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合成清酒  作者: 初菜
合成清酒九
88/89

八十七升目。みんな集まる2

墓参りのあと{閑古}を訪れたアキ、信子、道満。

食事中アキの、幸太が遺したアキの携帯に着信があった。


画面の名前を確認して少し戸惑ったあと、

ゆっくりと通話ボタンを押す。

「も、もしもし・・・・・・」

おどおどと声を出す。


信子と道満は手を止め静かにアキを見守っていた。


「アキちゃん。大丈夫?あ、えっと。

今話しても大丈夫っていうか、あのさ、えっと・・・・・・」

不器用な優しさが通話越しに伝わる。滝口の声だ。


「ちょっとあんた貸しなさいよ。あんたじゃ折角出てくれたのに切られちゃうわ」

横からするキリッとした声は理穂。


携帯を取り合うやりとりが伝わってくる。

思わずアキはクスリと笑う。


少しして、

「アキちゃん、どうだい?そっちは」

落ち着いた声。栄子だ。

どうやら誰が話をするか決まったようだ。


「栄子さん・・・・・・」

思わず涙ぐむ。

「えっとこっちは、ですね。えっと・・・・・・」

「ゆっくりでいいよ、ゆっくりで」

「・・・・・・はい」

涙をぬぐい深呼吸。

「アキちゃん」

「はい」

「電話に出てくれてありがとう」

アキは無言で頭を振る。

それを察したかのように穏やかに言葉を続ける栄子。

「今あたし達、滝口の船にいるのよ」

クスクスと笑いながら、

「滝口がね理穂に借りができちゃって。それで一日クルーズしてるの」

「クルーズ、ですか」

「うん、クルーズ。滝口が船出して魚釣って料理作ってお酒運んで。

すごく快適。あたしとオーナーは便乗してるんだけど」

いたずらっぽく笑う。

「あはは、楽しそうですね」

思わずつられてアキも笑う。

アキの笑い声をしっかりと聞き、

「そっちは、良さそうね」

顔が思い浮かぶ優しい声。

「はい」

しっかりとこたえる。

「こっちは今大変だけど」

今度は少し大きな声でケラケラ笑う栄子。

少し離れたところから滝口、理穂が騒いでるところへ、

オーナーが割って入る声が聞える。

「あはははは」

アキも思わず大きめの声で笑ってしまい道満に軽く頭を叩かれる。

「痛いよ、ミッチー」

「店内だろーが」

「うぅ、ごめん」

「構いませんよ。今、お客様は皆様だけですから」

近くにいた文がにっこりと道満へ笑いかける。

近くにいたというか特に用が無い限り道満の近くにいるのだが。


そのやりとりを聞いていた栄子がはずんだ声でたずねる。

「アキちゃん、道満君がそこにいるってことは信子さんも?」

「はい、います。三人一緒です」

「ちょうど良かった。ちょっと信子さんとかわってくれるかい?」

「はい。わかりました」

信子へ電話を差し出すアキ。


「もしもし、信子です」


―――そして秋が来る前。夏に皆で会うことが決まった。

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