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合成清酒  作者: 初菜
合成清酒七
62/89

六十一升目。

「お前ら、お疲れ様。この一杯はあたしのおごりだ」

アキ捜索参加メンバーがそれぞれ好きなドリンクでのどをうるおしていたところへ、

オーナーが秘蔵のウィスキーを持って皆に注いで渡した。


一杯でだいたい六万円くらいする逸品。皆に注ぎ終わったところで、

残り一杯分になる。当然オーナーは自分の分は先に確保してある。


ソファーでうつむいてるアキへ寄り添い、

「ほら、最後はお前だ」

グラスに注ぎ手渡す。

「ここにいる連中全員が自分のことのようにお前を探してたんだ。

まあ勝手にやったと言われればそれまでなんだけどな。実際勝手にやっただけだし。

しかし、な。それでも少しは奴らの気持ちに応えてやってはくれないか?」

グラスを両手で持ちながらコクリとうなずく。

「そうか、応えてやってくれるか」

「助けてもらいました。ボクなんかのために、

こんな、みんな巻き込んじゃって・・・・・・」

「そうだな。今はそう考えてしまうよな。申し訳ないって気持ちのほうが先立つ。

でもあいつらが今欲しいのはお前の笑顔なんだ。作り笑いでもいい。できるか?」

「はい!」

力強く返事をし、ばっと顔を上げる。


その瞳には光が少し戻っていた。幸太が生きていたころの光が。


グラスを持ち立ち上がり歩みを進める。

ライブをやるステージに向かって、歩いてゆく。

皆無言で見守る。


ステージに上がり、皆を見渡すアキ。


「色々とたくさん言わなくちゃいけないことあります。

ボクがすごく心配と迷惑かけたこととか。

でも今日は、今夜はこの一言だけで許してください」


すぅっと息を吸い込み。

「皆さんありがとうございます!!大好きです!!!」

幸太が死んでから見せたことのなかった、

あの最高の笑顔で叫んだ。


歓声がわきあがる。

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