五十九升目。
「滝口!滝口!」
電話をしていた理穂が叫ぶ。
「なんだ、なにかあったか?」
「アキちゃん見つかったって!栄子さんから電話!」
涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら声を張り上げる。
「そうか。で、どこにいてどういう状況なんだ?無事なのか?」
「うん、うん!無事!」
「無事か。なによりだぜ」
やっと安堵の息をもらす。
「で、もっと詳しい情報は?」
「あ、ああ、今聞くね」
『無事ってわかって今度は舞い上がったか。こいつがこんなに混乱したり、
飛び上がるように喜んだりするのは久しぶりに見るな・・・・・・』
タバコに火をつけて煙を吐き出し、
『まあ俺も内心そうだったけどさ』
理穂が栄子と通話してるのを横目で見、口には出さずハンドルを握りなおす。
――――――
「あんたたち、ありがと。しかし早かったね」
ライダージャケットを着た栄子が四人の男たちへ話しかける。
「栄子さん!?」
「栄子さんも出てたんですか?」
「そりゃアキちゃんの一大事だからね」
ヘルメット片手に微笑みながらアキの隣へ腰掛ける。
「ま、あんたたちに何かあってもあたしは出来る限りはするよ」
男たちにウィンクしてから空を見上げ、
「気持ちのいい空だね」
みんなで空を見上げる。
雨はいつしか止み、青空が広がっていた。
しばらく空を見上げていたアキが、
「え、栄子さん!?なんでここに?」
「アキちゃんいまさらなに言ってるの」
笑い声が起こる。
「アキちゃんをみんなで探してただけよ」
「え?あの、それじゃあボクみんなに迷惑・・・・・・」
「ないない、迷惑なんてない。みんな好きでやってただけだよ」
男たちが大げさに手をふる。
「こういうの大好きなやつらが多いんだわ」
肩をすくめながら笑う。
「そういうことだよ、アキちゃん」
軽くアキのおでこをはじきながら栄子は微笑む。
「滝口と理穂ももうすぐここへ来るから。
とりあえず今はゆっくりしようか」
みんなでコーヒーを飲みながら東屋のベンチに腰をかけ、
さっきまでの天気が嘘みたいなさわやかな風に吹かれている。




