五十四升目。
「おはよ、アキちゃん」
理穂さんの笑顔と紅茶の香り。
「昨日は久しぶりに騒いだわねー。アキちゃんどの辺まで覚えてる?
私はアキちゃん抱きしめて寝てからしばらくして起きてまた飲みなおしてたけど。
はい、紅茶」
目をこすりながらベッドから出てきたアキに紅茶をすすめる。
「お、おはようございます。
ボクどうやってここに・・・・・・?」
椅子に座りながらたずねる。
「明け方お酒抜けた滝口が車でぴゅーっとね。
なんだかんだ頼りになるわ。途中からお茶飲んで酔い覚ましてたし」
「滝口さんが。え、じゃあここって・・・・・・」
「あたしのうちよ。って言ってもアキちゃん前に来たことあるけど」
「え?」
「私のお店が私のうちにもなってるの」
「え、えーっと。ボク今理穂さんのおうちでパジャマに着替えさせてもらって・・・・・・」
「うん。さっきまで寝てたのも私のベッド」
微笑みながら紅茶を飲む。
「えぇええええええ!!?」
「そんなに慌ててどうしたの?」
「えっと、えっと、ボク理穂さんのおうち泊まって、
理穂さんのベッドで寝て、パジャマまで着替えてて・・・・・・」
あたふたと頭をかかえる。
軽く微笑みながら
「とありあえず紅茶、飲んで一息ついて」
紅茶をすすめる。
「は、はい」
カップを両手で持って一口飲む。
よい香りと味が広がって少し落ち着く。
「私も同じベッドで寝たけど変なことしてないから安心してね」
アキの様子をみながらウィンク。
「へ、へんんなこと!?じゃなくて一緒に寝てた!?」
ケホケホとむせる。
「そうそう。パジャマも私が着せ替えたんだけど、
いいわー。似合うと思ってたらぴったり。可愛い。
可愛いって言えば下着も可愛かったわね」
少し視線をずらしながらにやりと笑う。
「えぇええええ!?」
昨夜滝口が言っていた
(アキちゃんがなにかされないか俺が守る!)
という言葉が頭の中をぐるぐる回る。
「そ、そんな警戒しないで!
色々冗談も入ってるから。私は大丈夫だから!」
『なにがどう大丈夫なんだろう』
アキと理穂の生活はこうして始まった。




