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第1話 俺って何ですか

 

 ___何もいらない。






 〝・・・はあ?”


 その答えに、気の抜けた声を出すソレ。


 〝なんでも、なぁーんでも、手に入るんだよ? 富も名声も力も。なんでもいいんだ。

 ・・・本当に何もいらないのか?”


 ___いらない。寧ろ、もう何もしたくない。


 〝・・・っぷ、ぎゃははははっ。アンタ最高!! 私、アンタみたいなの好きだわ! 気に入った!”


 ソレは、好きなだけ笑い転げると、こう言った。


 〝ふぅー、腹が痛い。ここに来た奴は、素直に己の欲望を言ってくるのだが・・・アンタの様に、何も欲のない奴はお前で二人目だ。

 しかも、それが本心と起きた。よし、決めた。アンタにする!”



 何もなかった真っ黒な闇の中に、ポツリポツリと光があふれだし、水が、湖ができ、海ができ、草木が生え、生命が誕生し、生物が次々と誕生していく。



 真っ黒だったこの空間が、消えていく。



 〝・・・すごいだろう? こうやって、生命は誕生するんだ。

 どうだい? 少しは興味が持てたかな?”


 ____興味は持てるが・・・


 〝ま、考えを変えようってのは難しいか。私に任せなさいな。これから、よろしく頼むよ?

 私の大事なピースよ”


 ソレの姿を見ようとしたその瞬間、再び闇に包まれた。








 気が付くと、水の中だった。

 口を開けると、こぽこぽと空気が流れ出る。慌てて口を押えるがあまり苦しくはない。

 ただ、何本ものチューブでつながれ、身動きは取りにくい。

 手を前に伸ばすと、何かに手が当たる。たぶんガラスだ。よくよく見てみると、何かデスクのようなものがある。


 ・・・一体、ここは?


 周りを見渡していると、どんと、鈍い音がする。

 小さな少女が、顔を近づけて、こちらを覗いている。


 なんだろうか・・・?


 ぱたぱたとあちこち走り回っている少女。それからしばらくすると、体から、チューブがとれ、下のほうに吸い取られていく。そして、だんだんと水が抜けていく。顔が水中から出て、息をしようとすると、うまくできなくてむせる。

 完全に水が抜けガラスだと思っていたものが、すっと消える。


「なんだ、これ?」


  自分の体を見るとあることに気が付いた。


「・・・!?」


 俺服着てないじゃん!!


「あ、あの、服をくれないか・・・?」


 とりあえず、ブツが見えないように後ろを向く。

 が、特に動く様子もなく、妖艶な雰囲気を醸し出している女性とさっき覗いていた小柄な可愛らしい少女が話し込んでいる。


「・・・お願いだから、放置しないでくれ」


 なんなんだ、放置プレイか!? 俺にそんな趣味はない。お願いだから服をくれ。


「お取込み中悪いんだが、着るものをくれ!!」


 何で、こんなことになってんだよ。意味わかんね。アイツ今度会ったらマジでシメる。俺は、何もいらないって言ったのに・・・


「#$%$&・・・??」


 ん・・・? なんて言ってるんだ? 妖艶な方の女性が驚いた顔をしているのはわかるが・・・?


「&$$%##&$!!」


 小柄の少女は、ジャンプしながら喜んでいる。

 なんだっていうんだよ。マジで。もう、無理。俺自害してもいい?恥ずかして死にそう。むしろ死なせてください。

 しかも、言葉通じないってどういうことだよ・・・少なくとも日本語ではないし、英語でもない。何語だよ。マジここ何処だよ。平穏な世界が俺はほしかったよ。全裸で女の子の前に現れるとかそんな露出狂みたいになりたくはなかったんだが。

 アイツ絶対許さん。


 そんなことを思っていると、白い布が俺のほうに飛んでくる。反射的につかんでみると、ちゃんとしたとは言いにくいが、服だった。


 なんとか服を着ると、妖艶な女性に強引に手を引かれて部屋の奥まで行く。周りを見ると、俺の入っていたカプセルみたいなのにいろんな形の生き物が入っている。馬らしきものやカエルらしきもの、ねずみらしきもの・・・俺の知っているものとは違う生き物がいっぱいだった。


