第2話 小さな錬金術師の誕生
「ふむ、基礎知識はなし、ということか」
「流石に生まれたばかりなんだから、知識まであったらびっくりだよぉ」
まって、どこら辺が基礎知識なのさ。人造人間の創り方なんて、専門用語ばっかり出てきそうなもんじゃん。
「はぁ・・・俺はどうしたらいいのさ。人造人間とか聞いてない」
「面白いこと言うなぁ、お前」
瞳をきらきらと輝かせ、若干バカにしたように言う。
「ちっちゃい割に生意気な口きくのな。小さい時からそんなんだと、貰い手つかなくなるぞ?
女の子はしたたかじゃないとね」
「それは、私も同意だな。もう少し、女らしくしてほしいものよ」
言い方にイラッと来て、つい暴言を吐いたが、乗ってくるとは思わなかったよ。クリュウ先生。
「二人して、なんなのさ!! 私は、まだまだ、これからが成長期なの!
っていうか、創生者の私に暴言吐くとはいい度胸じゃないの!」
そういうと、二言、三言何か呟くと、俺のほうに手のひらを向ける。
「何してんの?」
「「な、なにっ!?」」
二人の驚愕の声が混じる。
「な、何かそんな驚くことしたか?」
身に覚えがなさ過ぎて怖いんだけど。
「懲罰魔法が効かない!?」
「懲罰魔法??」
「懲罰魔法とは、人造人間を飼いならすために生まれた魔法の一つだ。
それがお前には効かない。人造人間であれば、必ず、効くはずなのだが・・・」
腕を組み、クリュウ先生は考え始める。
「やはり、少し検査をしようか。これは興味をそそられる・・・」
唇をぺろりとなめ、懐から、なにやら、怪しげな棒を出す。
「錬成、ナイフ」
と、短くつぶやき、棒の先端が鋭い刃に変わり、俺のほうへと向かってくる。
「ちょ、ちょっと、クリュウ先生、そ、それは、死にませんか?
俺、殺されたくないです。あの、まだ、生きていたいです」
両手を挙げ、後ずさりしながら、リルムに視線を送り、助けを求める。
「ちょっとまった!!
私の人造人間だよ!? 勝手に殺させると、私が困る!」
「だよなっ、俺が死んだら、余計に観察できなくなるんだからな。
俺、なんかよくわかんないけど、来たばっかのところで殺されたくないよ!?
俺がいなくなったら絶対に後悔するぜ? いいのか?」
「もう少し、マシな命乞いはなかったのか・・・?
それだけの知識を持ちながら、すごく残念な奴だな」
殺るきをなくしたのか、その棒のようなものは元の形に戻り、クリュウ先生の懐に収まる。
「・・・仕方ない。リルムの好きにするがいい。
試験も合格。お前には、錬金術師の称号がもらえるよう、手配しておく。
だがしかし、この異例の人造人間は上に報告しなければならない。
どうなるかは、分からないが、それまでは、人造人間であることも隠しておけ。何があるかわからないからな」
「分かった!」
顔をニマニマとさせながら、錬金術師っ♪ と呟いている、リルム。
「リルム、クリュウ先生の話聞いていた?
ものすごーく大事そうなこと言ってたぞ?」
「ふふーん♪」
・・・聞いてないな。
二つの大きなため息が、目の前にいる、リルムに聞こえることはなかった。