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最強魔王の異世界放浪記  作者: 塩砂糖
第1章《異世界転移編》
18/68

第15話『Sランク冒険者』

いざフェイルムへ。

 ギルドの受付に行き、ミュエさんに声を掛けると、ギルド長から話があるとの事でギルド長室に案内された。

 暫く待っていると、アレインさんが部屋に入ってきた。


「あ、アレインさん。話とは何ですか?」

「この前準備をしておくと言っただろう? それについてだ」


 アレインさんがそう言うと、ミュエさんから1枚の黒いカードを渡される。

 ユキも同じ物を受け取る。


「……これは?」

「Sランク冒険者のギルドカードだ」

「ああ、これが。……って、Sランク?」

「その通り。準備の一つは君達のSランク昇格だよ」


 まだ冒険者になって数日の者をそんな簡単にSランクにして良いのか……?


「でも、何故そんなことを? それにSランク冒険者には百名の定員が決まってる筈では?」

「実はな、今のSランク冒険者は全部で八十九人しかいないのだよ。行方不明や依頼中の死亡などで人数が減っていてね」

「だとしても、どうして?」

「面倒ごとは嫌いなのだろう? それを持っていれば、余程のことがない限り自由は保障される」


 ギルド長が言っているのはこういう事だ。

 ギルドという組織は、あらゆる国に属さない独立した組織だ。

 国に属さない理由。それは冒険者の力を国同士の争いや戦争などに使わせない為だ。

 なので基本的に冒険者の身分や自由はギルドが保障してくれるのだが、ギルドが国に属していないとはいえ、冒険者はギルドに所属しているしていないに関わらず、その国の国民だ。兵として戦争に行けなどの命令なら兎も角、国からの命令に一冒険者が逆らうのは難しく、ギルド側も数の多い一般冒険者を全て保護するのは難しい。

