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商人がいるんですけど?

「まず、オレについてだが、指摘の通りあんたの居た世界からの転生者だ」少年は語り始めた。

「ふむ」

「オレは純粋な戦闘要員じゃなかったから、あのとき、足手まといになるのを避けて馬車の荷台に腰かけて煙草を吸っていたんだ。戦士のヤツがあんたと剣を打ち鳴らしたとき、ああ、始まったんだな、って思ったよ。オレにできることは、もうこれっぽちも残ってなかった。せいぜい、仲間の帰りを待つくらいだ。もう何本目かの煙草を地面に捨てて、ずいぶんと長いこと戦ってるもんだな、と感じた。戦士のヤツはちょっと猪突猛進でバカな部分こそあったが、超一流の剣士だった。あいつがそれほど苦労するなんて。武闘家のねーちゃんも一緒に前線を張ってるはずだったから、二対一でも大変だなんて相当なもんだ。あそこに行くまであんたの部下たちとも戦ったから、もちろん万全とまでは行かなかっただろうが。それに武闘家のねーちゃん、最高にいい太ももしてたんだな。胸も大きくて、戦士のヤツと、胸と太ももどっちがいいか、よく話したもんだった……」少年は大切な思い出を懐かしむように、遠い目をして空を見上げた。路地裏の切れ目から青い空がのぞき、うっすらと雲が流れていた。こほん、と魔王が咳ばらいをした。

「それで、賢者というか、魔法使いというか、あいつが得意の火炎魔法でも放ったんだろうな、入り口から熱風が吹き荒れたんだ。それから少しして、紫の、禍々しい炎が立ち上った。出来ることなんか無いとはいえ、流石に心配になったんだ。オレは吸いさしの煙草を投げ捨てると、馬車を飛び降りてあいつらがいる場所に走っていったんだ。そこではあんたと勇者が戦っていた。いや、戦っているというよりか、踊っているような感じだった。オレは、痺れるようなあの舞の緊迫感に、あんた達が繰り出すあの剣の美しさに魅入ってしまったんだ。どれだけ時間がたったかは分からない。やがて、あんたが負けた。そして、光があの部屋を満たして……。それが俺の覚えている全てだ。それから、この世界で目覚めたんだ。持っていたスキルは全部失くしていた。商人が持っている『鑑定』と、ユニークスキル以外は。どれだけスキルを取ろうとしても駄目だったよ。この世界のルールがあるんだろうな……。あのときいた他の奴らの行方は知らない。どこか別の世界に飛ばされたか、それとも死んじまったか。もしかしたら、またあいつらと会えたらな、なんて思っているけど、オレはこの世界に生まれてからも、普通に楽しく生きてきて、時々、あの世界でのことは夢なんじゃないかって思うときがあるんだよ。だって、何もかもこの世界と違うから。だけど、このよく分からない『スキル』っていう能力の存在がそれを否定する。それであいつらが嘘じゃなかったって、ようやく分かるんだ。ずっと一人で、怖かったんだ。何もかも、忘れてしまいそうで」少年はそういって俯いた。魔王は、それを黙って聞いていた。


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