プロローグ
「それじゃあこれ、配達お願いね。一つは重要書類、もう一つはチケットになっているから、決して無くさないように。」
「了解。」
腹のバックに手紙を入れ、背中の翼を大きく広げると力強く上へと飛び上がった。浮かぶ島はいつ見ても不思議な感覚がする。そして下に誰もいないことを確認すると小さくたたみ、急降下していく。ここからシノメイメン国を経由してメルジ国へと行くなら…20分はかかるだろう。風を切る音が速度を増すたびに大きくなる。そして急降下していくと大きな音が一つ増えていた。横を向くと隣にいつもの仕事仲間がいた。
「やあリザシア、元気にしているか?」
「どうもアゼさん。元気にしていますよ。今日はどちらまで?」
「シジリ国へ。この宅配物を届けに行かなくてね。」
アゼさんは背中の大きな荷物を見せるように体を動かす。体長5分の1ほどの長さはある荷物を積んでいた。いかにも重そうな荷物だ。
「そうでしたか。もしよろしかったらお仕事終わった後に食事行きませんか?」
「おー! 久々だな。それじゃあまた後で連絡するからな。」
「はい、お気をつけて!」
アゼさんは方向転換して自分とは別の方向へと向かっていった。そのまま急降下していくとビルが近くになってきた。すぐに翼を広げ、届けるべき場所へと移動していく。WPP本部はあのマークが目印。ビルの屋上で受け付けてくれる。近づいていくと係の人が立っていた。
「こっち! 降りていいぞ!」
地面に着地するとバックから紙を取り出す。
「ただいま届けにきました。こちらで間違いないでしょうか?」
「確認します…。はい、問題ありません。ご苦労様でした。」
「いえ、ではこれで。」
すぐに足に力を入れて大きく上へと飛び立つ。次は個人の家だ。マンションだから一度エントランスまで行かなければ。名前は…シンヤ・ツキカゼか。
「リーナさん、資料が届きました。」
「どうも。…これはあのイベントのね。構造図は…。よし、レヴィ!」
「ん? どうしたんだリーナ。」
俺はほっぺにアメを含みながら返事を返した。
「はぁ…。」
リーナは俺の顔を見るなりため息をついた。どうして俺の顔を見てため息をつくのだろうか。俺は何か悪いことをしているのか?
「そろそろ職場でお菓子を食べるのはやめていただけますか?」
「ああ、それぐらい許してくれよ。」
「いけないことはいけないのです。それより重要事項です。今度の調査に関してです。」
「ほいほい。」
ガリッ
すぐにアメを噛み砕いて飲み干す。調査に関してか…今度は何を担当するのだろうか。
「さてと。」
もう一度地面にゆっくりと着地するとエントランスへと入っていく。この時間ならすでにいるはずだろう。
ピンポーン
部屋の番号を間違えていないかをしっかりと確認しながらインターホンを押す。すると声が聞こえてきた。
「はい。」
「チケットをお届けにきました。」
「あ、了解です!」
男は嬉しそうな声でエントランスのドアを開けてくれた。階段を使い、三階へと上っていく。そして部屋の近くに着くと向こうからドアをあけてきた。
「待っていました!」
「ただいまお届けに来ました。こちらにサインお願いします。」
「はい、了解です。」
男はサインをしてくれた。そして品を受け取るとウキウキ気分で部屋へと戻っていった。そんなに楽しみにしていたものなのかな。
「さってと。」
俺はすぐに受け取った箱を開けた。目の前には三枚のチケット、自分が楽しみに待っていた…人類電子機器エキスポのチケット!