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合成清酒  作者: 初菜
合成清酒六
58/89

五十七升目。

「アキちゃんホントにこっちへ向かって行ったの?」

「お前がシャワー浴びてる間オーナーに連絡して、

店に集まってる客に聞いてもらった情報だ。

あそこはいろんな人間が集まるからな。かなり有力な情報だと思うぜ。

第一まったく手がかりなしで探すのは栄子さんも行ってた通りただの無駄だ。

こういうときはまず落ち着いて確実な手段をとってくもんだ。

いつものお前ならそうしてんだろ、理穂?」

「そう、だったっけ?

私いまいつものとかわからない。

アキちゃん出って行ったの、私のせいだ

私がもっと・・・・・・」

「シャワー浴びてもまだ目が覚めないのかよ・・・・・・」


滝口の運転する車の中。外は霧雨に包まれている。

飲みかけの缶コーヒーの中へタバコを捨て、ため息をもらす。


『ここまでパニっくちまうとしばらくだめだな。

自力で落ち着くまで放っておくしかないか。しかし幸太のやつ・・・・・・。

お前があっさり死ぬからこんな事になってんだ。

あの世とかがあれば岸田にぶん殴られてろ』

口には出さないが、苦々しい顔で舌打ちをした。


――――――


先に滝口と理穂を送り出し、

連絡や情報を集めるのをオーナーに頼み、

アキの両親、警察にも連絡を入れた後。

『それじゃあたしもそろそろ出ようかね』

心の中でそっと気合を入れる。


レザーパンツを穿き、レザージャケットを羽織った栄子。


ハーレーダビッドソンFXS

『そういえば初めてアキちゃんと会った時、この子乗ったわね』

よし、という顔でうなずき、またがる。

エンジンをかける。耳慣れた音。心地よい振動。

ガレージにエンジンの響きを残し走り出した。


――――――


「えっと、あの・・・・・・?」

「迷子?寒くなかった?」

「迷子じゃ、ないです。

ちょっと寒かったけどもう大丈夫です」

「そう。でも風邪引いたらよくないよ」

「いえ、あの、大丈夫ですから」


嫌な感じは疑いようのないものになった。

以前も何度か経験した事のあるタイプだ。


気がつきどう逃げるか考える。以前は知り合いがいたり、

夜の街中だったためにうまく逃げれたりできたのだが。


周りを見回す。


人気のない寂しげな公園。

そのくせ見晴らしがよくすぐどこかに隠れるには無理がある。

まずい。逃げれない。足が震えて動かない。


『幸太、どうして今いないのさ!』


キャリーバックで殴りつけ一瞬隙を作ってから、

荷物は捨ててそのまま兎に角走り出そうとし、

ぎゅっと目をつむり、手に力を入れる。

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