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合成清酒  作者: 初菜
合成清酒五
50/89

四十九升目。

「そろそろ出るか」

「うん」

ファミレスを出る二人。


車の鍵を出しながら先を行く幸太。


キーチェーンの輪に指をかけくるくる回す。

かちゃ、かちゃという金属音が心地よくアキの耳に響く。

かちゃ。かちゃ。かちゃ。


どずん。


急に金属音が途絶え、鈍い音。

「・・・・・・。幸太?!幸太!!」

駐車場に倒れる幸太。

揺り動かし名前を叫ぶアキ。


動かすな。早く救急車。

そんな言葉とともに周りにいた人たちが駆け寄る。


 ――――――


「ちょっと落ち着いたかね」

ゆっくりとウィスキーを飲みながら栄子がつぶやく。

顔は伏せたまま視線はウィスキーの中にうつる自分を見ている。

「そうですね。一応は」

同じくつぶやくように返す滝口。

理穂は何も言わずカクテルを飲む。


栄子の店のガレージ。葬式の後。


倒れたまま幸太は死んだ。

救急車で運ばれたが搬送先で死んだ。

死因は脳溢血。


連絡を受けた滝口と理穂が駆けつけ、手続きなど済ませ、

アキと遺体と車を引き取った。そしてバタバタしながらやっと葬儀が終わった。


アキは幸太が倒れたときからずっとパニックで今は幸太の家に引きこもっている。


「あの馬鹿、岸田のとこへ自分まで行きやがった」

半ば吐き捨てるように言う滝口。

「まー、馬鹿だからね。仕方ないわよ。あの逃げ上手」

一気にカクテルをあおる理穂。

「今頃岸田にどつかれてりゃいいんだ」

「そうね。どつかれてるわね」

応じながらカクテルを作り自分と滝口のグラスに注ぐ理穂。

「アキちゃんの様子は?」

顔を上げ二人にたずねる栄子。

二人とも顔を横に振る。

「俺たち様子は毎日何回か見に行ってるんですけど・・・・・・」

「インターホンでは出てくれるんですけど、顔を合わせてくれなくて」

「幸太と新潟まで行った理由は教えてくれたんですけど、その後がもう・・・・・・」


沈黙。静かな中に鈴虫の声だけが聞こえる。


どん!とグラスを置く音が響いた。

「幸太は死んだ。死んだものは仕方ない。岸田が死んだ時もそうだっただろ。

生きてる人間の事を一番にしなくちゃね!」

栄子がウィスキーをいっきに飲み干し、声を大きく言う。

「滝口、理穂。アキちゃんをどうしたい?」


今まで見せないようにしていたうるんで赤くなった瞳を二人に向ける栄子。

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