 だがそれも、Sランク冒険者となれば話は別だ。

 Sランク冒険者はギルドが独自の基準で選出した、いわば切り札だ。

 そんな人物を国が無理矢理戦争に行かせるような事になれば、協力関係にある国とギルドの間に軋轢を生みかねない。

 などの理由から、アレインさんは俺達をSランクに昇格させてくれたらしい。


「でも、そんな簡単にSランクに昇格させて良いんですか? ギルドの反対などは?」

「炎神の化身を討伐した冒険者をSランクにする事を反対するような者はいない。それに、本来であれば炎神の化身討伐任務はSランク冒険者向けの依頼だったんだ」

「では、何故Sランク冒険者ではなく、Dランク以上の冒険者に依頼が?」

「どうもブリーシア大陸で事件があったようでな。殆どのSランク冒険者はそちらに向かってしまったんだ」

「事件、ですか?」

「何があったのかは詳しく知らされていないんだ。すまないな」


 事件か……。まあ別の大陸の話だし、今の所関係なさそうだな。


「それで、SランクとAランクに違いはあるんですか?」

「Aランク冒険者などと同じく、ギルド管轄施設の無償利用に加え、緊急時に限ってだが、ギルド所属の冒険者に対する命令権もある」

「命令権、ですか?」

「ああ、命令の強さだけで言えばギルド長とほぼ同等だ」


 緊急時というとこの前の魔物襲撃のような事などか。そんな権利使う機会が無いことを祈るばかりだな。尤も、緊急時であっても使うとは限らないが。


「ただ、Sランク冒険者にはギルドから直接依頼を出す事がある」

「直接とは?」

「君達冒険者が受ける依頼は、ギルドが斡旋している物が殆どだが、それとは別にギルドが直接出す依頼の事だ。今回の炎神の化身討伐任務のようにな」

「拒否は出来るんですか?」

「基本的には不可能だ。依頼というより命令といった方が良いかも知れんな」


 強制なのか。少し面倒な気がしたが、思い返してみれば、向こうの世界では断れない仕事など良くあったことだと思い出した。


「尤も、そのような事は滅多にあることでは無いから安心してくれ」

「はい。分かりました」


 断る理由も特に無いので、Sランク冒険者になる事にした。

 ――その時の俺達には、ギルド長が言う『その』という言葉の中に「『君達が苦戦する』ような」という言葉が隠されている事など知る由も無かったのだが。

 受け取ったギルドカードに魔力を流し、以前まで使っていたカードをミュエさんに渡す。

 ユキも俺に続きカードをミュエさんに渡した。


「さて、話はこれで終わりですか?」

「いや、あと一つだけある」


 そう言ったアレインさんは1枚の紙を手に持っていた。

 それを受け取り確認すると、そこには人の名前が書いてあった。

 ミーア・リンダース?


