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最強魔王の異世界放浪記  作者: 塩砂糖
第1章《異世界転移編》
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第9話『部屋に二つあるベッドの、もう片方のベットから天井を見ているような』

今回も短めです。

次回はもう少し長くなる、はず。

 炎神の化身討伐任務から今日で3日。

 ギルド内にある宿屋の一室で目を覚ました俺は、いつもと何かが違うような違和感を覚える。

 その違和感が何なのか。その答えはすぐに出た。

 俺の使っているベッドは、部屋の照明の丁度真下にある。

 普段であれば目を覚ました後、真っ先に目に入るのは、天井に設置された照明。

 だが、今見えている景色はそれとは少し違い、照明が少しだけ横にずれて見えた。

 そう。まるで、“部屋に二つあるベットの、もう片方のベッドから天井を見ているような”、そんな感じだ。

 何となく状況を把握しつつある俺に、答えを教えるかの様に声が横から聞こえてきた。


「んぅ......ん......」


 同じ部屋に泊まる彼女の声を聞き、俺の疑問は確信に変わる。

 確認の為、恐る恐る顔を声がした方向へ向けると、そこには、ユキが身体の触れ合うギリギリの距離で寝ていた。

 いや、足や腕は触れていた。

 というか手を繋いでいる。


 何故こうなった?


 思考を巡らせる為、目を閉じた俺の脳裏には、昨日と一昨日の記憶が蘇っていた。



 ◇◇◇◇◇



「今日もお疲れ様」

「うん。リウスもお疲れ様〜」


 炎神の化身討伐任務の翌日。

 俺とユキはギルド内にある食堂、もとい酒場に来ていた。

 今日から俺達は、この世界に関する情報収集を本格的に始めていた。

 今日受けた依頼は、町に来た商人の荷卸しの手伝いだった。

 本来なら低ランクの冒険者に向けた依頼なので、仕事を取ってしまう事になるのだが、まあ一回ぐらいは許してくれるはずだ。

 ゲームなどでは商人は物知りであることが多いが、本当かどうか正直半信半疑だった。が、商人が色々な事を知っているというのは本当だった。

 お互い初対面の為、町の噂程度までしか教えてはくれなかったが、この世界の常識を聞く分には十分だった。

 と言っても、常識を教えてくれと言えるはずもなく、それとなく聞く必要があった為、聞けたのはほんの少しだったが。

 今日聞けたのは、今滞在している町は『フェイルム』という国の領土内にあるという事。

 世界には八つ大陸があり、この大陸はフレイシア大陸という名前である事。

 この町から北に行くと、フェイルムの王都に行けるという事。

 今回分かったのはこれぐらいだ。

 聞けた事は少なかったが、何も知らない状態よりはマシだ。

 後、依頼を受けてから気付いた事だが、商人は色々な事を教えてくれるが、常識を教わるのには向いていない。

 正直、依頼を受ける前に気付くべきだったと思う。こちらが常識を知らない事を隠した上で、それとなく常識を聞くことの難しさに。


「明日はどうするの? また商人の依頼でも受ける?」


 頼んだ料理をつまみながら、ユキが話しかけてくる。

 因みに今日は2人ともお酒を飲んでいる。

 頼んだお酒は2人ともビールだ。

 ビール以外にも、ワインやウイスキーなどもあった。

 見聞きした事のない酒を飲むのも面白いのだが、未だ不明な事が多いこの世界で、知っている物があるというのはそれだけで嬉しいものだ。

 今後の些細な楽しみである。


「いや、明日は図書館に行ってみようかと思ってる。常識を調べるならそっちの方が効率良いだろうしな」

「じゃあ明日は依頼受けないの?」

「元々金に困ってる訳でも、休む事でペナルティがある訳でもないからな」

「それもそうだね」


 明日の予定を決めた俺とユキは、お酒と料理を楽しみながら、たわいのない会話をして夜を過ごした。



 ◇◇◇◇◇



 翌日。

 依頼を受けないという事もあり、前日より少し遅めの朝食を取った俺達は、少し寄り道をしつつ図書館を目指していた。


「あ、リウス。あのお店見ても良い?」

「ん? 良いぞ」


 ユキの指差す先には雑貨店があった。

 昼間にも関わらず、少し薄暗いその雑貨店は、初老のお婆さんが経営している店だった。


「いらっしゃい」

「こんにちは。お婆さん」

「はい、こんにちは。好きに見ていっておくれ」


 店の品揃えは、指輪やネックレスを始めとしたアクセサリーや、日用品に加え、何に使うか分からない道具なども置いてあった。


「なんかこういうお店ってワクワクするね」

「お、ユキもか。俺もこういう店好きなんだよな」


 なんか掘り出し物とかありそうでワクワクする。気分は宝探しだ。


「リウス、これどっちが良いかな?」


 暫く別々に並んだ商品を見ていたところ、ユキに声を掛けられた。

 店内を見て回っていたユキの手には、2つのブレスレットが握られていた。

 右手に握られていたのは、金色のチェーンに黄緑色の石が付いている物。

 左手に握られていたのは、銀と黒の2本のチェーンに水色の石が付いている物だった。


 少し話が逸れるが、女性の聞く『どっちの服が似合うかな?』などという質問は、大抵自分の中で答えが決まっている事が殆どであり、こちらの答えに関係無く、買う方は決まっているものと、勝手に偏見で俺はそう思っている。

 その為、そんな質問をされた日には、心底嫌な気分になるかと思っていたのだが……。

 ユキに似たような質問をされても、不思議と嫌な気はしなかった。

 なので俺は、純粋にユキに似合うと思う方を選ぶ事にした。


「金色の方かな。ユキには明るい色の方が似合う気がする」

「じゃあこれにしようかな。どっちにしようか迷ってたんだよね」

「二つとも買えば良いんじゃないのか?」

「こういうのは選んで貰った方を買うから意味があるんだよ」

「……? そういうものか?」


 そこら辺はよく分からないです。


「じゃあ買ってくるよ。ユキはちょっと待ってて」

「え? 良いの?」

「良いの? も何も、お金は二人で共有じゃないか」

「……そこは、「俺が買うよ」で良いんじゃないかな?」

「そう、なのか?」


 うーむ。難しいな。ユキの期待に完璧に応えられる様になるのは、まだ少し先になりそうだ。


 会計を済ませユキの元へ戻る。

 因みに金額は三〇〇ガルンでした。


「買ってきたけど、付けていくか?」

「うん。折角買ったんだし、付けていくよ」


 袋からブレスレットを取り出すと、ユキが左腕をこちらへ伸ばしてきた。

 取り出したブレスレットをユキの腕に付ける。

 流石にここまでされて分からない程、鈍感では無いですから。


「リウス、ありがとう」

「どういたしまして」


 今回はユキの期待に応えられたようだ。



 ◇◇◇◇◇



 途中雑貨店に寄り道はしたが、十二時前には目的の図書館に到着した。


「日本の図書館と比べると小さいね」

「王都とか大きい都市に行けば、また少し違うのかもな」


 図書館の大きさは、普通より少し大きい本屋といった感じの大きさで、図書館と言うより、学校の図書室という感じだ。

 図書館の中は、本棚と読書スペースがある、至って普通の内装だ。


「じゃあ色々読んでみるか」

「そうだね」


 そう言って俺とユキは本棚へと向かい、この世界について調べる事にした。

雑貨店って良いですよね。

居るだけで楽しいです。

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