六升目。
たった一日半が長くて濃かった。
夕飯を食べた明子はごちそうさま!と言ってから、
食器を片付ける手伝いをして、
チューハイを飲み雑談をして今はベッドですやすや眠っている。
幸太は蒸し暑い夜のベランダで空を見上げ、
「星、見えねーなあ」
発泡酒を一口飲んでぼそっと呟いた。
翌朝
「明子。おい、明子ー」
「うーん・・・・・・。うん・・・・・・」
「あーきーこー!」
「ふあっ!」
「ふあっ!ってなんだよ?」
「え、あ。幸太がボクより先に起きるとか思ってなくてビックリして」
「おい。これでも俺は一応、社会人なんだよ」
「あ、そっか。えへへ」
「ほれ、水。のど渇いてるだろ。それから、おはよう」
「ありがとー。あ、おはよう」
「さっきから、あが多い」
笑いながらキッチンヘ行って朝食を持ってくる幸太。
「うわー、うわー。すごく朝って感じのご飯ー」
サラダにフルーツ、クロワッサンにオニオンスープ、
牛乳がテーブルに用意されて明子がはしゃぐ。
「洋食ばかりで悪いな」
「そんな事ないよー。幸太料理上手!」
「幸太も食べよ。ね?食べよ」
「あー、俺は味見してたからそれでいいわ」
「それじゃあ食べてないよー。一緒に食べよ」
「はぁあ・・・・・・」
明子に圧された幸太はため息をついてから、
仕方なしにクロワッサンに手をのばす。
クロワッサンを食べながら
「明子お前今日、アキになれるか?」
「うん、なれるけど。どーしたの?」
「なれるならアキでちょっと付き合えよ」
「んー、よくわかんないけどわかった」
朝食と片付けが終わった後、
明子はでっかいキャリーバッグの置いてある部屋へ行った。
しばらくして出てきたのは、
ボーイッシュな女の子。という感じの男の子だった。
「明子、お前。あんまり変わってねえ」
「とう!」
幸太の足に明子のローキックが入る
「いってえ!」
「痛く蹴ったもん」
「なんでだよ」
「今はアキだから。男の子だから!」
ぷくっとふくれていた。昨日見せたふくれ顔より明らかに機嫌が悪かった。
「わかった。悪かった俺が悪かった」
とりあえず謝っておこうと頭を下げる。
「わかれば良し!」
明子、いやアキは笑顔で応える。
「ところでどうしてアキなの?」
「いや、ちょっとお前を連れてきたいところがあってな。
明子だとなんか面倒になりそうだったもんで」
「面倒?」
また機嫌の悪そうな表情になる。
「いや、待て。そういう面倒じゃなくて」
「じゃあどーいう面倒?」
「行けば、わかる」
「むー。じゃあ、行こ。早く行こ」
「あんまり早く行っても仕方がないから、
寄り道して買い物とかしながらだけどいいか?」
「うん。それいい!」
満面の笑顔。
「ほら、ボク、ここ初めて来たところだから色々見たい!」