「フェイルムのギルドで仕事をしているもう一人の娘だ。話は通してあるから、何かあれば頼ると良い」


 もう一人娘いたんですか。

 少し驚いたが、知らない街でこちらの事を知ってくれている人物がいるというのは心強い。有難く頼らせてもらおう。


「ありがとうございます」

「いや、こちらこそ君達がこの町に来てくれて良かった。また機会があれば立ち寄ってくれ」

「はい。では、俺達はこれで」

「ありがとうございました」

「ああ。道中気を付けてな」


 ギルド長室を後にし、ギルドを出る。

 フェイルムにはこの町から出ている馬車を使って行くことになっている。

 因みにこれもミュエさんが手配してくれた。

 馬車乗り場へ向かって歩いていると、見覚えのある人物が前から歩いてきた。


「ねえ、あれってセニアさんとニーグさんじゃない?」

「ん? あ、本当だな」


 出会ってから一週間と少しだが、知らない仲でも無い。最後に挨拶ぐらいして行こう。そう思った時には、既にユキが二人に声を掛けていた。


「セニアさん! ニーグさん!」

「ん? ああ、リウスにユキさん」

「あ……」


 因みにニーグはユキに対しては基本敬語だ。

 かくいう俺もヒルリースさんには敬語なのだが。


「久しぶり。ニーグ」

「ああ久しぶり。依頼か何かか?」

「いや。これから王都に行くんだ」

「王都に? 何か用事か?」

「用事……というか、色々な場所を見て回ろうかと思ってな」

「成る程。実はな、俺達も旅をしているんだ」

「そうなのか。じゃあ、また何処かで会えるかもな」

「そうだな。まあ二人なら無用な心配だとは思うが、一応気をつけてな」

「ああ。じゃあ、また何処かで」

「ニーグさん。セニアさん。またね」

「……ええ、またね」


 ニーグ達と別れ、馬車乗り場へ向かう。

 そういえば、ヒルリースさん、少し暗かったような……。まあ気のせいかな。



◇◇◇◇◇



 リウス達と別れた後、2人でギルドへと向かっていた。

 セニアは依然として何も喋らない。


「……魔族は、まだ苦手か?」

「……ええ。ニーグは、もう大丈夫なのね」

「人間にだって悪い奴はいる。それは魔族だって同じだ」

「でも……。まだ私はそんな風に割り切れない」

「……そうか」

「……でも、リウス君は、悪い人では無いと思う」

「そうか」


 二人の脳裏に蘇るのは、年齢が二桁になったばかりの、幼き日の記憶。

 今までの生活が一変し、冒険者を目指すきっかけにもなった出来事。

 未だ旅の目的は達成出来ていない。

 割り切りはしたが、その憎悪は薄れることはない。

 いつか復讐を果たすべく、二人はまた歩き出した。



◇◇◇◇◇



 ニーグ達と別れて十数分。馬車乗り場はすぐそこまで近づいてきていた。

 かなりの数の馬車が停まっていた為、その場所はすぐに分かった。

 馬車乗り場は駐車位置が数字で分けられており、俺達の乗る馬車が停まっている場所は、1-2という場所らしい。

 暫く探し歩いていると、今回乗る馬車を見つける事が出来た。

 馬車の形は、車体の両側に窓とドアが付いている天蓋付きの比較的しっかりした作りの物だった。

 尤も、こういった形の馬車はそこまで多くなく、馬車乗り場に停留している馬車の殆どは、俺達の乗る箱馬車から屋根を取り払ったような形の軽馬車だった。

 目的の馬車が停まる場所へ行き、御者さんに声を掛ける。

 因みに、行き先も代金もギルドを通じて渡してあるので、俺達は乗るだけで目的地に着くというわけだ。

 本当何から何までミュエさんにお世話になりっぱなしだ。

 馬車に乗り込み、フェイルムへ出発する。

 因みに此処からフェイルムまで馬車で三時間程度だ。

 正直俺とユキのステータスであれば走った方が速いのだが、道も分からず雰囲気何もない為、満場一致――尤も2人しかいないのだが――で却下となった。

 馬車が走り出して暫く経った頃、あることに気がつく。


「そういえば、全然揺れないな」

「言われてみれば、そうだね」


 道が舗装されている訳でも無いのに、馬車の乗り心地はかなり良かった。

 乗り心地だけで言えば自動車と大差無い気もする。

 この馬車には揺れや衝撃を吸収する魔道具かサスペンションでも付いているのかもしれない。

 その為か、先程までたわいもない会話をしていたユキは徐々にウトウトし始め、遂には俺の肩に寄りかかり眠り始めた。

 まだ王都に着くまで三十分近くある。

 俺も寝てしまおうかと思ったのだが、その前にステータスを確認する事にした。

 町の防衛任務時にかなりの魔物を討伐した。多少レベルが上がっているかもしれない。


【名前:リウス(26)】

【レベル:399】

【性別:男】

【職業:魔王】

【称号:神を屠りし者】


 おお、レベルが20も上がって――って、暫く見ない間に称号なんてものが追加されている。

 今までは無かったはずだが……。


【神を屠りし者】

 説明:神を打ち破りし者に与えられる称号。

 効果:神霊種が付近にいる場合のみ物理攻撃力と魔法攻撃力を2倍にし、受けるダメージを1/2にする。


 どうやら称号にもスキルのような効果が付いているようだ。

 恐らく、この神霊種というのは炎神の化身などを指しているのだろう。

 というより、それ以外考えられない。

 それにしてもいつの間に称号なんて追加されていたのか。

 炎神の化身を倒した後、レベルが379まで上がっているのは確認したが、その時点ではこんな称号は無かった。

 ゲームには無かった項目の為、いまいち獲得条件などが分からない。

 ――あ、そうだ。


「ユキ、俺のメニューに称号なんてものが――あ」


(って、ユキ寝てるじゃん)


 ユキにも称号が追加されているのか聞きたかったんだが、わざわざ起こしてまで確認するような事でもない。

 取り敢えず称号に関する考察を棚上げし、新たに覚えたスキルを確認する。

 予想通り、二十レベル上がった為、新たに二つスキルを覚えていた。

 恐ろしい反動があるものもあったが、今は割愛する。

 スキルの確認も終わり、する事が無くなってしまった。

 王都に着くまでにはまだ時間がある。俺もユキと同様に睡眠を取るべく、目を閉じ意識を闇に手放した。



◇◇◇◇◇



 リウスが寝息を立て始めた頃、肩に寄りかかり寝ていたユキは、そっと目を開いた。

 どうやら、眠っていたふりは気付かれなかったらしい。

 途中、呼び掛けられるまでは確かに眠っていたが、そこからは寝たふりだったのだ。

 理由は、称号だ。

 もっと言えば、その内容といったところだろうか。

 実のところ、称号についてユキはリウスよりも先に知っていた。

 だがそれを伝えなかったのは、話せば必然的に自分のものも見せなければならなくなるからだ。


【名前:ユキ(23)】

【レベル:209】

【性別:女】

【職業:獣王】

【称号:魔王に付き添いし者】


【魔王に付き添いし者】

 説明:1人の異性に生涯付き添うことを決めた者に与えられる称号。

 効果:相手(リウス)と行動を共にしている際に自身と相手の全ステータスを上昇させる。上昇率はお互いを想う気持ちによって変化する。お互いの上昇率が同じとは限らない。


(流石に、自分から見せるのは恥ずかしいかな……)


