三十七升目。
リビング。
テレビを観ながらコーヒーを飲んでいる幸太がふりかえった。
「おはよう。そこに朝飯置いてあるから」
「う、うん。ありがと」
少し恥ずかしげに食卓につく。
「ところでさ」
テレビを観ながら幸太がぽつりと
「今日はお前はアキなの?明子のままなの?」
「昨日からしばらく明子かな」
梅しそのリゾットにいただきますと手を合わせ、こたえる。
「そっか。それじゃ明子、お前今日はどっか出かけたいとかある?」
「うーん・・・・・・。幸太がお出かけするならついてくけど」
答えながら食べる梅しそリゾットが酒を飲んだ後の体に優しく沁みる。
幸太はしばらく何か考えながらコーヒーをすすり、
「今日は片付けなくちゃいけない仕事あって、
俺は出かけれそうにないんだよな。退屈しそうならどうする?
滝口の仕事にくっついてまわって遊んでもいいし、
栄子さんとこいっててもいいし。
夕方には栄子さんのところへ俺も滝口も行くから」
「うーん・・・・・・」
首をかしげしばらく上の方をみながら考え、
「幸太と一緒におうちにいる」
幸太へ顔を向ける。
「了解。昼飯は作ってる時間ないから、
何か好きなの取り寄せるか近所に食べに行ってくれ」
「幸太は?」
「俺は食ってる暇ないかな」
「忙しいの?」
「ちょっとな」
「・・・・・・ね、幸太」
「なんだ?」
「さっきボク寝てた部屋が幸太の部屋?」
「あー。寝室兼作業部屋な」
「邪魔しないから・・・・・・」
「ん?」
「邪魔しないからお仕事見てていい?」
「そうだなー。コーヒー入れてくれたりしてくれればオッケ」
「うん!なにかお手伝いできればする!!」
「よろしく」
笑ってひらひらと片手をふる幸太。
アキが昨夜泣いたことは今はそっとして、
落ち着いたころにゆっくり話そうと考えていた。




