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最強魔王の異世界放浪記  作者: 塩砂糖
第2章《眠りの吸血鬼編》
27/68

第23話『では、ご主人様で』

最近、買っただけでずっとやっていなかった『サガ・スカーレット・グレイス』を始めたんですが、これ面白いですね。

ロマサガも買おうかな。

「さて、これからどうするか」


 一通り自己紹介を済ませた俺達は、今後の行動について話していた。


「3人で洞窟から出るのは無理だよね」

「そうだな。外には見張りの冒険者もいるだろうし......」


 俺達は2人でこの洞窟に入った。にも拘らず、出てきた時に3人になっていては不審に思われるだろうし、救出者という言い訳も通用しないだろう。


「あの......ところで魔王さまたちは何故ここに?」

「ちょっと待て。俺は魔王じゃない」

「ですけど......」


 そう言い俺の姿を見るレイミア。

 いや、確かに魔王みたいな姿してるけども。


「兎に角、魔王様はやめてくれ。変な誤解を生みそうだ」

「では、なんとお呼びすれば?」

「リウスでいいよ」

「リウス様?」

「様は付けないくていいぞ」

「主人を呼び捨てなんて!」

「いつからそうなった⁉︎」


 いつの間に俺はレイミアの主人になったんだ。

 対等な仲間として加えたつもりだったんだが。


「とにかく主人を呼び捨てには出来ません」

「って言われてもなぁ」

「いいんじゃない? レイミアちゃんがそうしたいって言ってるし」

「ユキまで言うか......」


 だとしても様付けで呼ばれるのは......なんというか、呼ばれ慣れていないからぞわぞわして気持ちが悪い。


「......分かった。ただ名前に様付けはやめてくれ。変な恥ずかしさがある」

「......では、ご主人様で」

「う、うん。まあ、いいか」


 あれ? なんか余計に恥ずかしいぞ?


「それで、ご主人様たちはどうしてここに?」

「俺達はギルドの依頼でここに来たんだよ」

「ギルド......ですか?」

「レイミアちゃんは知らない?」

「はい......知らないです」


 もしかしたらギルドはレイミアが眠りについた後に出来た組織なのかも知れないな。

 だとすると、歴史は長くても80年ぐらいか。


「ギルドって言うのは——」


 レイミアに一通り『冒険者ギルド』というものが何なのかを説明する。


「つまり、その冒険者ギルドからの依頼でここに来たんですか?」

「そうだな。まあ、依頼よりは任務って感じだけど」


 ん?そういえば......。


「なあ、レイミアはこの洞窟に飛ばされた後、最深部で自ら眠りについたんだよな?」

「は、はい。そうですけど、それが?」

「その時、この2つの部屋に通じる通路を“埋めたり”しなかったか?」

「はい、埋めましたけど......」


 やはりか......。


「何でそんなことをしたんだ?」

「えっと。まず、私は自分が眠る棺桶に魔法を掛けておきました」

「召喚魔法だな」

「はい。ですけど、誰でも私の棺桶を見つけられるようでは、掛けた魔法は直ぐに発動してしまいます」

「......成る程な」

「......どういうこと?」


 いまいち意味が理解出来ていないユキが首を傾げる。


「つまり、簡単に魔法が発動しては困る、簡単に棺桶が見つかったら困るんだ」

「どうして?」

「魔法によって召喚される魔物はレベル300にもなる。到底普通の人間じゃ倒せない。その情報は直ぐに広がる。するとどうなると思う?」

「......今回みたいに、討伐隊が編成される......?」

「そう。もし仮にゴーレムを倒せるような人物が来れば、その後レイミアも殺される。吸血鬼で、しかも魔王の部下なら尚更だ」

「だからすぐに見つからないように埋める必要があった......。でも、確かあの通路、壁が崩れかけてただけで、埋められてたなんて聞いてないよ?」

「えっ? そうなんですか?」


 今回隠し通路が見つかったのは“壁が崩れかけていた”からだ。埋められた穴を見つけたからではない。


「ああ。それにだ」

「それに?」

「レイミアの魔法は“棺桶が開けられる”ことで発動する魔法だった。にも拘らず、俺達が棺桶を見つけた時には棺桶の蓋は閉められていた」

「それって......」

「......Eランクの冒険者が隠し通路を見つける前に、『通路を見つけ、埋められた通路を掘り、棺桶の蓋を開け魔法を発動させた後蓋を閉め、わざと見つかるように不完全な形で壁を戻した』“誰か”がいる」