 尤も、リウスが【敵情報解析】を使って見れば直ぐにバレてしまうのだが、ユキがそれに気がつくのはまだ少し先だ。

 心地良い揺れに再度眠気を誘われたユキは、隣に眠るリウスを起こさないよう再び肩に寄りかかり、静かに寝息を立て始めた。



 ◇◇◇◇◇



 リウスとユキが馬車で揺られていた頃、ブリーシア大陸にて。


「よう。お疲れさん」

「ん……なんだあんたか」

「なんだってお前な……別れの挨拶でもしてやろうかと思ったんだよ」


 そこにいたのは一組の男女。

 声を掛けたのは黒髪黒目のガタイの良い男性。外見の年齢は二十代後半ぐらいだ。

 面倒そうに答える女は赤髪赤目の美人な女性。歳は二十代前半か、それともまだ十代か。

 動物の耳や翼がないのを見るにどちらも人間なのだろう。


「別れってことは、帰るのね」

「もうここにいる理由もないのに長居するわけにはいかないからな。お前はどうするんだ?」

「私は……アイシアかフレイシアに行こうかなって」

「ほう。アイシアかフレイシアねぇ……そういえばフレイシアで新しいSランク冒険者が出たって話、聞いたか?」

「噂だけね。何か知ってるの?」

「俺も詳しい事は知らねぇんだけどさ」


 そう言って男はニヤリと笑う。


「男女の二人組だってよ。女の方は獣人らしい」

「……ふーん。そう」

「ん? 気にならねぇのか? 前のお前だったら今すぐ確認しに行きそうなもんだが」

「もう変に期待するのは辞めたのよ。男の方の種族はなんなの?」

「聞くところによると人間みたいだが――」

「ほらね。それじゃ私は――」

「待て待て最後まで聞けって」


 その場から立ち去ろうとした女を男が引き留める。


「……まだ何かあるの?」

「これは俺も噂でしか聞いてないんだけどよ……男の方が魔族だって話もあるんだ」


 今まで無表情に受け答えしていた女の顔が初めて表情を見せる。


「……それ、本当?」

「さあな。俺も聞いただけで詳しい事は知らんが、その男と同じ依頼を受けた冒険者がそう言ってたらしい。強さも桁違いだったってよ」

「……」

「これでも気にならないってんなら、それでも構わねぇよ」

「でも……まさかそんな……。もうあれから二十年よ? ここ数年は異世界人の話も聞かないし……」

「最初に異世界人が来たのは三百年近く前って話じゃねえか。十数年ぐらい大した期間じゃねえだろ?」

「そりゃまあ……そうだけど……」

「ま、好きにすれば良い。それじゃあそろそろ船の時間だから行くわ。またな」

「え、ええ……またね」


 男がいなくなった後も女はその場に立ち尽くしていた。

 その顔には驚きと期待が入り混じったような表情を浮かんでいた。


「リウス……ユキ……」



 ◇◇◇◇◇



 王都フェイルムはフレイシア大陸の中で二番目に大きいフェイルム王国の王都である。

 付近には山が多く、この島特有の温暖な気候から、農業や林業、木工業がとても盛んな国だ。

 フィレストを出発してから約一時間。

 道中特にトラブルも無く、ほぼ予定通りの時間でフィレストに着きそうだ。

 十分ほど前に目が覚めた俺は、御者さんから「もう直ぐで着く」と言われ、のんびりと外を眺めながら街に着くのを待っていた。

 隣のユキは未だ眠ったままだが、寝起きからいきなり歩き始めるのは少し辛いような気がして、街に着くのには少し早いが俺はユキを起こすことにした。


「ユキ、ユキ。もう直ぐ着くぞ」

「んぁ……。ん〜? ……あ、リウス……」

「おはよう。もうそろそろで着くぞ」

「ん〜! そっか、もう着くんだね〜。どんな所かな?」

「王都っていうぐらいだから大きいんだろうな。まあ先ずはギルドに行くのが先だな」


 王都のギルドにいるという、アレインさんのもう一人の娘「ミーア・リンダース」。

 アレインさんが何処まで話をしているかは分からないが、例え俺達が異世界人だということを話していたとしても、口止めはしてくれている事だろう。

