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合成清酒  作者: 初菜
合成清酒九
87/89

八十六升目。みんな集まる1

蝉の声。


麦茶を淹れたグラスは汗をかいていた。


季節はあっという間に夏。

アキのうなじにも汗がうかぶ。


ぺろりと舐めて一言。

「ちょっと塩辛いな」

「ん・・・・・・。道満、バカ」

頬を赤らめながら横を向くアキ。

「んー、でもこれはなあ。夏だから汗でも入ったか?」

「・・・・・・っもう!」


アキは道満の横っ面を思い切りひっぱたいて漬物を取り上げた。


「漬けるのヘタですいませんでしたー!」

舌を出しぺしぺしと道満を叩き続ける。

「おま、ちょ、やめろ。ちょっとからかっただけだろ」

「ミッチーが食べたいって言うから漬けたのに」

ふくれながらそっぽを向く。


「ふたりともじゃれ合ってないで。支度出来てる?」

信子がアキと道満の居るリビングへ顔を出す。


「「じゃれ合ってません」」

ハモる二人。


クスクス笑いながら、

「そろそろ行くわよ」

手を振って階下へ降りてゆく信子。


「そいじゃそろっと出るか」

車の鍵を手に取り道満も階下へ降りてゆく。

「ごめんっ。ちょっと待って」

急ぎ姿見のある部屋へゆくアキ。

「おーう」

車の鍵をかちゃかちゃまわしながら降りてゆく道満の返事がかえってくる。


一瞬アキはハッとした。


あの時も幸太は鍵をかちゃかちゃまわして。

そして、何の前触れもなく、倒れて死んだ。


軽く頭を振って気を取り直し、

髪の毛を整え、服をチェックする。


頬を両手で軽く叩く。


「よし!」

鏡の自分へ声をかけるように軽く気合を入れる。


今日は信子と道満と{閑古}へ行く日。


理穂と滝口と栄子が待っている。

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