 ◇◇◇◇◇



「......でも、いったい誰が?」

「そこまでは流石に分からないけど......」


 今回の事にしろ、大輔君と一緒にいた3人に女性にしろ、気になることが多い。

 誰がどんな目的でこんな事をしてるのか知らないが、もし俺達に何かするつもりなら......誰であろうと容赦しないからな。


「まあ、分からないものは仕方がないからな。それよりこれからどうするか考えよう」

「......そうだね。どうしようか?」

「何か手はあるんですか?」

「幾つかあるんだけど......そうだな、一番楽な方法で行こう」

「簡単な方法?」

「ああ」


 そう答え、ユキとレイミアの肩に手を乗せる。


「えっと、ご主人様。その方法とは?」

「......転移だ」


 瞬間、景色が切り替わる。目の前に広がるのは俺とユキが泊まる宿の部屋だった。


「っ! ......ここは?」

「俺とユキが泊まってる宿の部屋だ」

「ご主人様、転移魔法まで使えるんですか......?」

「まあ、正確には魔法じゃないけどな」


 魔法で転移も可能だが、スキルで出来る事をわざわざMPを消費して魔法でやる必要は無い。


「取り敢えずレイミアはここで待っていてくれ。俺達は冒険者ギルドに報告してくるから」

「畏まりました」


 再び《空間転移》を発動し、洞窟内へ戻る。


「さて、じゃあ正面から出るか」



 ◇◇◇◇◇



「リウス! ユキちゃん!」


 ギルドに戻るなりミーアさんがとんでもないスピードで駆け寄ってくる。


「おかえり! 大丈夫だった!?」

「ちょ、ミーアさん近い近い!」


 駆け寄る勢いで衝突しそうになるミーアさんを受け止め、一旦落ち着かせる。


「ミーアさん一回落ち着こう。はい、深呼吸〜」

「す〜は〜、す〜は〜............うん、ちょっと落ち着いた」


 胸に手を当て深呼吸をするミーアさん。

 そんなに慌てること無いと思うんですけどね。


「えと、それじゃあ、任務報告してもらわなきゃだから、ちょっと付いてきて」


 そう言われ通されたのは、任務内容を聞いたあの応接室だった。

 俺とユキがソファに座り、テーブルを挟んで反対側にミーアさんも座る。

 そしてミーアさんが紙とペンのような物を取り出す。


「じゃあ、任務の報告お願い出来る?」

「ああ。先ずは——」


 ダンジョンに向かってからのことを事細かに説明する。

 隠し通路の先はダンジョンでは無く、部屋だったこと。生存者はいなかったこと。冒険者が全滅した原因であろう魔物を発見し、討伐したこと。

 因みに、魔物の発生源は不明。そしてレイミアに関しての事は全て伏せておいた。

 ——そういえば、レイミアが眠っていたあの棺桶、どうにかしなければな。

 壊して......いや、一回持ち帰るか。

 一通り説明を終え、俺とユキの説明を細かく紙に書き込んでいたミーアさんもペンを置く。


「ありがとう。これで任務報告は終了だよ」

「そうか。お疲れ様、ミーアさん」

「ううん。2人こそ任務終えて直ぐに大丈夫だった?」

「あんまり疲れてないから大丈夫だよ」


 そう(にこや)かに答えるユキさん。


「そ、そっか。さすがSランクだね......」


 俺もそうだけど、ユキも半端ない身体能力だな。洞窟までの道と洞窟内の往復で3〜4キロ歩いてる上、レベル300の相手と戦闘という名の全身運動した後なんですけどね。


「それじゃあ、今日はもう帰って大丈夫だよ。明日までには任務の報酬額も確定するはずだから、また明日来てくれる?」

「分かった。じゃあ、また明日」

「またね。ミーアさん」

「うん。本当に今日はありがとう!」


 応接室を出て、ギルドを後にする。

 そして宿に戻る——その前に、もう一度ダンジョンに戻らなくては。

 人気の無い路地に入り《空間転移》を発動させる。

 そして他の冒険者が来る前に棺桶を回収しようと思ったのだが......。


「あれ? ......棺桶がない?」

「そうだな......」


 確かに其処にあった筈の棺桶が無くなっていた。


「どこ行ったんだろう......?」

「......分からないけど、一旦戻るしかないな」


 《空間転移》で宿の部屋へ再び転移する。いつの間にか帰っていた事を宿の受付の人に不審がられるかも知れないが、設定した位置にしか転移できない以上致し方ない。


「お帰りなさいませ、ご主人様」


 部屋には“俺達が部屋から転移した時と全く変わらない位置”にレイミアが立っていた。


「あ、ああ。......あの、もしかしてずっとそこに立ってたのか......?」

「......? はい。そうですけど......」

「いや、ここで待ってろとは言ったけど......」


 そこまで愚直に従われても困るな......。


「レイミア。なんというか......俺の言ったことに従うだけじゃダメだ。君は自分の意思で俺達と一緒に来ることを決めたんだろ? 命令を聞くだけじゃただの人形だ。それじゃ、死んでるのと同じだぞ?」

