六十一升目。
「お前ら、お疲れ様。この一杯はあたしのおごりだ」
アキ捜索参加メンバーがそれぞれ好きなドリンクでのどをうるおしていたところへ、
オーナーが秘蔵のウィスキーを持って皆に注いで渡した。
一杯でだいたい六万円くらいする逸品。皆に注ぎ終わったところで、
残り一杯分になる。当然オーナーは自分の分は先に確保してある。
ソファーでうつむいてるアキへ寄り添い、
「ほら、最後はお前だ」
グラスに注ぎ手渡す。
「ここにいる連中全員が自分のことのようにお前を探してたんだ。
まあ勝手にやったと言われればそれまでなんだけどな。実際勝手にやっただけだし。
しかし、な。それでも少しは奴らの気持ちに応えてやってはくれないか?」
グラスを両手で持ちながらコクリとうなずく。
「そうか、応えてやってくれるか」
「助けてもらいました。ボクなんかのために、
こんな、みんな巻き込んじゃって・・・・・・」
「そうだな。今はそう考えてしまうよな。申し訳ないって気持ちのほうが先立つ。
でもあいつらが今欲しいのはお前の笑顔なんだ。作り笑いでもいい。できるか?」
「はい!」
力強く返事をし、ばっと顔を上げる。
その瞳には光が少し戻っていた。幸太が生きていたころの光が。
グラスを持ち立ち上がり歩みを進める。
ライブをやるステージに向かって、歩いてゆく。
皆無言で見守る。
ステージに上がり、皆を見渡すアキ。
「色々とたくさん言わなくちゃいけないことあります。
ボクがすごく心配と迷惑かけたこととか。
でも今日は、今夜はこの一言だけで許してください」
すぅっと息を吸い込み。
「皆さんありがとうございます!!大好きです!!!」
幸太が死んでから見せたことのなかった、
あの最高の笑顔で叫んだ。
歓声がわきあがる。




