第一話 第六部 侵入、発見。
「こちら、アルフレイヤ。不審な入口を発見したため、侵入いたします。」
「なに? 見つけたの? だとしたら無理に行かないで。場合によっては命の危険性もある。それにジャルミーはどうしているの?」
「現在入口付近にて待機、入っていく人がいないかどうかを確認しています。」
「ということはすでに侵入しているの?」
「そういうことだ。透明明細機能を使っているからなんとかなるはずだ。」
アルフレイヤが侵入行動を開始した。まさかこういう形で動き始めるとは。何か起こってはほしくないと思っていたが、起こってしまった。だとしてもこれが何かの手がかりになるのであれば、大きな動きが出てくると思われる。とにかく俺は事件が起こらないように人を観察し、事前に事件を防いでいかなければ。
「こちらです。」
「どもども。」
俺の隣を二人の男性が歩いていた。何か一人の男性の様子が変だった。何か過去にあったのではないかと思うぐらいに、嫌な感じがした。いや、今でも何か起こりそうな気がする。
「リーナ、すこし気になる人を見つけた。あの帽子をかぶった人の後をつける。」
「え、ちょっと。…まああなたの勘は当たることがあるからね。ついていくわ。」
俺はスタスタとあの二人をついていく。回りを警戒しているような様子は全くない。回りから見れば普通の人に見えるが、俺から見ればどうも変な感じにしか見えない。恐らく頭の中では何か色々と駆け巡っているに違いない。そして男たちはジャルミーのいるドアまで来た。
「ちょっと失礼。」
「すみません、どちらのもので?」
「UFW科学のものです。」
「確認しました。どうぞ。」
ジャルミーは男二人を通した。続いて俺たちが到着する。そしてリーナがジャルミーに問いかけた。
「なぜ通したの?」
「通行書を確認した。念のために眼鏡で顔認証をしておいたよ。」
「まだアルフレイヤが中にいるのでは。」
「現在透明コートを使用して移動しているわ。場合によっては何か情報を聞き出せるかもしれない。」
その言葉を聞いて頭のなかで不安が募ってきた。あの人はもしかすると危険な人物かもしれない。もしなにかをしてしまい、男の脳を刺激させてしまったら。アルフレイヤが危ない状況にいるということに気づいていれば。
「アルフレイヤ、そちらに二人の男が侵入したわ。大丈夫?」
「ああ、音声録音機能をつけておいた。透明もしっかり機能しているぞ。」
コツコツといった音がイヤホンから聞こえてくる。アルフレイヤの音声機能と同期させていると二人の足音が聞こえてくる。アルフレイヤは聞こえないように文字を打っている。
『二人の男が入ってきた。何やらパソコンを開いている。』
音声だけで何が起こっているのかがわかる。きっとそのパソコンの中に大事なものがあるはずだ。
「魔力を供給するために更なる効率を高めるために、このような製品を開発しようと思っております。CGになりますがこのようになります。」
「なんだこれは……ひどすぎる。気分が悪くなる…。」
何が映し出されているのだろうか。とてつもなく嫌な声がアルフレイヤから聞こえてきた。
『すみません、離脱します。』
アルフレイヤから離脱の文字が打たれた。後は気づかれずに戻るだけだ。
「(やばい…マジで…。)うぉぇええっ。」
「誰だ!?」
アルフレイヤが吐いた!? 何があった。しかもその声で感知されてしまったようだった。
「アルフレイヤ、逃げて!」
ジャルミーが声をかける。アルフレイヤが急いで走り出す音が聞こえてきた。ヤバい、何が起こっている。
バン!! バン!!
「ぐっ!」
発砲された音まで聞こえてきた。まさかアルフレイヤが撃たれた!? まずい、かなりヤバイ状況になっている。
「リーナ!」
「急いで他の警備に連絡を!!」
「私、助けに行きます!!」
「ダメだ! 今行ってはいけない!!」
「でもアルフレイヤが!」
「こういうとき、人間はかなり神経を尖らせている。この状況で、しかも狭い通路だと思われる場所で無事に助けるのは正直厳しい。他の出口から出た後に助けなければお前まで襲われる。」
俺だって助けたい。だけどこういうときの人間は何をするか分からない。もしかすると仲間だって呼んでいるかもしれない。しかも今は連絡が途絶えている状況だ。おそらく撃たれたときに破壊されたのだろう。ならアルフレイヤも怪我を負っている可能性がある。ゆっくりしている場合でもない。なんとかしなければ。