 奥の部屋に入ると、妖艶な女性は、うきうきとしながら俺を部屋の中心に残し、がちゃんと重い音を立てて扉を閉めた。


「・・・囚人にでもなった気分だな」


 一面驚きの白さだ。床に壁。ベッド、トイレ、俺の服。全て真っ白だ。


「なんなんだ、一体・・・」


 しばらく歩いてみたが、やることもなければ、考えるだけの材料もない。アイツも現れない。だれも説明なんかしてくれない。


「寝るか。明日になれば、何もかも消えてなくなってるさ」


 そう暗示をかけるように目を閉じる。







 〝やぁ、第二の人生楽しんでる??”


 ・・・お前のせいでとんでもないことになってるよ。俺は何もいらないといったはずだが?


 〝そんなこといわないでよ~。私なりのささやかなプレゼントなんだから”


 あ? マジでふざけんな。一回ボコらせろ。


 〝ごめんってぇ! アンタ、あの子に似てたから、面白そうだったんだもの”


 何も悪気はなさそうだが?


 〝後悔はしてないからね”


 イラッとくる言い方だな。はぁ・・・俺、行きたくないんだけど。天国なりなんなり行かせてくれないかな。ここではないどこかに。


 〝そんなこといわないでよ~ 第二の人生楽しんでみたらどう? 少しでも私の暇をつぶしておくれよ。それで死ぬんなら何も言わないからさ”


 じゃあ、ちょっとビルの屋上にいってくるよ。


 〝自殺は許さないよっ!?”


 俺は生きたくないっていってんだろ?

 何も要らないんだよ。


 〝ま、そんなことは置いておいてさ、そろそろ、本題に入るよ”


 俺からするとこれより大切なことはないんだが。


〝言語に関しては予想もしていなかったからねぇ。

 言語が通じないんじゃ面白くない。どうせ、アンタが四苦八苦しながら勉強なんてしないだろうし。

 ってことで、言語が通じるようにしとくよ”


 そういった瞬間おでこの辺りをすっと何かが通る。


〝これで大丈夫なはずだよ”


 おもちゃで遊ぶ子供のように無邪気に言うソレ。


〝それからもうひとつ。自殺なんて、バカみたいなこと考えないこと。

 そんなことしようもんなら、私が助けに行くから。死なせないよ?”


 本当なのか、嘘なのかわからないような口調で言う。

 おもちゃだったら他あたれよな。俺よりも面白いおもちゃはたくさんいるはずだろう?


〝だって、なかなかここに来れる人はいないんだ。

 何かしらの強い気持ちがなければ、ここに来れるわけがない。

 つまり、欲がない君には縁のない場所なんだよ。こんなおもちゃ、なかなかお目にかけれないのさ。

 アンタが久々の訪問者だしね。私がこの時をどれだけ待ち望んでいたか・・・”


 そんな興奮したように話されてもねぇ・・・


〝んじゃ、私はそろそろ行くよ。

 私も忙しいんだ。新しい世界を作ったから、いろいろ手続きが残ってるんだ”


 手続き!?家買ったわけじゃあるまいし。

 っていうか、帰るなよ!


〝じゃあ、その世界はアンタに任せるよ。

 私はそこら辺から見守っておくから。第二の人生楽しみたまえ”


 ちょっと、待てよ!!

 そう止めることもできずに、視界がまた暗くなっていく。




 目を開けると、小さな少女が、俺の顔を除いていた。


「うわっ!」


 そう叫んだ瞬間、小さな少女は、すっと俺から遠のく。


「意識が戻った・・・!」


「おぉ!マジで言語が分かるようになってる!!」


 これは、ちょっと感動。すご。意味わかんない英語みたいな感じだったのに・・・


「・・・!? しゃべれるようになってる・・・?」


 俺の言葉も通じてるのか??

