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合成清酒  作者: 初菜
合成清酒七
68/89

六十七升目。

玄関のチャイムが鳴る。

「迎えがきたわ。じゃ、アキちゃん行こうかしら」

にっこり手を差し出す信子。


明子ではなくアキと呼ぶ。


外へ出る二人。二人を見るなり、

「あぁ!?ああ!!お前!」

指を差すアキと同い年くらいの男。

茶色く脱色した短い髪の毛にエンジのダウンジャケット。

まだ着け慣れてないピアスが浮く。


はっきり言って全体的にバランスがとれていない。


ハッとするアキ。

「!?このセンスの悪さはミチミツ!!」

「人の名前をカタコトで呼ぶな!道が満ちると書いて、

みちみつだ。そういうニュアンスで呼べよ、おとこおんな」


誰がおとこおんな、とアキが口を開くより早く、信子のげんこつが道満を襲った。


道満の運転する車の中。

「二人が知り合いだったとはねー」

助手席でほがらかに笑う信子。

頭をなでつつ、

「いきなり叩くのはないでしょ、叔母さん」

ぼやく道満。

「誰がおばさん?ね?誰が?」

笑顔のまま道満の耳を引っ張る信子。

「いや、親族的にでして、特に年、痛ってぇええええ。

危ない。叔母さん、運転中危ない!」

「そうね、危ないわね」

貼り付けたような笑顔のまま耳から指を離す。

「なんか怒ってます?」

今度は耳をさすりながらぼやく。

後部座席でうつむき座っているアキをちらっと見て、

「怒ってないわ」

笑顔。

「ぜってー、なんかある。怒ってる」

「そう思うなら自分で考えなさい」

笑顔。


沈黙の車内。


「・・・・・・ったんだ」

しばらくしてアキのか細い声が沈黙をやぶった。

「ああ?なんだよ」

ルームミラーでアキをちらりと見て問い返す。

「道満、車の免許取ったんだ」

「あー、お前がいなくなってる間にな」

「そっか」


『なんだろう。相変わらず道満はなんだか嫌な感じがしないな。

いじめられてた時のおとこおんなって呼ばれ方も嫌な感じ、しない。

悪気ないのが出るタイプなのかな。ニュアンスの使い方もおかしい』


思わずくすりと笑う。


「なんだよ、面白いかよ。

留年してるから高二だけどもう十八歳になってて、

免許取れたのが面白いんですかぁ」

すねたような言い方。

子供っぽいなと思いながら、

「違うよ。そうじゃなくて、ボク家出してる間に色々あったんだな、って」

「色々あったよ。あったさ」

深く息を吸い、吐き出す。

「従兄にあんま、心配かけんな」

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