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合成清酒  作者: 初菜
合成清酒九
83/89

八十二升目。ワイン。

「どう!このワイン!」

信子が大切に荷物から取り出した赤ワインを頬ずりする。

「信子さんそれって・・・・・・・」

目をみはって明美がたずねる。

「そそ、あのスーパーの角を曲がってちょっと行ったとこにある酒屋さんの」

「あの、アレですか?」

「そう。あそこのアレ」

鼻歌まじりの信子。


「あれ・・・・・・買っちゃったんですか」

「うん。買っちゃった。白もあるのよ」

赤のボトルを丁寧にリビングのカウンターテーブルに置いてからボトルをもう一本取り出す。

「え、えぇええー・・・・・・」

のめり込むようにボトルを見る明美。


「何なんだ?」

「何盛り上がってんの?」

道夫と道満はわけが分からず二人の間に入る。

アキはキョトンとしてそれを見つめていた。


明美はリビングのこたつでくつろいでる二人へ近寄り、

「あれ、ホラ。あそこの酒屋さんの・・・・・・」

ゴニョゴニョと説明する。


相変わらずキョトンとしているアキ。


説明を聞いた二人はカウンターテーブルに駆け寄り、

「これが」

「あの」

「えぇえええ」

「マジで」

などと交互に感嘆の声をもらす。


「えーっと。何なんですか?」

流石にアキもカウンターテーブルへ。


「えへへ」

と子供のように笑い、

「買っちゃったの。前から気になってたワイン」

語尾に音符がつくような弾んだ声としぐさでアキに抱きつく信子。

抱きついてる信子の向こうで、

明美、道夫、道満がワインボトル二本を中心に騒いでいる。


「ワイン、ですか」

「そ。ワイン」

たずねるアキの肩をつかんだまま体から離してニッコリ微笑む。

「ひょっとして・・・・・・高価な?」

幸太と出会ってからなんとなく酒の価値を知るようになったアキは流石に察する。

「お前、これ高価って言っても高価の中の高価だぞ、おい!」

道満が興奮して得意気にアキの方へふり返る道満。

「あんたが得意気になる事じゃないでしょ」

明美にピシャリと頭を叩かれる。

それから一呼吸おいて、

「信子さんよくこんな物・・・・・・」

ほぅっとしながらつぶやく。


「前からね、狙ってたの」

アキの髪の毛を撫でつけながら立ち上がり、

「あの馬鹿、幸太と飲もうと思っててね。へそくり貯めてたのよ」

明美たちの方へ振り向く。

少し寂しげな影が顔を横切ったが、すぐに、消えた。

いや、消した信子は、

「そういうわけで今夜はこれでパーティーです」

腰に手をあてて胸をはる。

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