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合成清酒  作者: 初菜
合成清酒五
51/89

五十升目。

「はい、アキちゃん」

柿を差し出され、

こたつの暖かさで少しウトウトしていたアキは目を覚ます。

季節は冬をむかえようと準備している。


「あ・・・・・・。ありがとうございます」

「あの馬鹿息子が、ごめんね。最後まで面倒もみないでさあ」

「え、いえ、そんなことないです。ホントに・・・・・・」

「いやいや、アキちゃん。死んだからって甘やかしちゃだめよ。

いっつも中途半端な子だったわ。ほんっと最期まで」

言いながら幸太の遺影に目を移す。幸太の母、信子。

それにつられるようにしてアキも幸太の遺影に目をやる。


遺影と言ってもしっかりしたものではなく、

皆と酒を飲み笑っている姿。まだアキと出会う前のものでアキの姿はない。


「アキちゃんと一緒に笑ってる写真があれば良かったんだけどね。

あの子写真撮られるのあまり好きじゃなくてろくなのがなくて。ごめんね」

「私にはこれがありますから」

微笑みながらふりかえり、携帯の。

幸太から渡された携帯のトップ画面を信子に見せる。


それは幸太、滝口、栄子。そして明子で撮ったあの時あのガレージでの写真。


「理穂さんいなくて残念ですけど」

くすっと笑いながら寝顔の幸太を見る。

「まったくだらしない寝顔だよ」

笑い返す信子。


仏壇に位牌を置き遺影を飾るとき、

この写真も遺影に使おうと話があった。

しかしアキが反対した。

「ボクなんかが口をはさんでごめんなさい。でも、なんていうか。

この写真はそういうのに使って欲しくなくて・・・・・・」

そう言って皆が驚くほどかたくなに反対した。


滝口も理穂も栄子もオーナーも、幸太の母信子も驚きはしたが、

こころよく了解してくれた。


一ヶ月近くアキは幸太の家に引きこもっていた。

毎日滝口と理穂と栄子さんの誰かが訪ねてきてくれた。

そしてある日。信子が訪れた。


「ごめんね、アキちゃん。

迎えに来るのが遅くなっちゃって」


インターホンのモニター越しに穏やかな日差しのような笑顔があった。


「だれ・・・・・・ですか?」

「あなたのお義母さんになる人。

幸太の母、信子です。よろしくね」


栄子たちが手をまわしたのは言うまでもない。

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