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最強魔王の異世界放浪記  作者: 塩砂糖
第1章《異世界転移編》
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第13話『君達は一体、何者だ』

フィレスト編、そろそろ終わりです。

 ニーグ達と別れた後、俺は自分の姿が後ろから見えなくなるのを見計らい、装備を変えていた。

 変える装備はこの世界に来た時に着ていた鎧と剣だ。

 装備を変えた理由としては、敵の数が多い為大剣で薙ぎ払った方が早い、というものだ。

 別に鎧まで変える必要はなかったが、装備変更に登録されている装備一式を選んだ為、勝手に変わってしまっただけだ。


「ユキ、危ないから俺の後ろにいてくれ」

「え? 私も戦うよ!」

「いや、危ないのは主に俺の攻撃だ、な!」


 身の丈ほどもある大剣を横に薙ぐと、周囲にいた魔物が残らず吹き飛んでいった。


「わっ! 凄いね……」

「こういう時は脳筋な戦い方の方が早いからな。暫く俺に任せてくれ」

「……うん。分かった」


 それから数分。敵が来ては薙ぎ払い、森へ向かって走る。

 ただそれだけを繰り返している内に、森は目前まで迫って来ていた。

 森へ入り、スキルで敵の位置を探る。


「こりゃ多いな……」


 森の中心部、俺が炎神の化身を倒した辺りに一際強い気配を感じるが、それ以外はこれまでと変わらない弱い魔物の気配しかしない。

 兎に角、中心部に向かうか。

 だが森の中で大剣は……相性が悪いな。いや、どうせ枯れているのだし、切り拓いて行くか?


