三十六升目。
昼過ぎに目を覚ました。
うっすらと見える天井は見覚えがなく、少し、焦る。
『ここ、どこだろ?幸太のおうちじゃないのかな・・・・・・』
深呼吸をして落ち着く。
『泣いちゃったことは覚えてるけど・・・・・・。
そのまま寝ちゃったんだ・・・・・・』
その後、今。
いるはずの幸太と滝口がいなくて、
いつも寝るのに使ってたリビングではなく、
見覚えのない場所。
少し大きめのベッド。ふかふかの感触。
起き上がりながら周りを見回す。
製図みたいなのが書きかけてある台や、
パソコンがある。
その時。
がちゃり、と音を立て、ドアが開いた。
慌てて布団の中へもぐりこむ。
「起きたか?」
「こ、幸太?」
「おー、起きたか。おはよう」
「うん、・・・・・・おはよう」
「どうした?」
「ここ、どこ?」
質問とおどおどした表情がよほどおかしかったのか、
幸太は声をあげて笑い出す。
「もー、幸太!笑わないでよー。ここどこなの?」
「どこって、お前、うちだよ。俺の家だよ」
笑いすぎて涙が出てたのをぬぐいながらこたえる。
不安感は幸太の声を聞いたときからなくなっていた。
「こーたー!」
飛びかかろうとするところへ
「お前昨日着替えないでそのまま寝たから服ぐちゃぐちゃだぞ」
視線を自分の服へうつしあわててまた布団をかぶる。
「パジャマに着替えさそうと思ったんだけどなー、
脱がし方がわからんかった。とりあえず部屋着、そこに置いてあるから。
着替えたらリビングな。飯作ってあるから」
恥ずかしそうに布団にくるまってるのを振り返り、
笑いながら部屋から出てゆく。