 ふと前に視線をやると、フェイルムは直ぐそこまで迫っていた。

 流石王都と言うべきか、街の周りは壁に覆われ、街への入り口と思われる門には長蛇の列――とまではいかないが、それなりの列が出来ていた。

 と言っても何かトラブルがあった訳ではなく、これぐらいの列はよく出来るものらしい。

 そういえば、今日は日曜日か。

 因みにこの世界でも日曜日が休日というのは同じだ。

 暫くすると、列が進み門が近づいてくる。

 この列は街に入る為の検査によって出来ている列のようだ。

 俺達の番が回ってくると、門番が声を掛けてくる。


「何か身分証になる物を持っているか?」


 この世界では誰しもが身分証を持っているとは限らない。

 そういった場合、この場で簡易的な身分証を作ることが出来る。尤も、ギルドカードを持っている俺達には関係のない事だが。

 俺とユキは魔力を流したギルドカードを門番に見せる。


「こ、これは、Sランク冒険者の方々でしたか! 失礼しました! どうぞお通り下さい!」


 こんなに緊張する必要は無いと思うんだが……。

 そんな事を考えながら街へ入ると、街の中はとても活気があり、賑やかな事が街に入った直後でも伝わってきた。道路には馬車が行き交い、人の数はフィレストの比では無かった。


「さすが王都だな」

「大きさも全然違うね」


 馬車乗り場に着き、馬車を降りる。

 御者さんに礼を言いギルドへ向かう。

 因みにギルドの場所は御者さんに予め()いておいた。

 ユキと他愛のない会話をしつつギルドへ向かっていると、話の内容はいつの間にか泊まる宿の話になっていった。


「そういえば、宿はどうするの? 今回もギルドの宿?」

「いや、今回は普通に宿を取るつもりだよ」

「ギルドなら無料なのに?」

「……ユキ。俺達が今いくら持ってるか、知ってる?」

「えっと……最初の依頼で貰った金額が五〇〇万ガルンで、その後貰った炎神の化身を倒した報酬が四五〇〇万で……」


 そこで一度ユキは言葉を区切る。


「リウス……もしかして私達、今もの凄い大金を持ってるんじゃ……?」


 きっと今まではあまりに現実離れした額に実感が湧いていなかったのだろう。

 口にした事でようやく金額の大きさを理解したようだった。

 因みに俺はあまりに桁が違い過ぎる為、もはや考える事をやめていた。


「約五〇〇〇万。つまり節約して無料のギルドの宿を取る必要は?」

「……ない、ね」

「まあ幸いアイテムボックスのお陰で持ち運びに困る事も、盗まれる心配もないからな。で、ユキはどんな宿が良いとかあるか?」

「うーん……。どんな宿が良い、かぁ……」


 少し考える素振りを見せた後、ユキは何か思いついた様に顔を上げた。


「――あ! お風呂! お風呂のある宿が良い!」

「風呂か……」


 思えばこの世界に来てから湯船に浸かっていない。

 水道の整備は一部でしかされていない上、俺達の部屋にあったシャワー――もとい水とお湯を出す魔道具――は高価な物で、俺達の泊まる部屋にあったのは、その部屋が値段の高いスイートルームの様なものだったからだ。

 一般的には体を濡れタオルで拭く程度で、シャワーなんてものを使った事すらない人が普通に存在する。

 俺は普段からシャワーだけで済ませてしまう事が多かった為、この世界に来ても()して不便は感じなかったが、女性であるユキは違ったのだろう。


「そうだな。ギルドに着いたら風呂の付いてる宿があるか聞いてみるか」

「うん! あると良いなぁ」


 ユキの笑顔を見て、心なしか俺も久し振りの風呂が楽しみになっていた。

ここから少し緩〜い話が続きます。

というより2人をイチャイチャさせます。

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