三十九升目。
インターホンが鳴る。
モニターを見て、振り返り声をかける。
「幸太、滝口さん」
「おー。出てくれ」
「はーい」
「滝口さん、こんにちはっ」
ドアを開け、元気に挨拶をする。
「明子ちゃん、こんにちは。
今日はまた可愛いねー」
挨拶を返しながら気持ちのいい声で笑う。
「どうぞあがってください」
「ほい、ありがとう。幸太は?」
「お魚詰めてます」
「そっか。ま、いなくてもいいんだけど」
言いながら明子の肩を抱きしめる。
「た、滝口さん!」
驚いて声を上げてしまう。
慌てて手を離す滝口。
「ごめん、ごめん。これ、セクハラになるかな?
セクハラだよなー・・・・・・」
申し訳ないように頭をかく。
「セクハラじゃないですけど急だからびっくりしちゃいました」
「いやー、ほんとごめん」
「だいじょーぶでっす」
明るい声を弾ませた笑顔の明子。
「良かった良かった」
大きく息をはき滝口は胸をなでおろす。
二人がリビングへ入ると幸太はせっせと魚をクーラーボックスへ詰めていた。
「おまえらなー、いちゃつく暇あれば手伝えよ」
「いちゃついてないもん!」
冗談混じりに声をかけた幸太へ、
明子は思わず強い口調で返してしまった。
あっけにとられた顔で幸太と滝口は明子を見つめる。
『なんで。どうしてボク、今、むっとしちゃったんだろ。
今日、変だ。なんかドキドキするし顔熱くなるし』
二人は驚いた顔のままだ。冷静に、落ち着こうとする。
『とりあえず、ごまかさなくちゃ』
すうっと息を吸い込んで
「愛し合ってたんだもん!!」
大きな声で、言った。
「ええええ!!!!??」
幸太と滝口はそろって声を上げた。




