プロローグ
初投稿です。
物語を書くのは初めてですので、拙い部分も多々あるかと思いますが、生暖かい目で見守って頂ければと思います。
「こんにちは。こちらの声が聞こえていますか?」
気が付いた時には、俺はそこにいた。
何処までも真っ白で、果てが見えない空間。でも少し暖かくて、不思議と恐怖は感じなかった。
そこには俺以外に、光が人の形を模った『なにか』が2つあった。
人のシルエットの黒い部分を白くしたらこうなるんじゃないかと、そんな事を考えていると、再び人型の光から声が聞こえてきた。
「あれ? 聞こえていませんか?」
「……上手く行かなかったのか?」
「これほど強力だと、やはり難しいのかしら?」
なにやら話しているが、聞こえているので返事をした方が良さそうだ。
「あ、いえ、聞こえています」
「あっ、よかったぁ。無事成功ですね」
「......聞こえていたならさっさと返事をしろ」
「......すいません」
すぐ返事をしなかった俺も悪いが、その言い方は少し腹が立つ。
光は人の形をしているだけで、性別は分からないが、声を聞いたところ、男性と女性がいるようだ。
言わなくても分かると思うが、口の悪い方が男だ。
「こら、無理矢理連れてきた上、その口の利き方は何ですか? 私たちはこの方々に頼るしかないんですよ?」
「......ふん、分かっている」
既に俺の中で、女性=いい人、男=嫌な奴、という式が出来上がってしまっているが、一先ずそれは置いておき、疑問に思っていたことを尋ねる。
「ここは何処ですか?」
「......それはお前が知る必要の――」
「そうですね。……ざる……達の……所。とでもいいましょうか」
「......何故答える」
「何か不都合ですか? どうせ忘れてしまうんです。教えても問題はないでしょう?」
「......それはそうだが」
......もしかしたら、男の方もそれなりに苦労しているのかもしれない。
だからといって、俺の中の印象が変わるわけではないが。
「つまり、……?」
「はい、そう捉えて頂いて結構ですよ」
「......おい、ここに留め続けるのにも限界がある。無駄話をしている暇はない」
どうやら此処には長い間留まることは出来ないらしい。
「そうですね。では手短にいきましょう」
コホンと咳払いをしてから、女性が話し始める。
「貴方にはこれから……に行って頂きます。そこで……を……欲しいのです」
「......我々では出来ないことだ。失敗すれば……になる」
話が壮大すぎて理解出来ないが、拒絶する気は、何故か起きなかった。
(......でもさっき、忘れるとか言ってなかったか?)
「貴方の疑問はもっともです。ですが、無意味と分かっていても、しなければならない、伝えなければならない。それほど切羽詰っているのです」
俺の思考を先読みしたのか、はたまた顔に出ていたのかは分からないが、こちらが聞く前に疑問に答えてくれた。
そんな事を考えていると、視界が段々と暗くなり始めた。
「そろそろ時間のようですね。それでは……を宜しくお願い致します」
「......頼んだぞ」
人にものを頼む事が出来るのか。などと場違いな事を考えている間にも、俺の意識は遠のいていく。
「頑張って下さい。……」
意識の途切れる寸前に聞こえてきた声を、俺は最後まで聞き取ることが出来なかった。
◇◇◇◇◇
先程までいた男が消えてから女性が口を開いた。
「行きましたね」
「......ああ」
「彼で最後ですか?」
「......そうだ」
「上手くいくと良いですね」
「......これまでも二度、成功ではないが、時間稼ぎは出来ている。最低でも時間稼ぎは出来るだろう」
「それでは解決しないでしょう?」
「......そんな事を言っても、俺たちに出来ることはもう何もない。あとは成功を祈るだけだ」
「ふふっ、……が祈る。ですか」
「......喧しい」
何処までも真っ白な空間で、女の小さな笑い声だけが、ただただ、響いていた。
実はこの人たち、あまり物語には絡まないです。