第8.5話『望むのは調和』
今回は番外編的な位置付けなので短めです。
本編に直接関わっては来ないので、飛ばして頂いても構いません。
時は遡り、リウスとユキが森で再会を果たしていた頃、白く果て無き空間で、二つの人影が床に映し出された映像を覗き込んでいた。
一人は腰まで伸ばした長い金髪に、黒の瞳。着用している白装束から見える肌は白く美しかった。
もう一人は耳が隠れる程度の長さの黒髪に黒の瞳。着用している黒装束は、周囲が白い為、とても目立っていた。
両者の顔は性別の違いの為か決して似てはいなかったが、どちらの顔もまるで未確認生物でも見つけたかのような、驚きの色を示していた。
「まさか……これほどとは……」
金髪の女が口を開く。
「……信じられんな」
黒髪の男も声を上げる。
彼らが見ている映像には、黒い鎧を着た魔族の男と、軽装備の獣人の女が映っていた。
そして、その二人が立っている地面は、数十メートルに亘り亀裂が入っていた。
再び女が口を開く。
「これは……余りにも次元が違いますね……」
「……賭けではあったが、奴の近くに飛ばして正解だったな。ただ待つだけだったあの十年間が無駄にならずに済みそうだ」
「ええ、これならばもう心配は要らないのでは? 元より私たちに出来る事はありませんが……」
「……さあ、どうだろうな。向こうも何か考えがあるかもしれない。全てが上手くいくとは限らんだろう」
彼らはあくまでこうなれば良いと誘導しただけだ。
流石に彼らと雖も、未来を予知し、作り変える事は出来ない。
それは彼らの管轄外なのだから。
「そうね……油断は禁物よね。ねえ、もう一度あれ、出来ないかしら?」
「……もう一度? あまり干渉しては其れこそ均衡を崩しかねない。前回は運が良かっただけだ。これ以上は我々だけでは処理し切れないぞ」
「それは、分かっているけれど……」
「……それとも、前任者と同じ運命を辿りたいのか?」
「そうじゃないけど……何か奥の手を用意しておいた方が良いかなって思ったのよ」
「……何時だって我々は後手に回るしかなかった。先手を打って失敗するぐらいなら、後手に回って確実に処理した方が良いだろう」
「だから何も変わらないのよ」
「我々が望むのは調和だ。進展ではない」
「『停滞』の間違いじゃない?」
彼らの付き合いは長い。
が、根本的な考え方が全く違った。
だからといって、本気で衝突したりする事は無かったが。
「……危険を冒してまで進展する必要は無いと言ったんだ」
「何事にも危険は付き物よ」
「……だとしても今は無理だ。度重なる干渉で不安定な状態が続いている。転移が全て上手くいったのは奇跡だという事は分かっているな?」
「……分かってるわよ。やっぱり今は、何も出来ないのね」
今のこの状態は、無数の奇跡に上に成り立っていると言っても過言ではない。
これ以上望むのは罰当たりというものだ。
尤も、彼らに罰を与える事が出来る者などいないのだが。
「それにしても一撃とは驚きですね……」
「……ああ、予想外だな」
「逆に均衡を崩す事にならないかしら?」
「……そんな先の事を考えるより、今起きている問題を解決するのが先だ。均衡は我々が保つしかない。それとも、何もかも人間に丸投げする気か?」
「そうね……それは私達のやるべき事ね」
彼女の決意に応えることなく、静かに男はその場から消えていった。
その場に一人残された彼女のため息を聞いた者はいなかった。
そう言えば、累計1000PV突破しました。
これからもよろしくお願いします。




