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三話
彼女の日常と彼女を縛るもの。
何時ものように起きたら午前八時前。余りにどうでもいい、どうしようもない夢を見て飛び起きた。
夢にしてはあまりに生々しくて、具体性を無くしかけていた頃には冴えた色の夢。
今日もそれなりに用事がある(大学だけれど)ごく普通の1日が始まる。着替えて、身支度をして、ご飯を食べて、忘れ物が無いか確認して、家を出る。
一限は丸ごと空けてある。特に何も無いけれど、やることは沢山ある。それ相応の時間も。
白黒のコンバース(要はバッシュ)の靴ひもがほどけていたから、座り込んで結び直す。小さい頃は出来なかった事が、今では日常生活として当たり前に出来る。なんて素晴らしき我が人生。
リボン結びの出来が微妙にいびつなのは、気にしないで欲しい所。気を取り直して、すっくと立ち上がる。
携帯にメールは来ていない。
今日は首輪の無い私。切手を買い人に紛れて、そのまま電車に滑り込む。
見回しても席は埋まっていたから、脇の手すりを持ってイヤホンをした。聞き慣れた音楽が流れ始める。
車窓から眺める田園風景は限り無く平和で、尊いものに感じられた。