「......! ......すいません」

「レイミアには自分の意思があるんだ。俺の言うことに逆らってくれとは言わないが、少なくとも意見を言えるぐらいには意思を持ってくれ。いいな?」

「......はい。畏まりました」


 んー。案外扱いずらいのかも知れない。まあ、少しづつ変えていけばいいか。


「ところでさ。レイミアが眠っていた棺桶がダンジョンから消えてたんだが......何処にあるか分かったりするか?」

「はい。ここにありますよ」


 そう言ってリビングのテーブルの横にある棺桶を指差す。


「......持ち運び可能なのか?」

「はい。元々私が作り出した物ですから」

「なるほど......」


 取り敢えず、これで棺桶の心配はなしか。


「それじゃあそろそろお昼にしない?」

「そういえば、お昼ご飯はまだだったか」


 現時刻は1時27分。任務の後でちょうどお腹が空いてきた。


「2人とも、何か食べたい物とかある?」

「そういえば、レイミアって吸血鬼だけど、普通に食べ物って食べられるのか?」

「はい。吸血鬼だからと言って血しか飲まない訳じゃないですよ」

「そうなのか。苦手な物とかは無いのか? ニンニクとかさ」

「ニンニク......ですか? 別に苦手では無いですよ?」


 ありゃ。この世界の吸血鬼にニンニクは効かないらしい。


「苦手なものは無いってことで良いのかな?」

「はい。なんでも大丈夫です」

「なら、リウスは食べたいものとかある?」

「そうだな......。肉が入った料理とか良いかもな。久々にちゃんとした運動をしたし」

「お肉の入った料理ね。すぐ作るからちょっと待ってて」


 服を軽装備の鎧からエプロンに変え、キッチンへ向かうユキ。

 そしてそれをジッと見つめるレイミア。


「どうかしたか?」

「いえ、お手伝いした方が良いかな、と」

「あー、レイミア。料理の経験とか、ある?」

「いえ、ないですけど......」

「なら、止めておいた方が良いかもな」

「ユキ様って料理のことになると厳しかったりするんですか?」

「ん?いや、そういう訳じゃ無いんだけど......実際見た方が早いかもな」

「......?」


 いまいち意味が分からないといった顔のレイミアを連れ、キッチンへ向かう。そこには当然エプロン姿のユキが。


「ご主人様......?」

「まあ見ててみな」


 調理器具や調味料をアイテムボックスから取り出すユキ。


「何作るんだ?」

「まだお昼だから......普通に炒め物かなぁ」


 そう言いながら冷蔵庫——という名の魔導具から野菜や肉を取り出す。

 アイテムボックスに保存しても良いのだが、ユキ曰く、腐らないと分かっていても冷蔵庫以外に食料を入れるのはまだ少し抵抗がある、との事だ。

 一通り調理器具と食材を出し終わり、ユキが調理を始める。

 野菜を切り始めたユキに声を掛けられる。


「リウス、お肉の解凍お願い出来る?」

「ああ、半解凍ぐらいで良いか?」

「うん。お願い」


 ユキから肉を受け取り、魔法で火を通さない程度の熱で肉を解凍していく。

 その間にもユキは手慣れた様子で野菜の下準備を済ませていく。


「早い......」

「だろ? あそこで一緒に手伝えるか?」

「今は......出来ないです」

「今の所俺達が出来るのは、食後の後片付けぐらいだな」


 ここ最近キッチンが部屋にある事でユキが料理をする機会が増えた為、ユキが食事を作り、俺が後片付けをするという役割分担がいつの間にか決まっていたのだ。


「ユキ、こんなもんで良いか?」

「うん。ありがとう」


 野菜の下準備を終えたユキが続けて肉を切っていく。

 あっという間に切り分けられた肉を油をひいたフライパンに乗せ炒めていく。

 肉に火を通しつつ、アイテムボックスから食器を取り出す。

 そして同時に米の準備も済ませていく。

 この世界にも炊飯器——という名の魔導具——はあるのだが、どういう訳かお米が炊けるのがとんでもなく早い。

 量にもよるが、スイッチを入れてから大体10分程度で炊き上がる。

 炊飯器をセットし、炒め物に戻るユキ。

 ある程度火を通した肉に野菜を加え、さらに炒めていく。

 そこに塩胡椒などの調味料を加え混ぜ合わせ、皿に盛り付けていく。

 空腹を誘う美味しそうな匂いが辺りを漂う。

 それと時を同じくして、炊飯器から炊き上がりの合図の音が聞こえる。