 猫のように吊り上がった目のまんまるい瞳がじーっとこっちを見ている。


「・・・そう、みられてると、どうしたらいいかわかんないんだが。

 とりあえず、この状況説明してくれると、嬉しいな」


 居心地の悪さを感じながら、苦笑いでそう質問してみる。


「ふむふむ・・・それなりの知識もあるんだね!

 やっぱり、私、やればできる子!」


 何も説明してくれない・・・

 俺さ、放置プレイ好きじゃないんです。誰か理解してください。お願いします。


 くるくると俺のベットの周りを飛び回っている少女を横目にため息をつく。

 と、がちゃんと重い扉の開く音が聞こえる。


「やぁ、目が覚めたようだね。リルム、様子はどうだい?」


 扉の先には、妖艶な雰囲気を醸しだいているあのお姉さまがいらっしゃる。


「それがね、言葉が通じるの! 私、天才かもしれない!」


 見事などや顔を見せる、リルムという少女。

 天才というにはほど遠い言動だが、そこは突っ込まないでおこう。


「それは、驚いたな」


 表情は変えずにこっちにカツカツと音を立てながら歩いてくる様は食べられるんじゃないかぐらいの恐怖だ。

 そう、肉体的な意味で。


「!?」


 俺の顎が、色っぽいお姉さまにくいっと持ち上げられる。

 こ、これが顎クイというものですか。できれば俺がしたかった。うん。


「や、やめてくれませんかね。顔がすごく近いのと、色々状況を整理したいので」


「ほう、これはなかなか面白い。合格だな。お前を錬金術師として認めよう」


 なんでぇー!? なんで、俺の話は誰も聞いてくれないの? ねぇ!? 人間としての権利とかないんですか!!

 錬金術師ってなんだよっ。金髪の少年と鎧が旅するお話なの?


「よぉっし。お前の名前は何にしようかなぁ・・・」


「何にしようって、そんなペットのように言われてもなぁ・・・

 俺にはちゃんとした名前があるんだよ。橘風貴たちばなふうきっていう名前がな」


 目を輝かせて言うリルムにため息交じりに言う。


「なにっ、クリュウ先生、こいつ、自我がありすぎない?」


「そうだな。少なくとも、自分の名前を言える人造人間ホムンクルスなど存在しないと思っていったが・・・これは、研究しなおすべきかもしれんな」


 クリュウ先生と呼ばれた妖艶なお姉さまは、俺の周りをぐるぐると回り始める。


「・・・お願いだから、話を聞いてくれないか」


 ため息交じりにクリュウ先生と呼ばれた人の顔を見て言う。


「ほう、面白い。話を聞こう」


 やっと聞いてくれるぅぅぅぅぅ! きたぁぁぁぁ!


「まず、これはどういう状況だ?」


「ふむ、簡単に言えば、君は創られたのだよ。そこにいるちんちくりんにな」


「ちんちくりんゆーなぁっ!!」


 クリュウ先生に指をさされた、ちんちくりんもとい、リルムは子供の様にほっぺたを膨らまして抗議してくる。


「創られた??」


「そうだ。これまでにない調合方法で編み出された遺伝子に脳に基礎知識が付くようにプログラムし、それをさらに、ミルの涙で浸し、温度を一定に保ち・・・」


「ちょ、ちょっと待った!

 つ、つまり簡単に言うとどういうことだ?」


 ペラペラと意味の分からない単語を並べ始めたところで突っ込む。


「・・・君は、人造人間ホムンクルスだ。そこのちんちくりんが編み出した調合方法で、君を創り出したのさ」


「・・・は?」


 やっぱりこの世界は意味が分からない。もう、俺の口癖、意味わかんないにしよ。それがいい。





 そんな感じで、俺の第二の人生が始まるようです。


お久しぶりです。消滅していません。忙しいだけです。

ごめんなさい。言い訳はしないです><

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