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合成清酒  作者: 初菜
合成清酒一
8/89

八升目。

「幸太、なにやってんだい?」

「幸太、なにやってるの?」

重なる栄子とアキの声。


頭に手を当てながら顔をしかめつつ、

ビールを持って店の中へ入ってくる幸太。


「二人がそろって変な事ばかり言ってるから、

栓抜く時自販機に頭ぶつけたんです」

「栓抜きであれに頭ぶつけるって、器用な子だね」

「それくらいずっこけるような事言うからですよ」

「栓抜き・・・・・・自動販売機で栓抜き・・・・・・」

「どうした、アキ。首かしげて」

「んー、自動販売機に栓抜きなんてないよね?」


更に首をかしげるアキを見て

「あっはははは!幸太、

こんな若い子があんなもの知ってる方が珍しいよ。

アキちゃん、ちょっとおいで」

栄子はアキの腕をつかんで外へ出て行った。


瓶コーラの自動販売機が置いてある。


「えええ!これそうなんですか!?凄い!!

ボク最初なんで外に冷蔵庫あるのかなあって思ってた!」

「これは、こうやってね、っと」

がたごとと音がした後、スポンと気持ちよく栓の抜ける音がする。


「うわああああ!!」

「どう?面白いでしょ」

「はい!面白いです!凄い凄い!」


栄子とはしゃぐアキの声を聞きながら、

幸太は店内のこしかけの前の、

ちょっとしたテーブルへコップを並べ、ビールを注ぐ。


「おー、準備がいいね」

店の中へ戻ってきた栄子がそのまま一杯、ぐいっと飲みほしてしまう。

その後ろにはコーラの瓶を嬉しそうに持ってぴょんぴょんこおどりしているアキ。

幸太は空いたコップにビールを注ぎながら

「そっか。アキはあれ見た事ないのか」

「うん!初めて見たー!」


「あんなもん置いてあるのが今じゃ珍しいからね」

またぐいっとビールを飲み干して栄子は楽しそうなアキを見る。


「そんな事言ったら、外のホーローだってすごいもんでしょ」

「あれは倉庫から出てきたから貼っただけ。

あんなので一枚何万円とか騒ぎ過ぎなんだよ。あれは看板だろ。

看板は外に出してやらなくちゃ」

「まー、そうなんですけど」

この人らしい答えだなと思いながら、

コップにビールを注ぎ、自分のコップにも注ぐ。

「ビール足りないねえ」

栄子は冷蔵庫からビールを二本出して外へ行く。


「ねーねー、幸太の子供の頃ってあんなのあったの?」

「ん?ああ、瓶コーラの自販機な。あったよ。

よく夏に学校やプールで泳いだ帰りに買って飲んでた」

「あんなに面白くて楽しいのになんで今なくなっちゃったんだろ?」

「さーな。缶の方が便利だからじゃないのか?」

「でも瓶のコーラ、美味しいよ」


「ビールも瓶の方が美味しいね」

自販機でビールの栓を抜き抱えてきて、

微笑みながらこしかけに腰を下ろす栄子。


「アキちゃん。アキちゃんもこっちで一緒に座ろう。

ああ、そうそう、そこにあるの取ってくれる?そう、そのイカのゲソ」

「これですか?」

「うんうん、それ。ありがとね」


「駄菓子のイカゲソってなんなんでしょーね?」

ぼっそとつぶやく幸太

「さあね。なんだろうね」

アキからイカゲソを受け取りながら笑って答える栄子。


栄子の出てきた奥の方からドアーズの曲が聴こえていた。


『この歌のタイトル、なんだったけかな』

ふぅ、と息を吐き出してから幸太はビールを飲む。

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