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四十三升目。
そっと明子を抱き寄せる幸太。
「え?」
明子は涙で頬を濡らしたまま驚く。
「ごめんな。気持ち悪くはねーよ。
でもな、俺もどうしていいかホントわからん。
これくらいしか思いつかない」
優しく頭をなでる。
「うん!うん!ありがとぉ・・・・・・」
幸太にしがみつきしゃくりあげる。
しばらくそうしてから。
「えへ。せっかくみんなで楽しんでたのにごめんね。
もう大丈夫。ありがとう。ボクもう変なこと言わないから」
涙をぬぐい笑顔を見せる。
「明子ちゃん。無理しなくてもいいんだぜ。
言いたいことは我慢しないで言っちまえ。さっきのは正直戸惑ったけど、
なんつーか、いきなりだったから、さ。もう次からは大丈夫」
ポン、と明子の頭に手を置く滝口。
「ま、あんたら若いんだ。好きなようにやってみるんだね」
ビールを飲みながら三人を見て微笑む栄子。
「よーし。それじゃ食後の酒いくか」
そっと明子の肩を抱き寄せてテーブルへ連れて行く。
『抑えきれなかった。感情が爆発した。
でもみんな受け止めてくれた。表面だけだとしても・・・・・・。
この人たちならひょっとして・・・・・・』