 炊き上がった米を茶碗によそる——ところである事に俺とユキは気がつく。


「あ、お茶碗2つしか無いね......」

「レイミアの分も買わなくちゃな」


 取り敢えずの代用品として別に買っておいた皿を使う。


「レイミア、今日はこれで良いか?」

「はい、大丈夫です」


 出来上がった炒め物とお茶碗をダイニングのテーブルへ持っていく。


「ホントはお味噌汁とかあれば良かったんだけどね」

「味噌が無いからなぁ」

「味噌......?」

「まあ、調味料の一つだよ」


 今の所俺達はこの世界で味噌を見た事がない。というより発酵食品を殆ど見ない。

 ワインなどの酒類やチーズ、パンなどは存在するが、味噌や醤油、豆腐などの日本人に馴染み深い物は未だ見た事がない。

 この国に無いだけで他の国や大陸にはあるかも知れない。

 別の国に行ったら探してみよう。

 そう心のメモ帳に記入し、いつもより肉多めの野菜炒めを食べながら明日の予定を決める。


「明日任務報酬を受け取りにギルドに行くついでに、レイミアの冒険者登録もしようと思うんだけど、いいか?」

「私は大丈夫ですけど......」

「何かあるのか?」

「いえ、吸血鬼って事がバレないかな、と」

「あー......」


 確かにバレないか心配......というかバレたらマズイのか?

 今の吸血鬼の立場が分からないからな......。


「まあ、多分大丈夫だと思うぞ。特別な検査とかは無かったからな」

「そうなんですか?」

「ああ。——そういえば、吸血鬼は日の光が苦手って聞くけど、レイミアもか?」

「苦手、と言えば苦手です。元々吸血鬼は日の出ていない夜に行動する種族なので」

「成る程......」


 まさか吸血鬼にこうして質問をする日が来るとは誰が予想出来ただろうか。

 改めて思うが、本当とんでもない体験してるな。


「あ、後最後に1つ良いか?」

「なんですか?」

「レイミアって、“海”渡れるか?」

「え?......はい、渡れますよ?」

「そうか。なら良かった」


 よく吸血鬼は海を渡れないと聞くので、それだけ気掛かりだったのだ。

 もし海を渡れなければ、別大陸に行く際何か方法を考えなければならない所だったが、杞憂に終わった。

 そんな事を考えながら野菜炒めを口に運び、ご飯を食べようとした所......。


「あ......」

「リウス、おかわりいる?」

「ああ、お願い」

「私もいいですか?」

「うん。少し待っててね」


 2人分のお茶碗を持ち、キッチンへ向かうユキを眺めながら、なんてことのない日常も良いものだなと、心の底からそう思った。



 ◇◇◇◇◇



「お疲れ様でした。......大丈夫ですか?」


 心配そうな声で話しかける女性の視線の先には、椅子に深く腰掛け、ボーッと上を見つめる赤い外套に身を包んだ男の姿が。


「ああ......大丈夫だ......。だが、まさかここまで力を使うとは思わなかった。あの2人が時間を掛けたのも頷ける......」

「ですが、宜しかったのですか?あの様な子供に——」

「良いんだよ。ああいう欲望に忠実な奴の方がコントロールしやすいからね」


「まあ、バカなのは困るけど」と先程と同じ様に上を見つめながら男は答える。


「ですが、あの程度ではかの男に太刀打ち出来ないかと思いますが」

「......今日は随分意見するんだね。それは実際に目の前で見て、感じた印象かい?」

「......はい」

「そうか......。まあ、それでも良いんだよ」

「......と、仰いますと?」

「何も勝つのが目的じゃないからね。別に勝とうとも思っていないし。俺はただ面白いものが見たいだけ。それに、こんな事をした以上、2人にもそろそろ勘付かれるだろうしね」


 そう言われても、いまいち意味が理解出来ないのか、女の顔には疑問の色があった。


「つまり、俺が全て用意する必要は無いって事だよ。1つ用意すれば後は全て向こうがやってくれる。それが世界の“(ことわり)”だからね」


 女の表情は変わらないが、それを気にせず尚も男は続ける。


「行動開始は早くても1週間後かな。楽しみだなぁ......。ああ、楽しみだ......!」

和食大好きな自分はこの世界では生きて行けないかも知れないです。

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