「リウス、森の中の戦闘は私に任せてくれない?」

「……そうだな。ここは任せるよ」

「うん!」


 なんか凄い気合入ってるな。やる気があるに越した事はないけどさ。

 ユキに戦闘を任せ、俺はユキが取りこぼした魔物を狩る事に専念した――かったのだが、ユキは一体も逃さずに残らず皆殺しにしていった。

 因みに魔物と魔獣の差は明確に決まっている。

 魔獣というのは、元は普通の動物だった物が、魔力によって凶暴化したものを指す。

 対して魔物は魔力が実体化したもので、魔力が存在する場所になら、あらゆる場所に現れると言われている。

 ユキに戦闘を任せ十数分。

 森の中心部に大分近づいてきた。


「そろそろだな」


 剣を構え敵に備える。

 見えてきたものは、大きな岩だった。


「これが、原因?」

「多分な」


 その証拠に、今もその岩の周りからは魔物が現れていた。

 なんか本当ゲームみたいだな。


「じゃあササっと壊すか」


 ただ壊す前にこれがなんなのか見ておくか。


【名前:炎神の遺物】

【レベル:151】

【性別:——】

【種族:——】


 炎神の……遺物? 炎神の化身と何か関係がありそうだが、そこまで分かる程このスキルも万能ではない。

 それにレベル151ってこの世界基準で言えば随分デタラメだ。

 まあ俺が言えた事じゃないんだが。

 んでステータスは――。


「え、なんだこれ」

「どうかしたの?」

「いや、こいつのステータスがな……」


 炎神の遺物とかいうこの大岩のステータスは、かなり偏っていた。

 異様な程高い物理防御力と魔法防御力。

 それに対して攻撃力やその他のHP、MPを除いた部分は全て1だった。

 防御力だけ見ればゲーム終了時の俺のステータスより高いだろう。

 今はこの装備のお陰で、なんとかダメージが与えられるレベルだが……。


「このままじゃ倒せないな」

「え? リウスでも倒せないの?」

「このままなら、な」


 より正確に言えば、倒すのに時間が掛かり過ぎるという意味なのだが、今はそんなことはどうでもいい。

 今の俺は【外見偽装】により全ステータスが20%程下がるペナルティを負っている。

 今ここにはユキと俺しかいない。姿を元に戻しても問題無いだろう。

 スキルを解除すると、身体に何かが満ちていくような感覚がした。

 恐らく下がっていたステータスが元に戻ったんだろう。


「久々だね。その格好」

「久々って言っても数日だけどな。でも俺もそんな気がするよ」


 ここ数日間があまりにも濃すぎて、この世界に来たのが大分前のように感じる。


「それじゃ、壊すか。ユキは少し離れた後、沸いてくる魔物を倒してくれ」

「うん。分かった」


 岩の前に立ち、剣を構える。

 高い防御力の所為で、生半可な攻撃は効きそうに無い。

 全力でやるしかないな。

 高く振り上げた剣を、岩に向かって振り下ろす。

 ステータスの高さと、剣の重量を合わせた俺の全力攻撃は、岩に弾かれること無くそれを2つに砕き、岩を砕き割った大剣はそのまま地面に叩きつけられた。

 爆音と共に巻き上がる土煙り。

 だが、【視覚保護】を発動していた俺には、地面に大きな亀裂が走っているのがはっきりと見えていた。

 これが所謂(いわゆる)デジャヴってやつだろうか。

 剣を軽く払い、土煙りを霧散させる。

 少し離れていたユキがこちらに近寄って来た。


「お疲れ様。それで……これ、どうするの?」


 眼前には真っ二つに大地を(わか)つかのように入った亀裂。

 この跡を他の冒険者に見られれば、炎神の化身を倒したのが俺だという事はすぐバレるだろう。

 二つに割れた炎神の遺物とかいうあの大岩は、跡形もなく消えていた。


「地魔法でどうにか出来ないか試してみるか」


 他の冒険者が集まるのも時間の問題だが、疲労している者が多かった。町に戻ってからすぐにここへ向かったとしても、到着はまだ先になる。そう思っていた。

 原因と思われる物を破壊し、少し油断していたのかも知れない。俺はスキルを使うのを忘れていた。


「二人とも! 大丈夫か⁉︎」


 後ろからニーグ達冒険者が近付いて来ていた事に、気付くことが出来なかった。


「2人とも無事だった……え?」


 まさに魔王といった姿の俺は、冒険者達の持つ小さな松明の光に照らされ、その姿を皆の前に晒していた。



 ◇◇◇◇◇



 俺は今、ユキと共にギルド奥にあるギルド長室の前に来ていた。

 何故俺達はここに呼び出されたのか。

 理由は聞かされていないが、おそらく原因は、一昨日の町の防衛任務の時、あの場を他の冒険者に見られたことだろう。



 ◇◇◇◇◇



「リウス……お前、魔族だったのか」

「あ、いや、これはな……」


 咄嗟に否定したものの、今更隠しても遅いよな……。


「……いや、それは今は置いておこう。それで原因は分かったのか?」


 あれ? あまり探られない?


「あ、ああ。魔物を召喚している大きな岩があった。もう破壊したから大丈夫だとは思う」

「そうか。……それがこの跡か」


 冒険者の意識は、俺よりも地面の跡に向いているようだった。


「まあ……そんなところだ」

「……」


 ニーグは少し俯き、何かを考えているような素振りを見せた後、こちらに向き直った。


「……そうか。取り敢えず、今は町に戻る事にしよう」

「あ、ああ」


 森を抜ける為歩き出したニーグ達の後ろに、俺とユキはついて行った。

 さり気なく角と翼を消し、装備も戻しておいたが。

 森を抜け、町へ向かって歩いていた時、意を決して俺はニーグに話し掛ける事にした。


「……俺が人間じゃない事に何も言わないんだな」

「魔族と人間が争っていたのはもう昔の事だ。それに、冒険者に魔族は多いからな」

「そうなのか?」

「ああ。まあ、魔族を毛嫌いしてる連中もいない訳じゃないが、な」


 何となくだが、この世界における魔人種の立ち位置が分かってきた気がした。

 それにこの世界では魔人種よりも魔族の呼び方が浸透しているようだ。

 まあ、言いやすいしな。


「それにしても、その角や翼を消したり、装備を変えたりするのも何かの魔法か?」

「ん、まあ、そんなところだ」

「魔族なら誰でも出来るのか?」

「それは……どうだろうな。俺も魔族に知り合いが多い訳じゃないんだ」


 というより一人も居ないんですが。


「そうか」


 取り敢えず納得してくれたようなので良しとしよう。


 それから暫くの沈黙。だが今度はニーグの方から話しかけてきた。

 それも、周りに聞こえないように小さな声で。


(リウス。炎神の化身を倒したのは、お前だろう?)

(……そうだと言ったら?)

(別にどうもしない。明日になれば直ぐにでもギルドの調査隊があの森の調査に入る。いずれバレるさ)

(やっぱりか……隠す方法とか無いか?)

(俺が言わなくとも他の冒険者が話すだろうからな。諦めろ)


 はあ。面倒な事にならなければ良いけど……。



 ◇◇◇◇◇



 ギルド長室は、ギルドの受付の奥にある階段から二階へ上ることで行くことが出来た。

 尤も、俺もユキもミュエさんに案内されて来たのだが。


「それでは、私はこれで失礼します」

「はい。ありがとうございました」


 案内を終えたミュエさんはそのまま一階へと戻って行った。

 一昨日の町防衛任務の翌日。

 朝からギルドの調査隊があの森へ向かった。

 俺達冒険者に公開された調査結果は次のようなものだった。


『森の調査結果。

 昨日(さくじつ)、町へ侵攻してきた魔物の大群。

 その発生源と思われるものは、森へ向かった冒険者により破壊された事が確認された。

 魔物の異常発生も現在は確認されていない。

 森で出現した『炎神の化身』との因果関係は目下調査中』


 とまあ、俺の攻撃の跡や、具体的に誰が破壊したのか、などの事柄は公表されなかった。

 まあ、その方がこちらとしては嬉しいのだが。

 まあ、閑話休題(それはさておき)

 今回呼び出されたのは、恐らくそれに関する事だろう。

 あの場を目撃した者がいる以上、ギルド長にもその話は伝わっているはず。

 さて、何処まで正直に答えるべきか……。


「何時までもここにいても仕方ないか……。ユキ、行くぞ」

「うん」


 木製のドアをノックすると、部屋の中からギルド長の声が聞こえてきた。


『入りたまえ』


 ギルド長室の中は思ったよりも狭かった。

 壁には本棚があり、少し見ただけでもかなりの数の本が置いてあった。

 部屋の中央には、テーブルを挟み、向かい合う形で2つのソファーが置いてある。

 ギルド長であるアレインさんは、その更に奥にある椅子に腰掛け、机の上には何かが書かれた紙が広がっていた。

 この体であれば覗こうと思えば覗き見ることも可能なのだが、流石にそれは止めておいた。


「座ってくれ」


 アレインさんに(うなが)され、俺とユキはソファーに腰掛けた。

 それに続き、アレインさんも向かいのソファーに座った。

 早速、本題に入る。


「それで、話とは何ですか?」

「幾つか要件はあるんだが……回りくどい言い方は好きでは無いのでな。単刀直入に行こう」


 一呼吸置いて、アレインさんが口を開いた。


「君達は一体、何者だ?」

目上の人からの呼び出しって疚しい事が無くても不安になりますよね。

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