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合成清酒  作者: 初菜
合成清酒六
59/89

五十八升目。

目をつむって手に力を入れ、バックを振り回そうとしたその時。

ドドドドドドという音が聞こえ近づいてきた。


聞き覚えのある音。


オーナーの店や栄子さんのところで聞いたバイクの音。

音はすぐ近くまで来て止まる。一台じゃない。何台かある。


足音。そして声。

「よお、おっちゃん、俺の彼女に何してんの?」

「え、いや、私は・・・・・・」

「俺ら、この子とここで待ち合わせしてたんだわ。

この子おっちゃんとなんかあった?」


つむっていた目を恐る恐る開ける。

ライダージャケットを着た四人の男の人たちが中年男性を取り囲んでいる。

「わ、私はただこの子が一人で寒そうにしてたから心配で・・・・・・」

「ああ、そりゃどうもありがとうございます。でも俺たちが来たんでもう大丈夫ですよー。

なんでしたらお礼に家まで送ってゆきましょうか?」

ニヤリと笑う。

他の三人もそれにあわせるように笑い出す。


「あの、いえ、そ、それじゃあ、私は、これでっ」

走って消えてゆく中年男性。


笑いながらそれを見送り、

「アキ・・・・・・ちゃん、だよね?」

「は、はい」

「良かったー。前に何度か見かけたのと、

写真一枚しか渡されてなかったからさー。

間違えたらどうしようかと思ったよ」

「その割にはノリノリだったじゃねーか」

「しかもテンプレの俺の彼女とか」

「お前にはこんな子彼女にできねーよ」

「うっせえな!おまえら!!」

空まで響くような笑いが起こる。


『誰?この人たち。また、ボク何かされるのかな。

それになんでボクの名前・・・・・・。

あ!この人たちオーナーのお店で何度か見かけたことがある!』

顔をよく見て気がついた。

安堵の気持ちが押し寄せ力が抜け、倒れそうになったところを支えられる。

「大丈夫?」

「はい。安心したら急に」

思わず笑みをもらしながらこたえる。

「ははっ。前から思ってたけど、ホント笑い顔可愛いね」

少し恥ずかしくなりうつむくと、後ろの三人が

「おーい。ここにナンパ男いるぞー」

「いや犯罪者だろ」

「とりあえず通報しとっか」

支えてくれたまま後ろを振り返り、

「だからおまえらなあ!」

また空まで響く笑い。


「よっしゃ。とりあえず、これ」

保温のマグボトルを渡される。

「ブラックコーヒーだけど大丈夫?」

「大丈夫です。大好きです!」

「じゃ、飲んで温まって」

マグボトルからコーヒーを注いでもらい一口ゆっくりと、飲む。

体がホっと温まってゆく。


「連中に先越されちまったね」

少し離れたところからタバコの煙を吐き出し微笑む栄子。

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