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合成清酒  作者: 初菜
合成清酒七
66/89

六十五升目。

どうしよう。どうしよう。

悩んでいるうちにも時間は過ぎてゆく。


『女装するなら軽くでもメイクしなくちゃ』

そう考えると時間はもうない。


よし!と顔を上げ、服を選び着替える。


あまり派手すぎず、しかし地味にならないように、

ゴシックにもロリータにもならないように、

間違ってもコスプレみたいにならないように。

信子に迷惑をかけないよう無難な服を選ぶ。


秋から冬に近い季節。

ブラウンとピンクを基本にした暖色系。

姿見の前で確認。


少し濃いブラウンのふわりとしたスカート。

フリルの白いシャツ。

あまり主張しない薄いピンクのカーディガン。

服を決め、化粧台に座りメイクを始める。


仕上げにリップをきゅっと塗り鏡を見る。

少し長くなった髪の毛。前髪をワンポイント、ピンでとめ、

うん、とうなずく。OKだ。


必要な物を入れたバッグを持ってリビングへ。

「あらあらあらあら」

お茶を飲みながらテレビを見ていた信子が目を丸くする。

「すいません。服が、女物しかなくて」

申し訳なくうつむいたその時、抱きしめられた。

「可愛い!可愛いわあ!」

「!?」

信子はしばらく抱きしめてから手を離し、

肩に手を置き、同じ視線になるように腰を落とす。

「ごめんなさい。もう、ホント可愛くて」

「あ、あの。いえ、あ、ありがとうございます。でもその・・・・・・」

「ん?」

「ご迷惑じゃ、ないですか?」

「ぜんぜん。それより今の場合が明子ちゃんでいいのよね」

「はい」

「じゃ、名前もアキちゃんより明子ちゃんって呼んだほうがいいかしら」

「どっちでも・・・・・・大丈夫、です。どっちも似たような・・・・・・」

「じゃあ明子ちゃんで」

抱きしめた時に少し乱れた明子の髪を直しながら信子は笑った。

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