されるスキルを確認する。


「……ん? これって……」


 そのスキルの効果を確認しつつ、それをどう使うか頭の中で組み立てている内に、俺の意識は再び底へと沈んでいった。

『―』←ダッシュ

『…』←三点リーダー


最近名称を知りました。

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