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合成清酒  作者: 初菜
合成清酒四
39/89

三十八升目。

幸太の邪魔にならないように見ている明子。

服はメイドからゴシックなものに着替えている。ウィッグはない。


幸太がコーヒーを欲しがると部屋にあるサイフォンから淹れる。

たまに行き詰まるのか、図面を見つめたままタバコを吸い続ける。

灰皿がいっぱいになれば、そっと吸殻を捨てる。


そうしながら見てる幸太は今まで見たことのない幸太で、

明子はドキドキしながら時間を忘れていた。


夏の日差しに少し赤い色が混ざってきたころ。


大きく伸びをした幸太が

「終わったー!」

声を上げ、明子を引き寄せ頭をなでる。

いきなりなことだったので焦ってしまう。

「幸太!?」

顔が熱い。たぶん赤くなってるかもしれない。

「も、もう夕方だよ。お疲れ様!」

照れ隠しに少し距離をとって、夕日の赤で顔色をごまかす。

「助かったよ。コーヒーはいいタイミングで淹れてくれるし、

灰皿もさりげなく吸殻片付いてるし」

「え、えと。タバコの吸殻捨てる場所ってキッチンの三角コーナーでよかったよね?」

「おっけーおっけー。ありがとうな」


しばらく幸太を見つめる明子。顔の赤色は夕日と溶けた。


「・・・・・・幸太」

言いかけた時、

幸太のプライベート用の電話が鳴る。

「おー。滝口か。こっちは仕事終わった。

それじゃあ今から迎えにきてくれよ。ああ、よろしく」

電話を切り、

「どした?」

「え?」

「お前さっきなんか言いかけなかった?」

「なんでもないー。それより支度しなくちゃ。

栄子さんのところ行くんだよね」

「そそ。昨日の魚お土産にしてな。たぶんそのまま飲む」

「りょーかい!」


いつもの元気な返事を残して部屋から出て行く。

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