表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強魔王の異世界放浪記  作者: 塩砂糖
第1章《異世界転移編》
2/68

プロローグ2

どうせならプロローグは全て投稿してしまおうかな、と。

 突然だが、『MMORPG』というネットゲームのジャンルをご存知だろうか?

 MMORPGとは『Massively Multiplayer Online Role-Playing Game――マッシブリー・マルチプレイヤー・オンライン・ロール・プレイング・ゲーム』の略語であり、『大規模多人数同時参加型オンラインRPG』とも呼ばれる事がある。


 そんな数多くあるMMORPGの中でも、一際人気を誇っているタイトルがある。


APOCALYPSE(アポカリプス)


 PS(プレイヤースキル)重視、探索しがいのあるオープンワールドのフィールド、豊富な武器、自由度の高い戦闘、膨大な組み合わせが可能な職業、いくら時間があっても足りない程のやり込み要素。


 などなどの理由から高い人気を誇っていたのだが……。



◇◇◇◇◇



 今日はそんな『アポカリプス』のサービス終了日。

 正式サービス開始から十周年を間近に控えたある日、突然運営より告知されたサービス終了のお知らせ。

 十年近く経っても未だ人気の衰えないゲームだっただけに、ネットニュースや某巨大掲示板は大騒ぎ。

 大勢のユーザーが運営に対し、サービス継続を望む電話やメールを送った為、運営の電話回線がパンクするなどの事件が発生するほど。

 だが現在はそれも収まり、サービス終了を惜しみつつも、殆どのユーザーはサービス終了を受け入れつつあった。



◇◇◇◇◇



 俺は羽川秋斗。26歳独身だ。

 プレイヤーネームはリウス。


 俺はこのゲームで一時期『最強』と呼ばれていた。


 このゲームには八体のボスモンスターが存在する。

 そして俺は、このゲームにおいて唯一『単独』で、全てのボスを撃破した事のあるプレイヤーだ。

 まあそれは俺の就いている職業が、公式チート宜しく、チートじみた能力を持っていたからでもあるのだが……。


 ボスを全て単独撃破した俺は、明確な目的を果たした達成感からか、そのままゲームを辞めてしまった。尤も、他に辞める理由がある事にはあったのだが。


 そして、俺がアポカリプスのサービスが終了するという話を聞いたのは、俺がゲームを辞めてから二年が経った頃だった。



◇◇◇◇◇



「サービス開始からやっていたから、八年もやってたんだよなぁ。このゲーム」


 俺は今、アポカリプスを始めて誰しもが最初に訪れることになる『始まりの街』に来ている。


 無論、ゲームキャラで、だが。


 始まりの街は、既にログインしていたプレイヤー達でごった返しており、ラグが発生するほどになっていた。

 恐らく、これほどのプレイヤーが一つのエリアに集まったのは、少なくとも俺の記憶の中ではサービス開始直後以来のはずだ。

 サービス開始直後でも、ラグが発生したりすることは無かったアポカリプスのサーバーを以ってしてもラグが発生しているのは、暗にサービス開始時よりもプレイヤーの数が遥かに増えている事を物語っていた。

 キャラクターの男女比は4:6といったところだ。

 MMORPGでは珍しく、比較的男性アバターを使っているプレイヤーがこのゲームには多かった。

 まあ、実際のプレイヤーの比率は8:2ぐらいだと思うが。


「未だに人気があるな。このゲームは……」


 賑わうワールドチャットを見ながらそう呟く。

 二年もゲームから離れていたが、やはり終わってしまうとなると少し寂しくなる。

 しかし、何故こんなにも人気があるのにも拘らず、サービスを終了するのだろうか?

 プレイヤーの誰しもが疑問に思っているであろう事を考えながら、このゲームでの思い出を振り返っていた。

 思い出に(ふけ)っていると、運営からアナウンスが入る。


『それではこれより、運営から最後の挨拶を始めさせて頂きます』


 時刻は現在、午後十一時四十五分。

 サービス終了が十二時なので、恐らく挨拶が終わればそのままサーバーダウンとなるのだろう。


『サービス開始から本日で十年。皆様には大変長い間このゲームをプレイして頂き、深く感謝しております』


 運営が挨拶をしている間にも、ワールドチャットでは、


「なんで終了しちゃうの〜?」

「これ終わったらどこ行こうかなー」

「これほどハマるゲームにはもう会えないかもなぁ」


 などと様々なことを話している。


 運営の挨拶は続く。


『非常に沢山の方々からサービス継続を望む声を頂きました。このゲームがここまで愛されていると知り、とても嬉しく思います』


 その発言にワールドチャットが騒めく。


「おっ、これはもしや?」

「まさかの終わる終わる詐欺? (笑)」

「いやいや、そんな馬鹿なw」

「みんなそれフラグになってるから!」


 無論、本気ではない。みんな薄々勘付いていた。


『ですが我々はサービス終了の決定を覆すつもりはありません。また、新作のゲームなども予定しておりません』


 またチャットが騒がしくなる。


「折れたああああw」

「デスヨネー」

「新作ゲームは期待してたんだけどなぁ」

「鬼畜運営(笑)」


 そんなやり取りを見ながら、俺はチャットにも参加せずに、ただただサービス終了時刻になるのを待っていた。


 俺に声を掛けてくる者は、誰もいない。

 かつては一緒にプレイしていた仲間もいた。

 ボスを単独撃破する際の作戦を考えてくれた仲間もいた。

 だが、俺がゲームを辞めてからその繋がりも途切れてしまった。

 彼らは俺の事を憶えているだろうか?

 (もっと)も、憶えていてもあまり良い印象はないだろう。

 仲間達の引き留める声を跳ね除けて俺はゲームから去ったのだから……。


 そういえば一人だけ、何度も何度も引き留めてくれた奴がいたな。

 名前は確か――。


『以上を以って、運営からの挨拶を締めくくらせて頂きます』


 そんな事を考えている間に、どうやら運営の挨拶は終わったらしい。


 時刻は十一時五十五分。


 あと五分で終了だ。

 ……最後にダメ元でワールドチャットに呼び掛けてみようか。


 ――いや、止めておこう。

 もう会うことも、無いだろうしな。




 サービス終了のカウントダウンが始まる。


『10!』

『9!』

『8!』

『7!』

『6!』


 最後なんだし、俺も参加するか。


『3!』


 1と入力し、その時を待つ。


『2!』


 エンターキーに指を乗せる。


『1!』


 ああ、楽しかったな。



 ――最後は、貴方にしましょうか



 そこで俺の意識は、途切れた。

次話から本編開始です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